休憩

少し修正しました。
第五話

ホグワーツの側にある大きな湖の畔に、ナマエのお気に入りの休憩スポットがあった。近くには多くの木が生えており、その中の1本の木にもたれかかって、読書をしたり大広間からもらってきたお昼ご飯を食べたり、睡眠をとるのがナマエの定番の行動だった。

今日は授業のない休みの日だったこともあり、ナマエはそこで授業の予習復習を行うことにした。ここには、今まで誰も来ることがなかった為、ナマエの秘密のお気に入りスポットとなっていた。

実は昨日、ナマエは嫌な光景を目撃してしまった。
どんなに忘れようとしても、こびりついたように頭から離れない記憶は、ナマエの心を深い海の底に沈めたような暗くて寂しい気持ちにさせた。

ドラコが、『穢れた血』という言葉を使っている光景を見てしまったのだ。
薬草学のおさらいで行った、温室からの帰り道、中庭の近くを通りかかったときにその現場に出くわした。

箒を持ったドラコと、スリザリン生と、ハリー・ポッターと、ハーマイオニーとかいう名前の女の子とあと赤毛の…、他にも多くの人がいて、ドラコ達の周りには人だかりができていた。

いつもであれば、ナマエは自分には関係ないと、周りの出来事に興味を持つことはなかったのだが、その中心にドラコがいたから、つい足を止めて見てしまった。

ナマエが見たのは、ドラコがハーマイオニーにその言葉を吐き出した場面だけで、前後に何があったのかは知らないし、知りたくもないが、ちょうど運悪くその場面に出くわしてしまったから最悪だった。

その言葉を聞いた瞬間、身体が凍ったように固まって全身に緊張が走ったのがわかった。そして、思わずその場から逃げ出したのだ。
だからその後のことは知らない。そしてナマエは今日、この場所に自然と足が向かっていた。


ドラコが純血主義で、マグル生まれを見下していたのは知っていた。初めて会ったときから、彼とは考え方が合わないだろうと感じていたがその通りだった。
けれど、いざその現場を見てしまうとナマエは途端に怖気付いた。まさかこんなにも明らかな違いを見せつけられるとは思ってなかったのだ。

「どうしたらいいんだろう…」

無意識に思っていたことを口にしてしまっていた。
ナマエは今後のドラコとの付き合いに悩んでいた。自分自身、友達もまだできていない、出来損ないのハッフルパフ生だと自覚はある。友達と呼んでいいならばドラコだけが友達だった。

図書室で一緒に勉強したり、ご飯を一緒に食べたり、まだ少ない思い出も増えてきた。
嫌味が多いし、都合よく扱われることも多いけど、優しさを感じるときが少しずつ増えてきた。彼が大きく変わったのではらナマエが彼を理解できるようになってきたのだ。

ドラコと離れた方がいいのかもしれない、そう思うが現実味がまだない。今回の出来事は衝撃的で、嫌だと思った。でも彼が間違っていると言い切る言葉はでてこなかった。

「はぁ…」

勉強をしようと、持ってきた変身術の教科書は開けたものの今日はまだ一度も読めておらず、身に入らないのは、この問題が重くナマエの胸にのしかかっているから。何も考えない方が楽だとわかっているのに、考えることをやめられなかった。

「ピーーーッ」

そこへ、遠くから聞き覚えのあるフクロウの鳴き声がして、ナマエは辺りを見回した。
すると、城の方向から、ナマエのフクロウが飛んできていたのが見えた。

「コエダ!どうしたの!」

「ピー」

コエダ、と呼ばれた茶色の小さなフクロウは、ナマエの足元に止まると、加えていた手紙をナマエに渡した。

ちなみにコエダの名前の由来は、お店で見かけた時に、彼が人間を警戒して木の枝のように細くなっている姿が特徴的だったからだ。

ナマエにはもう慣れて、細くなる姿を見かけることは減ったが、臆病な性格の彼が、よく手紙を受け取ったなあとナマエは関心した。

ポケットに入れていた、フクロウ用のおやつをコエダに渡すと嬉しそうに食べて、足元でのんびりとしている。
返事を待っているのかもしれない。ナマエは急いで手紙を確認した。質の良い封筒のようで、白地に銀色で蓋が飾られていた。

『ナマエ、
僕が新しいスリザリンのシーカーだ。
当然の結果だが、どうせ君は何も知らないだろう。
まさか、クィディッチを知らないわけはないよな?

父上が最新の箒を買って下さったから、特別に君に見せてやる。今日の夕方、訓練場に来い。
ドラコ』

ナマエに手紙をくれる人なんて限られているから、両親か親戚かと思っていたから油断していた。まさかの人物からの手紙に思わず手を滑らして落としそうになりナマエは冷や汗をかいた。

無邪気で身勝手な内容が彼らしくて、それから、嬉しかった。
それが一番困ってしまう。
でも彼の言葉を借りれば、私達はこんな風に手紙をかく間柄だったのか?とふと小さな疑問がよぎったが、昨日今日の悩みの種の彼からの連絡はそれどころではなく、ナマエは頭を抱えた。

こんな私に、手紙をくれたこと、嬉しかっただろうことをわざわざ報告してくれたこと、大切な箒を見せるお誘いをくれたこと、心を少しだけ許してくれたことにナマエは泣きたくなるくらい胸が熱くなった。利用されてることは薄々気づいていたが、これは反則だ。

「はぁ…」

彼は純血主義者でマグル生まれを差別しイジメをするような人だ。ハッフルパフで人種も違うしそもそもの住む世界がナマエとは違うことは気づいていた。

直接その場面を見ていなくても、友達のいないナマエにも噂は回ってくる。
同室の同級生にも「この前、ドラコ・マルフォイとご飯食べてたよね?ナマエも純血主義なの?」と一緒にいただけで聞かれたこともある。正直、同じ側の人間としてみられることが、少しだけ怖かった。

「…っ!イタッ」

「ピー!」

「ごめんね、待たせて。はい、これ。ありがとう。先に帰っていいよ」

待ちくたびれたのか、コエダがナマエの手を軽く突いた為、ナマエは彼の頭を撫でると追加のおやつを渡し、先に帰らせることにした。

嬉しそうに飛び立った姿を見つめ、そろそろ寮に戻ろうと立ち上がった。
今日の数時間後のお誘いだから、返事はもう良いだろう。とにかく行ってみて、今後のこともそれから考えよう。ナマエはいよいよ考えても出ない答えに、先送りという手段を使った。