浜辺/SideC - 2
結局のところ、気まぐれな彼女から連絡が来るまで俺たちは命ちゃんを探し切ることができなかったし、連絡が来た頃には部員が集まって今から探しに行こうかという話をしていた。そしてわかっていたことではあるが連絡が来たのは俺の端末にだったし、俺が何か聞こうとするのを無理やりねじ伏せて彼女は通話を切ってしまった。
監督に聞いたことをそのまま伝えればもちろん非常に怒っていたし、困惑していたし、部員はざわついていた。自由過ぎる彼女の姿に色々と言う人がいるのは昔から変わっていない。向こうの監督が命ちゃんを送ってくれるということで、監督は集まった部員を解散させ、玄関ホールの隅にある机でノートパソコンを片手に酒を煽っている。俺も俺で部屋に戻れる気になれず、詳しい話を聞かせてくれるならという気持ちもあり、ホールのソファで命ちゃんの帰りを待っていた。
「絹川」
「? はい」
部員が全員捌け、寄り道していても部屋に戻って遊びでも始めているだろうというぐらいには時間が経った頃、監督に声をかけられた。そちらを見れば監督がこっちに来いとジェスチャーをしていた。酒を飲んだ人間……とは思ったものの無視をするわけにもいかず、監督が占拠している机の方へと歩を進めた。
「悪かった。さんざ探させた挙句結局自分で帰って来たからな。手間取らせた」
「あぁ……いえ、気にしないでください。僕は自分でやれることをやっただけなので」
「とは言えだ。灸を据えた方が良いな……昔からああなのか?」
「まぁ、そうですね」
俺の返答を聞いた監督は少し酒くさい息を吐きだして頭をガシガシとかく。部員の反応が悪いことを気にしているんだろう。俺が知っている限り、この野球部にいる命ちゃんは相当好き勝手にしている。元々いた捕手を全員自信喪失させ、新しく捕手候補を連れてきたと思えばその男は野球はほぼ未経験。そんな男が入って二か月後にはスタメンになり、自分の好きなように球を投げている。上級生の捕手投手からは相当に嫌われているだろうな、と他人事のように考える。
「まぁ、なんか嫌なことされたら言えよ。今んとこお前が一番できる捕手で、八百万が一番できる投手だ。……八百万に関しては我が強すぎるところはあるけど」
「今のところは何もないので大丈夫ですよ」
「お前がそういうなら何もないんだろうな……八百万は何かがあったら速攻で問題になってるだろうし……」
監督が命ちゃんのことをどういう風に見ているのかが透けて見える発言を耳で受け取り、それを笑って流した。まぁ我慢する性質ではないのは俺も同感ではある。困りごとがあっても誰にも言わない彼女ではあるが、比較的行動に出やすい方であり『煩わしいことは速攻で解決させるに限る』と言いながらクラスメイトの指紋を取ろうとしていた時期があったぐらいだ。不安ではあるが気に掛けていれば問題ないと思いたい。
「八百万とは何年の付き合い?」
「家が近かったので少なくとも十年以上ですね」
「長〜……昔からああなのになんで一緒にいんの?」
監督に言われた言葉に目を瞬かせる。確かに人に愛想を送らないし、自由の考えを曲げないし、こうと決めたら強情で破天荒な人間だ。そんな命ちゃんとずっと一緒にいるというのは監督からしたら考えられないのかもしれない。でも俺にとって彼女は、例えそうだとしても側にいたい人間だ。何故なら__、