米倉隊1 - 4

「進路? 俺? 普通に就職〜」

 自販機でカルピスを購入し、包装を剥いで一口飲んだ。冬場でもカルピスは根強い人気を誇っているようで、いつまでも俺の側にいてくれる。フォーエバーホワイト、永遠に。

「何、悩んでる感じ?」
「そう……ですね。ボーダーは、かなりやりがいのある職場なので」
「ベンチャーのノリだよね〜。ブラック企業!」

 同じ部隊の隊員の進路相談はとうとう、おちゃらけちゃらんぽらんの俺にまで伸びてしまったらしい。こんな賢くて真面目な彼ですら進路というものに蝕まれるのだから、社会とはかくも愚かしい……ブラック企業は黒だからなぁ、みたいな態度を取れば少しだけ笑っていた。

「ボーダーに就職はしない感じ……ですか?」
「様子見〜。まぁオペは大学卒業したら辞めるよ」
「なるほど」
「う〜〜〜〜ん……進路はね、俺よりも白塔さんとか米倉くんに聞いたほうがいいよ。主に白塔さん。でももう聞いたんでしょ? じゃあ俺は俺の思ったことを言うしかないもんな〜!」

 うんと伸びをして、スマホに入れたICカードで絹川くんの分のコーヒーを購入した。遠慮がちな手に無理やりねじ込んで、カルピスをもう一口。

「あんね、絹川くんはボーダー向いてないよ。俺がエンジニア向いてるのと同じぐらい」

 向きと不向きを同列に語ったからか少しロードが入ったようだけど、とにかく理解はしてくれたらしい。迷える羊は頷いた。絹川くんは他人のためにしか生きられないような人間だ。その方向が戦いと人命救助だと気持ちに大きく差が出るだろう。俺は、同じ命を救えなかった苦しみなら、戦いの果てよりも人命救助の結果の方がいいと思う。どちらにせよ苦しいけど、マシなのは後者だ。

「何よりブラックだよ。ベンチャーだから何するかわかんない。組織の特性上急に人体実験に巻き込まれるかも。だから、俺はお勧めしない……こんなところかなぁ」
「……わかりました、ありがとうございます」
「こちらこそ全然役に立てなくてごめんね。絹川くんの人生は絹川くんのものなんだし、自分で決められるといいねぇ」

 人間はみんな愚か!その中でも公共の福祉の範疇で自由をやって、程よく楽しく生きていられたらハピネスだよね。そう思いながらも口には出さず、軽く手を振ってその場を去った。俺は難しい話はよくわからないし、好きじゃないし、そう言うの避けるために賢い人の下についてるんだし!

(了)