お喋りしましょう

「わあ見てよレッドくん、コイの仲間が沢山いる!」
「コイキングはほとんどの水辺で生息してるから当たり前のことだよ」
「へぇ。でもこんなにいたら、きっと誰にも負けないんだろうね。最強だよ」
「え……?」
「え?」
「コイキングはポケモンの中でも最弱と言われてるほどの弱さ。そのうえ、闘える技を全然覚えないから、人間からはあまり人気がないよ」
「うっそだぁ!だって、うちのコイは姿が変わる前から、めちゃくちゃ強かったんだよ?野生の動物を蹴散らしてたり、私が襲われそうになっても助けてくれたくらいだし!」
「……それは名前のコイキングだけだと思う」
「まじか、凄いなコイ!お前さんってとっても強かったんだね格好いいぶふっ!」
「何で褒めてるのにギャラドスは怒ってるの?」
「はは、これはこの子の照れ隠しさ。こう見えてもうちのコイは結構恥ずかしがり屋さんいてててててっ!悪かった悪かった!もう言わないから尻尾で叩くのはやめて!」
「名前とギャラドスは仲がいいんだね」
「もちろん。コイも他の子たちも、家族のようなものだからね、って、レッドくんが笑った……!声が出てないから台詞に書いてないけど、表情だけで笑った!」
「僕だって人間だから、笑う時もあるよ」
「良かったー。山に籠もりすぎて、人間的感情を忘れてるかと思ったよ」
「名前って何気に失礼なこと言うよね」
「え、きみがそれを言っちゃう?」
「……」
「ごめんごめん、冗談だから怒らないでおくれ」
「……そうやって頭を撫でて僕を子供扱いするところも失礼だと思う」
「まあ、私にとってはまだまだお子様だからね」
「身長は変わらない」
「そうやって身長を比べるところも」
「……」
「でも、可愛い子をからかっちゃう私もまだ子供なのかな、なーんて」
「……」
「おーい、レッドくーん」
「……」
「……もしかして、本気で怒った?」
「……」
「うわー、ごめんね?こんなに怒らせるつもりじゃなかったの!なんて言うか、久しぶりにお話し出来る相手が出来たからつい嬉しくなっちゃってさ、ごめん!」
「……べつに怒ってない」
「え」
「ちょっとムカついたからこっちもからかってやろうと思ったのに、まさか本気で謝られるとは思わなかった」
「なんだ、良かったー」
「でも、ずっとあの頂上に居たから、僕も人とこんなに話したのは久しぶりだよ」
「そっか。じゃあ、気が向いた時でいいからさ。また私のところに遊びにきてよ。そしてお喋りしましょう」
「やだ」
「え、そこは話を綺麗にまとめるために了解するところでしょ!?」
「きみと喋るためだけにわざわざ降りてくるのは面倒くさい」
「ひどい……!」
「僕が名前の話し相手になるから、名前は僕とバトルしてよ。これが条件」
「えー、だったら別にいらな」
「きみの手持ちはやる気まんまんみたいだけど」
「こらお前たち!勝手に出てきちゃ駄目だって!痛い思いをするのはお前たちなんだぞあたたたたた、おいウマ!刺さってるから、お前さんの頭の角が私に刺さってるから!」
「どうするの?」
「いててててて、分かったよ、その条件呑むから!バトルでも何でも来いよ!」




(……で、結局あいつに流されて手持ちがそんなに強くなったのか)
(そうなんだよグリーンくん!おかげで今は手が付けられないレベルになっちゃったし)
(なら、ジム巡りでもしてバッジ集めてこいよ)
(それは嫌だ!面倒くさい!)
(胸張っていうな!)
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