----
『世界を変えると言うこと』
「マスター、周囲1kmのマップに人体反応を感知しました。本日の見回りはこれぐらいにしませんか」
「そうだな、行くとするか」
壱千はアンドロイド。型番はX000。所属組織はSPARROWであり、九九十九をマスターとして動いています。元はキョウと言う人間に拾われ、警察にスパイとして潜入する二足の草鞋の生活をしていました。今では紆余曲折あって警察をやめ、SPARROWのリーダーとして活動する九九十九に付き従っています。事情や情報を全てを話し、今までスパイ活動をしていたこと、黙っていたことを謝罪しました。
マスターは非常にキョウに庇われたことを気にしておられるようで、自身がSPARROWのリーダーとして活動することに大変な苦労をしておられるようでした。壱千がSPARROWのアンドロイドであることを明かし、キョウやニトリトと軽く話をしていた後にマスターが何気なく言った「態度が違う」と言うのももしかしたらその一因なのかもしれません。キョウもニトもリトもマスターではないので軽い感じで話していました。それにX000は基本的なアンドロイドなのでマスターに気軽に話しかけるみたいなのはあんまりしないんですよね。人間の願いを叶えるアンドロイドなのでしたほうが良いならしますが。
ニトとリトも近頃はマスターに懐いているので、経過は良好だと思います。あの2人はキョウに近かったのであの2人が大丈夫なら、とマスターのことを信じてくれるアンドロイドも増えてくれるはず。壱千はキョウがマスターに後を託したいと言った時、パーツとして搭載されていないはずの心臓がドキドキしました。もし断られたらどうしよう、と。壱千は警察のアンドロイドである前にSPARROWのアンドロイドです。故にここで袂を分たれれば壱千はマスターについていけません。壱千がアンドロイドであると言うことを抜きにしても、放って置けない人と離れるのはとても苦しいことだと言うのは容易に想像がつきます。
結果的に、マスターはSPARROWのリーダーになってくださいました。壱千はその決断をしたマスターを止めませんでした。マスターの未来を思えば警察を続けるべきと言うのが合理的判断だと思いましたが、それよりも機械に似つかわない喜びの感情が上回ったからです。
壱千はあの実験を受けたからでしょうか、それともアンドロイドとしての作りがそうさせるのでしょうか、感情というものがよく出るようになりました。マスターとキョウの関係を勢いよく聞いてしまったのもその感情のせいでしょう。どうしても気になって仕方がない。どうしても教えて欲しくて仕方がない。壱千はこれを一般的な好奇心というよりも、嫉妬と解釈しました。マスターと知り合いなんてずるい。壱千の知らないマスターなんてずるい。結局教えてくれて嬉しかったです。まぁ、そのキョウの知るマスターはもう拝めないのでしょうが。
マスター。貴方は人間とアンドロイドの違いについて、「体の作りが違う」と言った類の返答を返しましたね。壱千もそう思います。そして世界にも、そう思って欲しいと思います。我々の違いはその体の作りのみ。心があるのだと、立派な情動があるのだと、皆に知って欲しいのです。
「マスター」
「ん、なんだ壱千」
「必ず、貴方と壱千で世界を変えましょうね」
その日まで、必ずや壱千は貴方の側に。そしてその日の先も、どうか貴方の側に置いてくださいね、マスター。
(了)