5.この世界で自分を知るA
「ママは、この島で生まれたの?」
そう聞いた私に母はふふふと笑って座っていた細い足を組み替えグラスを煽る。
「答えはNoね、ここではないもっともっと遠ぉ〜い島からきたのよ」
遠い島……?
「遠いってどれぐらいなの?」
「そうねぇ…もう、覚えてないわぁ」
「ママは、どうしてこの島にきたの?」
「ふふ!実はね〜貴方のパパを探しに旅に出たのよぉ!貴女をお腹に授かった状態でね」
「え!?」
母から出た言葉は私のもう1つの疑問を含んだ回答だった。
驚いて目を見開く私を他所に母はきれいなお酒が入ったグラスを見つめながら続きを話し始める。
「貴女のパパを探して、この荒れ狂う海を旅したのよぉ!旅と言っても少しだけど!」
「ぱ、ぱ……?」
「そうよぉ!パパ!私を置いていった酷いヒト…でもね、私の事を1番愛してくれた最高のヒトよぉ」
「……」
そう語る母は、白い頬をピンク色に染め、まるで恋する少女だった。
そんな母に私はどこか懐かしくなった。
前世の私も、愛する夫と話す時だけは恋する少女だったなぁ、と。
私は今でも、夫を愛してるもの。
「ママは、パパの事今でも好きなのね・・・」
「えぇ…愛しているわぁ・・・でも、仕方なかったのよ、あのヒトは私を置いていくしかなかったの」
「ナマエ・・・あなたは、あのヒトと私の可愛い娘」
母は、そういうと私の頬を酷く愛おしそうに撫で、語り始めた。
「ママが生まれたのは、小さな島だったわぁ
ここの島のように栄えてはいなかったけれど、人も温かくて平和でなんてことない島よ〜
でも少し特殊な島でね、島の住人みんなこの予知能力を持っていたわぁ。
それに、いつも島の周りに大渦が発生していたの。
その大渦を船で進もうものなら、船ごと渦に飲まれてしまう・・・
だから、島の住人は外の世界にでる事はなかったし、ましてや外の世界から人がやってくる事なんてなかったわ・・・
あの運命の日まではね」
「運命の日?」
「そうよぉ!ママとパパの出会いの日!!!!
ふふふ〜思い出しただけでもドキドキするわぁ・・・・」
「・・・ママ・・・」
「ふふふ〜そうせかさないで、
あの日、私はたまたま海岸で珍しい貝殻が手に入るって予知を見たから海岸を歩いていたの。そんな時よ・・・海岸の岩陰に、大きな影が見えたの。影の先を見たら、そこにあったのは大きな大きな船だったわぁ。
はじめは、どうして船がこんなところにってとても驚いたんだけどねぇ。ママ、どうしてもその船が気になっちゃって・・・島の人に伝える前にちょっとだけ、と思って船に近づいたの、
そしたらあらビックリ!その船は、海賊船だったのよぉ!」
「海賊!?」
驚きを隠せず大きな声がでる。
えぇ、そうよ。とうれしそうに語る母に直間的だが何か、いやな予感がした。