10.知る話
プロイセンと別れた後俺は急いで仕事場へと戻った。ちょうど2人は仕事が終わったようで俺の机の前でどうしようか考えていてくれたらしい。2人に急いで謝ると彼らは大丈夫と言ってくれたが、心配そうな顔をした。

「本当に大丈夫なんだ。ごめん…」

俺が申し訳なさそうに笑うと彼らは体調には気をつけるように言って各自の部屋に帰ったようだった。今からやったらまぁ…日付が変わるまでには終わるだろう。俺は明日あいつに会って、何を言おうか考えつつ目の前にある書類の束に取り組むことにした。



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今日の分の仕事が終わり、気づいたらもう夕方だった。早くプロイセンに会わなくてはならないと2人に声をかけて急足に仕事場を離れる。昨日と同じ部屋の前に立って深呼吸を一つしてノックをした。

「俺だよ」
「おー」

中から間延びした声がしてドアノブをひねればプロイセンは椅子に座っていた。こちらを向いた彼の目の下には隈があって何を考えていたが知らないが俺は目を逸らした。

「名前のことだけどよ…オレ様はあいつに合わす顔がねぇんだ」
「……なんで…兄妹だろ?」
「名前がここにいるのは…元はと言えばオレが悪いんだよ」
「はぁ?」

唐突に言葉を入り出したプロイセンを睨みつける。名前がいるのは自分のせいだって?なんで止めなかったんだ。なんで簡単に手放したんだ。俺が怒りを露わにしていることにプロイセンはきっと気づいている。それを悟ってか彼はまた口を開いた。

「名前がここにきたのは第二次世界大戦の後…そうだろ?」
「…あぁ」
「講和会議の時に名前はロシアに割譲されたんだよ。俺様もな。どうしようもなかった…どうしようもなかったんだよ…」

力無く呟くプロイセンに俺は拳を堅く握った。この前の大戦。多くの人が傷付いて、苦しんで、それは俺も、こいつも。そして名前も。あの時の会議では様々な問題があってみんなが憔悴していた。怒鳴るもの項垂れるもの。敗戦国のこいつに割譲を止める力がなかったことなど考えなくてもわかることだった。名前の力が弱まっている今、皆名前への記憶が曖昧になっている。悔しいことだが彼女についての決め事を覚えていなくてもおかしくはなかった。力ないプロイセンに俺は奥歯を噛み締めた。いつもムカつくくらいにうざったくて自己中心なこいつが今こんなんでどうするんだ。

「だからって…何もしない言い訳にはならないだろ」
「…!」
「俺たちは名前がどこにいるかも知らない。ロシアさんに会う機会もない…でも、だからこそ考えないと。名前を助ける方法を。俺たちだけでも」
「…ケセセ。その通りだな」

ふ、と笑ったプロイセンが憎たらしかったけれど腹の虫は少し落ち着いた。この状況で少しでもできることをしなくてはならない。今名前はどんな状況なのだろう。ロシアさんは何をしているのだろう。カーテンの隙間から見えた夜空はひどく綺麗で澄んでいた。彼女がこれを見ることができていますように。

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徒野