エデンには誰もいない






朝起きたら目元がぼやぼやとした。隣には帝統が眠る。昨日の夜あれだけ複雑な雰囲気だったのに、よく私の隣で眠れたものだ。彼が眠っているところは初めて見たかもしれない。まだ少し幼い、言ったら怒られそうだけれど可愛らしい寝顔だった。
秋も深まって、少しした頃の朝方。裸のままではさすがに寒い。彼を起こさないようにそっとベッドを降りてパジャマと下着をかき集めた。そういえば去年の今頃、私は初めて彼に抱かれた。あのあたりから壊れたと感じ始めていて、それを今までずるずると引きずっていた。もしもそれを彼が重荷に感じているならば、そろそろ頃合いである。
後ろから衣擦れの音が聞こえた。帝統が少しだけ動いたみたいだ。派手な色の髪を撫でる。まだもう少し、寝ていても大丈夫。どれだけひどいことをされても、私はこの人のことが嫌いになれなかった。いつからかは分からないけれど、私はこの人を心の底から好きになっていたのだと思う。
彼と朝を迎えるのは初めてじゃないけれど、一緒に朝ごはんを食べるのは初めてだった。私は常にご飯を食べるし、彼も一緒でいいか。お味噌汁を作るのは正直面倒だし体がだるいから嫌なのだけれど、せっかく初めて一緒に食べられるかもしれない朝ごはんなのだ、少し無理をしたっていい。

「帝統、帝統」
呼びかけると目を覚ます。おはようと声をかけると、起き抜けのぼんやりとした声でそう返される。体を起こして私の姿を確認すると、何かを言おうとした。「朝ごはん、食べるでしょ」ぼんやりとしたままの彼を置いて台所に急いだ。昨日のことは昨日のこと、今日のことは今日のこと。そう強がって割り切らなければ、どうにかなってしまいそうだった。
「百合子」
こうしてまた私の方へ一歩踏み込んでくる彼は、私を壊しにかかるのだ。


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