頭がパンクしそうです

ミノウ03

私が3歳、園子お姉ちゃんが5歳の時だった
一般常識や世間を知るためにも来年から幼稚園に通いましょうねと母から言われ、マジか、そういうとこちゃんとしてるんだな金持ちでも、と普段から忙しい母に抱っこされながらびっくりしていた
既に園子お姉ちゃんは去年から幼稚園に通っていて、おやつの時間を過ぎると帰ってきて元気いっぱいに私を連れ回すのだ
どうやら仲のいい女の子の友達が出来たらしくその子と今日は何をしただとかどんな話をしたのかだとか友達をいじめるいじめっ子を懲らしめてやったのだとか姉の1日を振り返る時間が毎日のようにある
とりあえずすごいねぇ、たのしそうだねぇ、いいねぇ、と肯定してあげていると聞き流していても満足気に笑うのだから可愛いものだ
しかし私も保育園かぁ…今以上に子供に囲まれて疲れそうだな…なんて先の事を考えると少し憂鬱になった


そんなある日の事だった


「夢子!外にあそびに行くわよ!!」

「へ!?おそと?!」

「私の友達しょうかいしてあげるわ!」

「えぇぇおねえちゃんのともだちはおねえちゃんのともだちでしょー? わたしはなかよくしなくていいよぉ」

「なにわがままいってんのよ!いいからきなさい!」


いや我儘言ってるのどっちよ、と呆れるもののまだ3歳のこの体ではどんどん力をつけていく姉に逆らえるわけがなく、私は玄関で待機していた浅霧さんから帽子を受け取ってお姉ちゃんに手を引かれて家を出るのであった

玄関の外に待機していたリムジンにドアを開けてもらい二人で乗り込む。
いやこんな子供に気を遣わせてすみませんね、と運転手の中岡さん(推定50歳前後の男性)に感謝を述べると苦笑される
園子お姉ちゃんはそんなこと気にせず「中岡さん!米花区米花町2丁目21番地?にいってちょうだい!」メモを片手に中岡さんに行き先を指示した

べいかちょう?

何だろうか、また聞き覚えがあるような気がした
園子お姉ちゃんへの既視感と同じでべいかちょうとやらも私は聞いたことがある気がした
何だっけ?べいか…べいかぁ…?

べいかーすとりーとのぼうれぇ…


「!!!!?」

「?!な、なに?どうしたの夢子」

「園子!!!?」

「は!!!?あんた何お姉さまを呼び捨てにしてんのよ!!!!」


パシン、と頭を軽く叩かれる
いてえ、と叩かれた場所を抑えるが全く生意気になって!とぷんぷん怒る目の前の少女を改めて観察した
おでこを出して綺麗に揃えられたボブカット、赤いリボンは記憶とは違うがこれが緑のカチューシャになったら私は確かに彼女を知っていた。
鈴木園子…何故今まで気付かなかったのだろうか

見た目は子供頭脳は大人その名も名探偵コナン!!の登場人物ではないか

え、でも園子に姉妹っていたの?てかなに、ここコナンの世界なの?え、転生したと思ったら異世界なの?
転生しただけでも奇妙奇天烈な出来事だと思っていたが漫画の世界でもあった事にびっくりした
こんなのってあるの?私がよく読んでた夢小説みたいじゃん…もしかして長い夢見てる…?とこの3年間を薄ら疑い始めた

いやそれよりも今気にするべきは…


「あ、らぁーーんちゃーーーん!!」

「!!」


いつの間にか停まった車、中岡さんが運転席から降りて私達が降りやすいように外から後部座席のドアを開けて待ってくれている
園子お姉ちゃんは私を置いてさっさと車から降り、目の前のお屋敷の玄関先にいた女の子に笑顔で駆け寄っていった

置いていくなよぉーと思いつつこの家が何なのかと分かってしまうためリムジンから降りるのを躊躇した

どうしよう、多分ここは…


「おい園子、後ろのあいついいのかよ」


聞き覚えのあるショタボイスが耳に飛び込んできた
そう、目の前のお屋敷といえるお家の表札は「工藤」。
主人公様である 工藤 新一クン(5歳)が、呆れたように玄関の扉越しに私を見ていた


「ああ、2人にしょうかいするわね!私の妹の夢子よ」

「へぇー!園子ちゃん妹がいるんだぁーかわいいねぇ

 私、毛利 蘭!仲良くしてね?」


ニッコリと笑みを浮かべて私に近寄ってきたのは未来の空手部主将、一部からはエンジェルと呼ばれる超美人ヒロイン毛利蘭だった
プニプニとしたほっぺにクリクリとしたお目々、いやまさに今天使なんじゃない…?
ハイって右手を出されてこれは握手なのかお手手をつなごう?なのか分からずオズオズとしていると「早くきなさいよ!」と私の右手を園子お姉ちゃんが掴んだ。それを見て蘭ちゃんが私の左手を掴んでニコニコしてくる。
え、むり、両手に花なの今


「おめぇ喋れねえのかよ」

「ぁ…えっと…しゃべれる…」

「ふーん、俺は工藤 新一。ま、いいから家入れよ」

「「はーい!」」


そういやさっきから茫然とするばかりで声を出していなかった事に気付く。
目の前のコナンと同じ見た目をしている少年がサラっと名乗る。
やはり工藤新一なのか。幼稚園児の、工藤新一が目の前に?

蘭ちゃんと園子お姉ちゃんに手を引かれて工藤家の玄関を潜ることになる
こっちを振り返ってツンとした態度で私達を見つめて来る目の前の眼鏡をかけていないコナン君は正真正銘 工藤新一で、
いや、なんていうか、もう



頭がパンクしそうです

(異世界トリップ転生物だった…)

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