4.この世界で自分を知る@

私が自分に宿る力に気づいて10年が経った。
私は今日18歳になる。

この10年で私はすくすくと成長し、大人へと変わっていった。
小さかった手足はすらりと伸び、今では母に似て綺麗になったと
島の住人から声をかけられる事も多くなった。
母と同じ、綺麗な黒髪も腰まで伸ばした。
女の髪は神聖なものである為、伸ばせば伸ばすほど占いの質が高まるのだ
そうだ。手入れは酷く面倒だけど。

私が能力に気づいた8歳の頃は、自分の能力に脅えた。
あの時水晶の中で見た落雷は次の日本当に起こったのだ。混乱して涙目になっている私を他所に、ケラケラと笑っている母を今でも覚えている。

能力に怯えていた私だったが、この10年で母から能力の使い方を学んだ。
一番難しかったのは、自分の見たい予知を見る事。至極簡単に聞こえるが
少しでも雑念が入れば水晶の中は揺れ、予知を見る事が出来ないのだ。
その他にも占い(予知)をする時の話し方や仕草、色んな事を学び、
母から合格点をもらったのもごく最近。

そしてついに、私は明日

占い師デビューをする。

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10年前----------------------...

「ナマエ、貴方は予知能力があるのよお〜。ふふふ!流石、私の子ねぇ」

「…よち、のうりょく?」

目をぱちぱちしていると、
そうよお〜!と言ってウインクする母は、今日も美かった。

「私達はね、予知能力を持ってこの世に生を受けたのよぉ」

「??じゃあ、わたしは、ふつうの、にんげんじゃないの?」

「……ナマエ、」

私の純粋な心からでた質問に母は少し言葉を濁した。それから、いつもの様なふざけた口調ではなく、芯のある声で

「ナマエ、私たちは人間よぉ。少し不思議な力があるだけの、ただの人間なの。」

「だから、何も引け目を感じる必要もない。堂々と生きなさい。…でもね、この世界にはこの島のようにいい人間ばかりではないわ…」

「私達の力で悪い事をしようとする人間だっている。きっとそんな人間に偶然出会ってしまった時は、出会ってしまったその 偶然 を恨むでしょう。

ナマエ、覚えておいて頂戴

この世界に偶然なんてないのよぉ

全ては-----------


-------------必然なの」


8歳の私にそう言った母は、少し悲しそうに笑って、私の額にいつものおまじないをかけた。きっと8歳の私には理解できないと思ったのだろう。しかし、私は元は、アラサーのおばさんなのだ。

母が言いたい事はおおよそ理解出来た。

物事は偶然では無く、全て必然だ 。

そして必然という事はそうなる事が決まっている。どんな事が起ころうと、それは世界に必要な事であるということ。例えその必然で死んだとしても意味のある事だ、と。

母が、何故そんなことを急に言ったのか。
あの頃の私は分からなかったが、幼い私を撫でる母の顔は悲しそうだった。

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……

「「かんぱ〜い!」」

カーンッ!グラスとグラスをぶつけた良い音が店に響く。

今日は母が占い師デビューだからと、島にあるBARを貸し切ってくれ、2人だけだが、お祝い会を催してくれたのだ。

私はグラスに入ったお酒を一気に煽る。今日は母に聞きたいことがあったのだ。私は18年間、ずっと聞けなかったことがある。

母の生い立ちやずっとずっと気になっていた1度も会ったことの無い父の事。

能力に気づいたあの日に見た悲しそうに笑う母が忘れられず今の今まで聞けなかったのだ。

「・・・お母さん、聞きたいことがあるわ」

そういった私の顔は上手く笑えていないだろう。

「あらぁ〜何かしら?」

私の声に振り返った母は少しだけ皺が増えてはいるが、
相も変わらず島1番と呼ばれる、美人であった。



Aに続く
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