何であんなに気持ち悪い人間と一緒に居るのか、と聞かれたら返答に困るのだが、強いて言うなら気分、とでも答えておこうか。
間違ってもあいつと一緒にいて安心する、なんて思えるはずがない。
むしろ吐き気がするくらいだ。
近くにいるだけで頭が痛いし、目眩がするし、いいことなんて一つもない。
いままで色んな川を巡って色んな人間を目にしてきたが、あそこまで気持ちの悪い雰囲気を纏った人間は初めてみた。
コイキングの僕が言うのもなんだけど、化け物かと思った。
何故そんな僕と名前が出会ったのかというと。
ドードリオの群れに襲われて死にかけたところを、あいつに助けられてしまったからだ。
あの時は不覚だった。
腕の中で抱えられている間も必死に抵抗していたが、トライアタックを食らったせいで身体が麻痺して逃げ出すことは出来なかった。
おかげで一生分くらいは吐いた気がする。
怪我したところよりも頭痛の方が酷かったし。
むしろあいつの腕の中にいる時の方が死を覚悟したくらいだった。
まぁ、結局は綺麗な川に戻されただけだったが。
あんな思いは二度としたくないと思った。
でも結果的に助けられたことは事実だし。僕もそこは認める。
気持ちの悪い雰囲気を纏ってはいるが、悪いやつではないということは、数日間観察していて分かったことだ。
ここへ来る人間ならば、それなりに強いポケモンを連れているのかと思えば、あいつはたったの一匹ですら所持してはいないようだった。
それどころか、ポケモンの姿を見る度に、初めて目にするかのように驚いていた。
その様子じゃあ、ボールを使って捕まえることや、ポケモン同士を闘わせることも知らないのだろう。
ここまでこの世界から見放されたくらいなら、死んでしまった方がずっと楽なはずなのに。
どれだけ凶暴なポケモンに襲われようとも、餓えで苦しくなろうとも、必死に生きていこうとする姿に目を奪われた。
助けられた恩のせいで、情が移っただけかもしれない。
その不憫すぎる体質が何故だか可哀相で、弱いと毛嫌いされて粗末に扱われる僕の仲間たちと重ねてしまった。
こいつがただのトレーナーで助けられただけだったならば、ついていこうだなんて絶対に思わなかった。
僕がコイキングで、名前がそういう人間だったから、僕の心は動かされた。