Short Story





テイルマンのファン

※未来 長編のネタにしょうと思った冒頭
小鳥の囀りが聞こえてゆっくりと目を覚ます。それから大きく伸びをして窓からの景色を眺めれば綺麗な青空が視界いっぱいに広がる。今日も平和だなあ、なんて思いながらベッドから抜け出す。


テレビをつけながら準備をすれば今日もヒーローの活躍のお話。もはや当たり前となったそれ。より優れた個性の人がそうでない人を助ける。彼らは今日もどこかで誰かを救っているのだろう。
心の中で、いつもありがとうございます、と小さく感謝する。実際私は助けられたことはないのだけれど。
ぼんやりと眺めていればかの雄英高校出身の人が映る。武闘派ヒーロー「テイルマン」。


実は私は密かに彼のファンなのだ。といっても彼はあまり目立たないのか興味がないのか、はたまた他のヒーローが凄すぎるのか、よくわからないがあまり活躍を目にすることはない。それにファングッズなどもだしていないようだ。故にファンだといっても彼のグッズを持っているわけでもない、活動を記録しているわけでもない。

今人気なのは「デク」とか「ショウト」とかだ。いつだってテレビに映っては人々に感謝されている。けれど私がテイルマンのファンになった理由は、彼の活動しているところをこの目で一度見たことがあったからだ。

本当に、どうてことないこと。ひったくりを捕まえているところをほんの一瞬見ただけ。それでも、かっこいいなあなんて思ってしまったのだ。
だからといってサインくださいなんていうわけでもないし、誰かに打ち明けることもない。本当に、ただひっそりと応援しているに過ぎない。
ミーハーと言われてしまえばそうなのかもしれない。例えばあの時見つけたのがテイルマン以外のヒーローだったら、その人のファンになっていたわけかもしれないのだから。


もう一度ニュースを眺めれば何でもテイルマンがこの近くで強盗を捕まえたらしい。それに加え、事務所をフリーにするという発表。ぼんやりと画面に映る彼を見ながらパンを頬張る。

私がテイルマンに抱いた感情はあくまで「ファンとして応援したい」である。だから、あの時憧れと抱いてしまったもう一つの感情は見て見ぬふりを決め込むしかないのだ。