知恵熱ではなくストレス性高体温症


新一くんの家に遊びに行った翌日から数日にかけて私はお絵かき帳に相関図を描くことにした
前世のヲタク技能として培った画力を遺憾なく発揮して名前などは書かずに顔アイコンみたいな感じで描く。え、うまいのかって?私がわかればいいのだ。
新一くんとコナンの間に=を書いてそこから角を生やした女の子らしき何かに矢印を書く。
小五郎や園子、少年探偵団、服部や和葉、黒ずくめの男達も描く。

名探偵コナン。私が幼少期にアニメが始まってそれから私が死ぬまでずっと原作もアニメも続いた国民的アニメだ。
前世でいう2〜3年前、Twitterで沢山映画の反響を見て子どもの頃見ていたアニメに今じゃ魅力的なイケメンがいる事を知り仕事も忙しい中少しだけ自身の中で新ジャンルとしてハマったのだ。
上映から3ヶ月経ってもレイトショーがまだやっていたので数年ぶりに映画館へ仕事帰りに寄って観てしまった程だった。
久しぶりに見ても相変わらずの事件率でこの町やばいなと笑ったのを覚えている。
まさか自分がその渦中にいるなんて思ってもみなかったが前世で読み耽った夢小説が今じゃ私の教科書みたいなものだろう。
生きねば。死に神がうようよいるこの世界でなんとか生きて今度は老衰、いやせめて病気とかで死にたい。
誰かに殺されるなんて真っ平だ。

あとは警察関係者かな、と手狭になってきたお絵かき帳のページの空いてる部分に目暮警部とか佐藤刑事とか高木刑事を描く。
そして、ピタリと私の手が止まった


降谷零

またの名を安室透、またの名をバーボン。

彼の情報がわんさかネット上に転がっていて、アラサーでベビーフェイス、金髪褐色肌で淡く灰色がかった碧眼の整ったルックスも然る事乍ら表の顔は安室透としての私立探偵、裏の顔は物語の鍵を握る黒の組織のコードネーム持ちの探り屋、そんな彼の本当の姿は公安警察で危険と隣り合わせの潜入捜査中の身であり、過去にあった出来事、信念、その全てに惹かれてぶっちゃければ彼のせいでコナン沼に引き摺り込まれたと言っても過言じゃない。
彼の幼馴染も、警察学校の同期生も、皆彼を置いて逝ってしまった
1人孤独に自分の正義の為に闇に身を投じる
トリプルフェイス、なんて映画の大ヒットを機に朝のワイドショー等で取り上げられて朝からファンは歓喜したものだ


そして赤井秀一。

またの名を諸星大。またの名をライ。またの名を沖矢昴。

FBIに所属してる黒の組織に降谷零と同時期に潜入した少し強面なミステリアスな男性。
所謂大人の男、って感じの色気のある人。黒髪に黒いニット帽、隈のある特徴的な目から覗くモスグリーン色。
狙撃手としてとても優秀で物凄い遠くからも狙撃できる凄腕で頭も切れる、煙草とウイスキーを嗜む降谷零より前に人気を博したイケメンキャラ。
組織に潜入するために宮野明美に当たり屋を仕掛けるなど結構思い切った事もする人で一時の間コナン君の協力で死んだ事になる。その間沖矢昴という大学院生の別人として生活していた。
降谷零の友人であるスコッチ…諸伏景光が自殺をする時にその場にいて、降谷さんの足音に気を取られて自殺を許してしまった負い目と真実を降谷さんに秘匿した、冷たく厳しいけれど優しい人、だと私個人は思っている。

ゆっくり、時間をかけて丁寧に丁寧に描いていく
原作が始まったら会えるのだろうか、なんて淡い期待を抱きながら。
カッコよすぎて遠目から見てるだけで充分だが。

お絵かき帳のページを捲り与えられたクレヨンで時系列を思い出して書き出した。

私が3歳で園子お姉ちゃんは5歳。
原作は確か高校2年生だったはず。新一くん達が17歳、と思うとあと12年しかない。
3歳の体では先ず体力作りだろうか、せめて逃げる脚力ぐらいは欲しい。護身術とか学ぶべきだろうか。
蘭ちゃんみたいに空手?いやあそこまではなれないな、私の気力がもつ気がしない。
とりあえず目下は体力作り。何か習うにしても体力大事。
部屋の中で飛び回っていようか?…外走り回れって園子お姉ちゃんがうるさそうだな。

あとは…夢小説でよくある救済を、するべきかどうか。
助けたい、本心ではみんな生きていてほしい
だが、出来るだろうか。私に。
めちゃくちゃ頭がいい訳でも無い、めちゃくちゃ運動神経がいい訳でも無い…平凡で、むしろ鈍臭いレベルの人間だ。
今世では鈴木財閥の末娘という良いんだか悪いんだか分からないポジションを既に持っている。人を助ける為ならお家の力を使ってもいいだろうか、いい事にしようか。


「やっぱり、生きててほしい」


私が一番最初に救えそうな時期の人は…降谷零の警察学校時代の友人、萩原研二。確か原作開始7年前の11月7日の爆弾処理中だったはず。
この辺はほとんど夢小説で培った知識なので詳細が不明だ。
時間が無いからと後回しにせず、原作まとめ買いして読めば良かったと今更ながら後悔する。気になる回のアニメちょい見しかしてないよ…

私が8歳の時の11月7日がXデー。
次に亡くなるのが松田陣平、諸伏景光。伊達航。
松田陣平と諸伏景光がどちらが先かは私が知ってる前世のタイミングでは明らかになっていなかったハズ。
松田が3年前、伊達が1年前。
赤井秀一の妹である世良真純が中学生のときにスコッチである諸伏にベースを教えて貰ってるので諸伏の運命の日は原作の3・4年前ではないかと思うが…
また顔アイコンみたいな物を描いて番号だけ振っておいた。

つまりはあと5年で先ず萩原さんを助けなきゃいけないのか…と思うが彼の死の理由的に自分が出来ることが思い付かない
…8歳、8歳か…マンションの爆弾処理なら避難し遅れた子供として彼の前に現れれば、子供の避難優先としてその場から離れてくれるだろうか?
やはりそれまでにある程度走れるようになった方がいいかなぁ…

宮野明美さんも助けてあげたいけれど黒の組織が直接関わる事件となると生半可な計画ではダメだろう

あとは、あとは…うーん、うーん…

クレヨンを片手にお絵かき帳にビッシリと他人から見たら謎の記号ばかりを書き込み私は頭を悩ませた


この日あれこれ数日にわたって考え過ぎた私は夕方から高熱を出して寝込んだのだった



知恵熱ではなくストレス性高体温症


(うーん…うーん…)

(夢子だいじょうぶ?)

(お医者様に診せたので明日には良くなりますよ、さ、園子お嬢様も今日は寝ましょうね)

(うん…)




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