4.分からない話
俺への書類仕事はほぼなくなった。けれど全てがなくなったわけじゃなくて、軽いものは名前の部屋でやることになった。彼女は書類を見ようとしたけれど流石に機密だし、ロシアさんに怒られることはしたくなかったから申し訳ないけど見ないように言った。彼女は少しだけまだ気になる様子だったけれどそっか、と諦めてそれからは見ようとはしなかった。彼女の1日は不気味なほどゆっくり進む。朝に起きて、彼女の部屋に向かうとぼんやり寝ぼけた彼女が見れることもある。彼女を起こすことは許されていないから彼女が1人で起きるまで俺は任された書類に目を通し筆を進めていく。初めは寝顔を見られることを嫌がっていた彼女だったけれどロシアさんに言われたからだと伝えたら何か言いたそうにしながら了承してくれた。俺は寝てる姿もかわいいし、と言いかけたけれどロシアさんのことを思い出してやめた。
彼女の身支度はロシアさんが手配した女中によって行われる。その時も俺は何か起きないようにずっと見ている。服を着替える時だけは後ろを向いて見ないけれど。初めはドギマギしたけれど毎日やっていたら慣れてきた。少し気になるくらいは許して欲しい。
それから朝ごはんを一緒に食べて彼女はロシア語やロシアの文化の勉強。俺は書類仕事。これが夜まで続く。たまにロシアさんが帰ってくると彼女はロシアさんに駆け寄って、ロシアさんはほっとした顔をする。そんな2人を見ていると変な気持ちになる。ロシアさんが恐れている何かってなんだろう。そんなこと起こりそうもないほど平和なのに。なんで彼はほっとした顔をするんだろう。
俺がロシアさんに監視役を頼まれてから以前聞いていた悲鳴は無くなった。ロシアさんの怒鳴り声も、鈍い音もしなくなった。ロシアさんは前以上に名前を大事にして、気にかけているようにすら見える。
「これ、今日の報告書です」
「ありがとう」
ロシアさんに書類を渡してそれで終わり。俺は部屋に戻って電気をつけた。シャワーを浴びながらぼんやり考える。彼女の部屋が血まみれになった日、彼女はどこにいたんだろう。そしてどこから戻ってきたんだろう、と。
「前に名前が何日がいなくなった日の話したよね、あれって本当に思い出せないの?」
「うん…何にも覚えてないんだよね、本当にそんなことがあったの?」
前に知らない、と言われたことだけれど昨日あんなことを考えていたからだろうか。俺の頭にはやっぱりそれが残っていて再び聞いてみた。答えは変わらない。あんなに悲鳴が聞こえたはずなのに。それからずっと疑問だったことがある。
「名前って国なの?」
「国?」
「えっと…普通の人と違う、ロシアさんとか俺みたいな」
不思議そうにこちらをみる彼女。見たところ彼女の身体には大きな傷はない。ロシアさんがつけたキスマークは残っているけれど。いつもキスマークが消えかけた頃に名前に会いにくることを俺は薄く勘づいていた。彼女は国についてわからなそうだ。でも名前が消える前、あんなに大きな音がしていたのに傷一つ残っていないなんておかしい気がした。やっぱり彼女は国なのだろうか。普通の女の子並には成長しているのに、自分が国と知らないことなんてあるのだろうか。
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徒野
彼女の身支度はロシアさんが手配した女中によって行われる。その時も俺は何か起きないようにずっと見ている。服を着替える時だけは後ろを向いて見ないけれど。初めはドギマギしたけれど毎日やっていたら慣れてきた。少し気になるくらいは許して欲しい。
それから朝ごはんを一緒に食べて彼女はロシア語やロシアの文化の勉強。俺は書類仕事。これが夜まで続く。たまにロシアさんが帰ってくると彼女はロシアさんに駆け寄って、ロシアさんはほっとした顔をする。そんな2人を見ていると変な気持ちになる。ロシアさんが恐れている何かってなんだろう。そんなこと起こりそうもないほど平和なのに。なんで彼はほっとした顔をするんだろう。
俺がロシアさんに監視役を頼まれてから以前聞いていた悲鳴は無くなった。ロシアさんの怒鳴り声も、鈍い音もしなくなった。ロシアさんは前以上に名前を大事にして、気にかけているようにすら見える。
「これ、今日の報告書です」
「ありがとう」
ロシアさんに書類を渡してそれで終わり。俺は部屋に戻って電気をつけた。シャワーを浴びながらぼんやり考える。彼女の部屋が血まみれになった日、彼女はどこにいたんだろう。そしてどこから戻ってきたんだろう、と。
「前に名前が何日がいなくなった日の話したよね、あれって本当に思い出せないの?」
「うん…何にも覚えてないんだよね、本当にそんなことがあったの?」
前に知らない、と言われたことだけれど昨日あんなことを考えていたからだろうか。俺の頭にはやっぱりそれが残っていて再び聞いてみた。答えは変わらない。あんなに悲鳴が聞こえたはずなのに。それからずっと疑問だったことがある。
「名前って国なの?」
「国?」
「えっと…普通の人と違う、ロシアさんとか俺みたいな」
不思議そうにこちらをみる彼女。見たところ彼女の身体には大きな傷はない。ロシアさんがつけたキスマークは残っているけれど。いつもキスマークが消えかけた頃に名前に会いにくることを俺は薄く勘づいていた。彼女は国についてわからなそうだ。でも名前が消える前、あんなに大きな音がしていたのに傷一つ残っていないなんておかしい気がした。やっぱり彼女は国なのだろうか。普通の女の子並には成長しているのに、自分が国と知らないことなんてあるのだろうか。
徒野