11.変わる話
あれから2人で様々な情報を交換した。たまにプロイセンから名前の昔の話を聞くとすごくかわいい名前が頭に浮かんで幸せだった。プロイセンに伝えたら調子に乗るに違いないからそんなこと言ってやらないけど。探し回っても名前の情報はどこにもなくて、ただわかったのはロシアさんが何か考え込んでいるらしいということだけだった。

事態が動いたのはそれから数日した頃だった。物事は何もかもが急で俺はいつも通りに仕事場に行くとロシアさんからの招集の手紙が置いてあった。急いで仕事場を抜けてプロイセンの部屋に向かう。ついた時に俺は唖然とした。

「あの…ここの部屋って」
「いなくなったみたいです。よくは聞かされていませんが。急ですよね。」

プロイセンが生活していた部屋は跡形も無くなっていた。彼の部屋は綺麗に清掃されていて、他に情報は得られなかった。どういうことだ?考えながら何もわからない。俺ははっとして握ったままだったロシアさんからの手紙を見返した。行ったら何かわかるかもしれない。一縷の望みに縋りながら俺は彼の部屋へ足早に向かった。ロシアさんの部屋に最近はずっと行っていなかった。名前の報告書を出していた頃が酷く幸せで懐かしい思い出のように思えた。唾を飲み彼の部屋の前に立つ。久しぶりのこの扉に様々な感情が混ざった。意を決してノックをしようとした瞬間に中から

「入って」

と冷たい声が聞こえた。


-
部屋にはロシアさんがいつも通り座っていた。明らかに違うのは彼がやつれているように見えることだった。今にも泣きそうに見えるのは俺の見間違いだろうか。

「ロシアさん…」
「……返すよ」
「え?」
「名前を…返すよ」

彼は酷く力がなかった。ただそれだけを言って黙ってしまった。俺はただ息を呑んでそれを聞き、立ち尽くした。彼からの話はそれだけで、俺は言いたいことはたくさんあるはずだった。なのに頭は働かなくて口を動かしてみるのに何も言えなかった。何分立った頃だろうか。退出を促され、ようやく声が出た。酷く震えた声だった。

「名前は…もう…会えないんですか」
「……」

彼は俺と目を合わせなかった。ただ一枚の紙切れを俺に手渡した。渡されたメモには俺も知り得なかった裏口への行き方と日時だけが書かれていた。

「ロシアさんっ…!」

部屋を出て振り向いた頃にはもうロシアさんは見えなくなっていた。

プロイセンはいない。ロシアさんは顔を合わせてくれようとしない。俺は何を考えたらいいか分からなくなりながらもらった紙切れに書かれた日に目的地に向かっていた。廊下は酷くシンとしていて空気が冷えていた。何分も歩いて俺はようやく目的地らしきドアを見つけ、冷たいノブに手をかけた。目の前にいたのは…紛れもない、彼女だった。

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徒野