6.デザートは自分の為のもの
議会に乱入してきた名前に場内はざわついていた。名前は亡国でかぎられた国しか知らない。そう考えれば疑問そうにしている国、興味なさげな国、そして気に食わないけれど彼女に目を奪われている国がいることは至極当たり前だった。名前がきたって何も変わりはしないのに、そうため息をついてけれど彼女から目が離せないのも事実だった。一緒に暮らしてたらな、一緒にいられたらな、そんな思いは彼女が僕のことを忘れていた、その事実を知った日に淡く崩れ去った。ずっと一緒にいてくれるって言ったのに。羽交い締めにされて場外に彼女が出る時に視線が交わった気がした。そんなの気のせいなのに、それにさえ胸を高鳴らせる自分が馬鹿らしかった。あぁ、もう一度やり直したい。やり直せたら。プロイセンくんに奪われる前に。そんな不毛な願いを自嘲しながらそっと文字の羅列している賠償の議題についての紙に目を向けた。僕にできるのは僕を愛してくれる国民のためのこと。そのことに集中しなくちゃ。賠償金、加える制裁、割譲、とそこまで見てからはっとして目を見開いた。自分の口が弧を描いたのが分かった。それを片手で隠して密かに笑う。そうだよ、ここで名前をもらって元に戻しちゃおう。ちっぽけなところをもらったところで国民の迷惑になるとも思えないし、おまけみたいなもの。散々な仕打ちを受けた僕へのご褒美。薬の開発も進んだし思い出してもらうこともできるはずだ。僕は静かに心の中で決め事をした。
束の間の静寂が訪れ、ドイツが各国に謝罪する。それに舌打ちするものダンマリを決め込むもの、各々が反応して、また硬直した議会は長引いていく。僕はそれが目に見えていたからさっさと手を上げ発言した。
「賠償としてプロイセンくんの土地だけじゃなくて名前ももらうね」
「なっ……」
ドイツは苦虫を噛み潰したような顔でこちらを見た。そんな顔されても痛くも痒くもない。端からあんな所要るなんて物好きだななんて声が聞こえたけれど、僕の他には欲しがる国もいないらしかった。
「決まりでいい?」
「……なんで名前なんだ」
「そんなの君に関係あるかなあ?」
「…」
ドイツは何も言わない。言えないんだろうね。僕はいい気分で彼を見る。他の国からの異論もなく、名前は僕に割譲されることになった。満面の笑顔を見せたいところをポーカーフェイスで顔の下に隠す。あぁ、楽しみ。なんだって頑張れるよ、そう心の底から思った。
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徒野
束の間の静寂が訪れ、ドイツが各国に謝罪する。それに舌打ちするものダンマリを決め込むもの、各々が反応して、また硬直した議会は長引いていく。僕はそれが目に見えていたからさっさと手を上げ発言した。
「賠償としてプロイセンくんの土地だけじゃなくて名前ももらうね」
「なっ……」
ドイツは苦虫を噛み潰したような顔でこちらを見た。そんな顔されても痛くも痒くもない。端からあんな所要るなんて物好きだななんて声が聞こえたけれど、僕の他には欲しがる国もいないらしかった。
「決まりでいい?」
「……なんで名前なんだ」
「そんなの君に関係あるかなあ?」
「…」
ドイツは何も言わない。言えないんだろうね。僕はいい気分で彼を見る。他の国からの異論もなく、名前は僕に割譲されることになった。満面の笑顔を見せたいところをポーカーフェイスで顔の下に隠す。あぁ、楽しみ。なんだって頑張れるよ、そう心の底から思った。
徒野