超ご都合設定。
公安の先輩の佑月くん21歳。
公安に入りたてアキくん18歳。
アキくんが岸辺を先生呼び。
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21×18
俺と佑月が出会った日
公安に入って、訓練5日目。
どの課に入れるか、またデビルハンターとして適性がどの程度あるのかを確認するための訓練は一ヶ月ほど期間がかかるらしい。確認するため、と言うものの殆どデビルハンターとしての強化訓練だった。
「今日はこの辺で終わりだ。飲み行くぞ」と突然先生に連れられた居酒屋の和室の個室。脱いだ靴を並べて置くとそこには黒のスニーカーが一人分あった。「アイツの方が早かったか」と呟いた先生。中に通されると煙草のにおいと公安の制服を着た黒髪の男が一人。
「岸辺さん、それが早川アキ?」
さっき言ったアイツとは、この黒髪の男のことなのだろう。煙草を灰皿へ置いた後、立ち上がって俺の前に立つ。身長は180センチぐらいだろうか。俺より少し高い目線の先を見ると黒髪の男と目が合った。
「俺は公安対魔2課所属の佑月。よろしく」
差し出された右手と整った顔を交互に見る。黒髪の襟足部分から長い毛が結って一つにまとめられているようだ。声も背丈も肩幅も、容易に男だと認識できたが水色の瞳を見て綺麗な人だな、と思った。長い睫毛にキリッとした目元、顔だけ見たら女の人に見間違いされることもあるだろう。
「コイツは今日からお前の世話係だ。佑月はお前より先輩だからな、敬語使え」世話係って何なんだと思ったが、どうやらマキマさんからの指示らしい。あの人が俺の事を気にかけてくれていると思うと嬉しくなったし断る訳にもいかない。
俺は差し出された先輩の手をやっと握った。
「で、野茂が…」と、二人が酒を飲みながら話していたのは公安内の話で俺には全然わからないし興味がなかったから俺は一人で刺身を食いながら黙って先輩を見ていた。俺の世話係だと言っていたが、どんなヤツなんだろう。見た目は普通そうで男女問わずにモテそうな顔つきだ。
「え、お前まだ未成年なの?」
「酒飲ませンなよ、佑月…っ」
来る途中も所持していた酒を飲んでいたからか、数本瓶を空にした後先に潰れたのは先生だった。
「こんなとこ連れてきた岸辺さんには言われたくねぇよな。あ、ソレとって」
机に突っ伏して酔い潰れた先生を支えながら起こす先輩に、ソレと指を刺された座布団を渡す。俺が渡した座布団は慣れた手つきで頭の下に敷かれて「しばらく起きねぇな、これは」と穏やかな表情を見せた。
それから1時間、俺と佑月との会話は無い。
その間に佑月はビールを2杯飲んで、俺は朝から訓練をしていて、眠かったしウトウトしていた。
「アキはなんで、デビルハンターになんてなろうと思ったんだ」新しい煙草に火をつけて先輩は、対して興味も無さそうにそう俺に話しかける。
「銃の悪魔を殺したい」
「そうなんだ。目的があって偉いね」
「アンタは…」
「俺は給料がいいからデビルハンターやってる」
先輩のクソみたいな理由を聞いて、俺は初めて会ったこの人をこの日から拒絶した。
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訓練12日目。
訓練は人に言えるものではないぐらい酷い日々だった。毎日疲労困憊。体力も精神面もボロボロで、まだ未成年だった俺は力も能力も未熟で納得がいかない日が続いた。その度先生にやめろと言われ、それも15回目ぐらいで数えるのをやめた。「銃の悪魔を殺したい」俺は復讐を願ってここまできた。だから使える物は使うし、大嫌いな悪魔とだってこれから契約することになるだろう。この訓練もそうだ。強くなるため、強くならなきゃすぐ殺される。だから食らいついて技を身につけて毎日必死だった。
「じゃあ、また夕方」
そんな日々の中、先輩の存在が俺のストレスの捌け口になっていた。俺の世話係といっても送迎役という感じで、会うのはたかが移動の15分程度。俺を訓練所に送って仕事に行って夕方ぐらいになると迎えに来る。時々、居る時もあるが俺には興味がないようで車で寝ていることが多かった。
訓練が終わって、迎えにきた先輩の車に乗って帰る途中。
「アキって飯どうしてんの」
「家で適当に作って食べる」
「そ、じゃあ今日は夕飯くって帰ろ」
そう言われて牛丼屋のチェーン店に連れられた。訓練中に岸辺さんと先輩がどこの牛丼がうまいかと話していたなと、少し眠たい頭で考える。運ばれてきた牛丼を食べつつ、先輩が「今日どうだった?」と聞けば「別に」と答える俺。
誰かとご飯を食べるのはあの日以来だった。それから訓練がある日は毎日一緒に夕飯を食べに行って同じ会話した。
「今日どうだった?」
毎日聞いてくるくせに、先輩は実際には興味はないのだと思う。だから「別に」と俺が一言返すとそれ以上は何も喋らないし何も聞かない。
「じゃあまた明日の9時に」先輩と夕飯を一緒に食べるようになってから数日後、最近去り際が少し寂しく感じるようになった。
給料だけ見て公安のデビルハンターになりたがるヤツも多い。だが、すぐ辞めるかすぐ殺されるかどちらかだ。だからあの人もいつか悪魔に殺される。
(もったいねぇ)
先輩の整った顔を思い出してそんな気持ちになった。
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訓練30日目。
特訓最後の日になった。
珍しく訓練所に残っている先輩を見ていると先生が「アイツが気になるか」と嫌な顔をしてきた。
「あの人、強いんですか」
「強いもなにも、佑月は頭のネジがぶっ飛んでやがる」
「ネジ?」
「あぁじゃなきゃ今頃悪魔に殺されてる。
お前も今のままじゃすぐ死ぬぞ」
『佑月。手本見せてやれ』
それから始まった先生と先輩の手合わせ。数秒後、先輩は先生の背後を取った。凄かった。
こんなに強いのに、給料のためにデビルハンターをやってるという先輩が恐ろしく感じた。
訓練が終わり、マキマさんに呼び出された俺と先輩は先輩の運転する車でそのまま東京本部へ向うことになった。
部屋にはマキマさんと、俺と先輩の三人。
「早川くんは、今回の訓練で適正ありと判断されて、2課所属になりました」
「ありがとうございます」
マキマさんに告げられて、渡されたのは公安手帳と制服。銃の悪魔の復讐へ、一歩近づいたことが嬉しくて受け取る手が少し震えた。
それから提出書類等の話を聞いてから一礼し先輩と俺は部屋を後にする。「目的ができたら、どれだけ強くなれるのかな」先輩がドアを閉めようとした時、マキマさんの声が聞こえたが、先輩はそのままドアを閉めた。
「明日からお願いします、佑月先輩」
頷いた先輩は、そのまま俺の頭を撫でた。