7.見知らぬ声
飛行機に乗せられいつもの家に帰ってきた。すこし散乱していた部屋はお手伝いさんが片付けてくれたのか綺麗になっていた。心の底から感謝しながらこのように尽くされている自分自身に胸の奥が痛かった。ふと机の上にメモが残されていることに気付く。そこにはしっかりご飯を食べること、と2人が言っていました、といつ書き置きが残されていた。自分だけ丁寧に扱われているその事実が、その優しさが今はひどくつらかった。自分は死なないのに、彼らと同じ国なのに、何もできないのか、そう思うとまた涙が滲んで、机にぽたぽたと垂れた。そのまま項垂れるようにしてソファに蹲り、止まらぬ涙のままぼんやりと意識は消えた。

それからというもの家にプロイセンとドイツがいないこと以外はあまり変わらなかった。国が大変な中、ご飯なんか食べている場合ではないと思った。国なんだから食べなくたって死なないのだ。食べなければ死んでしまう国民の方が何よりも優先だと思った。近くの民家を手伝ったりしても自分にできることは限られていた。それでも何もしないよりはマシだと思った。私に厳しいことを言う人もいた。でもそれは正論で、何もできない自分がいけないと、謝ることしかできない。それでみんなが少しでも前を向けるならそれでいい。

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朝早くに目が覚める。誰かが玄関の方に向かう音がした気がした。慣れない力仕事に身体中が痛くてそれに目を瞑るかのように乱暴に起き上がった。深く眠るのが怖くて、ソファでしか寝なくなっていた。ベッドのない人々がいるのに自分だけ心地よい生活をするのはおかしいと思ったから。小さな物音は気のせいかとも思ったが少ししてから久しぶりのドアをノックする音が聞こえた。誰だろう、そう思ってからもしかしてプロイセンかドイツが帰って来たのかもしれないということに思考が追いつき、走ってドアを開けた。

「っ!?」
「あはは、酷い顔」

目の前にいたのは似ても似つかない相手だった。なんでロシアが。全く理解できなくて固まっているとロシアは残念だった?なんて軽快に言った。私はそれに不快感を覚えドアを閉めようとしたがびくともしない。

「…なんの用…ですか」
「君をもらいに来たんだよね」
「なっ、」

声をあげようとした時にロシアの後ろにいた軍人が私に近づき、首の後ろに衝撃が走った。ぐわん、と視界が揺れてそれからは何もわからない。ただロシアの不気味な笑顔が頭に残っていた。

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徒野