1.それが愛よとなく小鳥
冷たい空気が喉を刺す。真っ白な世界は相変わらず音が少なくて僕ははぁと息を吐き出した。それはすぐさま白く変わって消えてしまう。僕は今日も意味なくふらりと散歩に来た。森に行ったらまた知らない子に追いかけ回されるかもしれない。最近来るようになったドイツ騎士団も強い言葉で僕を怖がらせる。僕には友達ができないんだろうか…そう思うとひどく悲しかった。けれど森に行けばリトアニアくんもいるはずだ。彼は僕に意地悪をしてこないから友達になってくれるかも。そんな淡い期待で躊躇いながらも森の中への道を進んだ。
「(…あれ?)」
代わり映えしない道の上で僕は立ち止まった。風の音に混じって微かに誰かの泣き声が聞こえた気がしたのだ。もう一度耳を凝らすと断続的にそれは聞こえてくる。僕は声のする方へ近づいていった。もしかしたら僕と同じようにいじめられている子がいるのかも。そう考えると早く行かなくちゃと思った。僕と同じ思いをしてるなら早く助けてあげなくちゃ。雪に足を取られて何回も転びかけた。それでも声の方へ走っていく。少し視界が開け、光のさす方に何かのシルエットが見えた。僕のよく座っている切り株の上に居たのは知らない女の子だった。
「ひ…っ、ぐす…」
「……だ、だい…じょう…ぶ…?」
おそるおそる声をかける。ここら辺では見たことがない顔だった。泣いていた彼女は僕の顔を見ると目を丸くして、それから僕に飛びついた。何が起きたかわからない僕はその勢いのまま後ろに尻餅をついてしまう。降ったばかりの雪がまだ固まっていなかったのが幸いで、そこまで衝撃は強くなかった。僕にしがみついて一層強く泣き出した女の子に僕はどうしていいかわからない。けれど混乱する頭の中、ウクライナ姉さんがやってくれていたように震える手で彼女の背を摩り大丈夫だよ、と声をかけた。
「…どうして…ここにいたの?」
「っ、友達と来てたんだけど、まよっ、ちゃ…てっ、!」
友達、という言葉に身体がびくりと反応するのがわかった。リトアニアくんの友達ならまだしもあのおそろい人たちの友達だったら彼女までもが僕を迫害するんじゃないかと思った。不意に手の止まった僕に彼女のは腫れた目でこちらを見た。涙は止まりかけていたが泣いた跡が彼女の頬を濡らしていた。潤んだ瞳がかわいくて僕は息を呑んだ。
「どうしたの…?」
「あ…いや…えっと、君は友達がいるの?」
「うん…友達…なのかなぁ…たまに意地悪してくるけど」
「!君も意地悪されてるの!?」
僕が勢いよく言葉を発すると彼女はびくっとしてから少し思案し、してくるよ、と答える。
「じゃ、じゃあさ…僕たち友達にならない?僕、いじめられてて友達いないんだ。だからいじめられたらいつでもここに来ていいよ!」
自分でも少し無理のあることだと思った。けれど僕は初めて友達ができるんじゃないか、その期待が膨らんで今にもはじけそうだった。彼女は目を丸くしてから
「いいよ!」
と笑ってくれた。こんなふうに僕に笑ってくれたのは姉さん以外に初めてで、僕はその花のような笑みに心奪われた。
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徒野
「(…あれ?)」
代わり映えしない道の上で僕は立ち止まった。風の音に混じって微かに誰かの泣き声が聞こえた気がしたのだ。もう一度耳を凝らすと断続的にそれは聞こえてくる。僕は声のする方へ近づいていった。もしかしたら僕と同じようにいじめられている子がいるのかも。そう考えると早く行かなくちゃと思った。僕と同じ思いをしてるなら早く助けてあげなくちゃ。雪に足を取られて何回も転びかけた。それでも声の方へ走っていく。少し視界が開け、光のさす方に何かのシルエットが見えた。僕のよく座っている切り株の上に居たのは知らない女の子だった。
「ひ…っ、ぐす…」
「……だ、だい…じょう…ぶ…?」
おそるおそる声をかける。ここら辺では見たことがない顔だった。泣いていた彼女は僕の顔を見ると目を丸くして、それから僕に飛びついた。何が起きたかわからない僕はその勢いのまま後ろに尻餅をついてしまう。降ったばかりの雪がまだ固まっていなかったのが幸いで、そこまで衝撃は強くなかった。僕にしがみついて一層強く泣き出した女の子に僕はどうしていいかわからない。けれど混乱する頭の中、ウクライナ姉さんがやってくれていたように震える手で彼女の背を摩り大丈夫だよ、と声をかけた。
「…どうして…ここにいたの?」
「っ、友達と来てたんだけど、まよっ、ちゃ…てっ、!」
友達、という言葉に身体がびくりと反応するのがわかった。リトアニアくんの友達ならまだしもあのおそろい人たちの友達だったら彼女までもが僕を迫害するんじゃないかと思った。不意に手の止まった僕に彼女のは腫れた目でこちらを見た。涙は止まりかけていたが泣いた跡が彼女の頬を濡らしていた。潤んだ瞳がかわいくて僕は息を呑んだ。
「どうしたの…?」
「あ…いや…えっと、君は友達がいるの?」
「うん…友達…なのかなぁ…たまに意地悪してくるけど」
「!君も意地悪されてるの!?」
僕が勢いよく言葉を発すると彼女はびくっとしてから少し思案し、してくるよ、と答える。
「じゃ、じゃあさ…僕たち友達にならない?僕、いじめられてて友達いないんだ。だからいじめられたらいつでもここに来ていいよ!」
自分でも少し無理のあることだと思った。けれど僕は初めて友達ができるんじゃないか、その期待が膨らんで今にもはじけそうだった。彼女は目を丸くしてから
「いいよ!」
と笑ってくれた。こんなふうに僕に笑ってくれたのは姉さん以外に初めてで、僕はその花のような笑みに心奪われた。
徒野