6.この世界で自分を知るB

「ふふふ、それでね・・・ママが船にこっそり近づいて、船を見たら何やら船の中がバタバタしてるじゃない。それに船も所々傷ついてて、すぐに分かったわぁ〜。この人達はあの大渦の中を超えてきた外の世界の人ねって。

その後、少し様子を見てから、島の人に伝えに行こうと思って立ち上がったの。
そしたら落ちていた木の枝踏んじゃって・・・
音に気づいた船の人に、それはもうヒカリの速さで捕まえられたわぁ。

手首を縛られて、船の甲板に跪かされて、武器を持った男たちに囲われてね、
これは殺されるなって思ったわぁ。

その時よ、あのヒトと初めて出会ったの」

「・・・パパ?」

「えぇ、あのヒトはその大きな船の副船長さんでね

私がこの島の住人だと分かるとすぐに優しい手付きで縄を解いてくれたわぁ。

島の周りの大渦を迂回しようとしたら急に天候が崩れて舵が効かなくなったそうでね、あろう事か大渦に飛び込んでしまったそうよぉ。
説明をしてくれる口調も、優しいものだから私ったら怖いのやらうれしいのやらで泣いちゃったの・・・

そしたら、あのヒト、涙を手で掬って
『泣かないで、かわいいお嬢さん』
なんて言うのよぉ〜!もうそんなの好きになるに決まってるじゃないのぉ〜!」

バンッバンッバンッ

「ママ、ちょっと落ちついて、もうそんなに机叩かないで。ほら、お水!」

発狂する母の背を優しくさすり、水を差し出す。
ありがとう、本当にナマエは優しい子ねぇ・・・目に入れても痛くないとはこの事なのねぇ、とうつろな目で言った後、水を目に入れようとする母は完全なる酔っ払いだ。

「ママ、大丈夫?」

「大丈夫よぉ。あのヒトの話になるとダメねぇ・・・」

「ふふ、こんなママ初めて」

母は基本、マイペースだ。感情をむき出しにするところなんて見た事もない。

「ふふふふ、ママもねぇ、パパに沢山初めてをもらったのよぉ。

あのヒトは、あの後船が修復するまでの間この島に滞在させてほしいって私に言ったの。しかも、島の住人をむやみに脅かしたくないから内緒でなんて言うのよぉ。
秘密なんて私すっごくドキドキしたわぁ。

だから、私も彼にお願いしたの。黙っている代わりに貴方の事を教えてって!

そこから、私毎日あのヒトの船に通ったわぁ。そこで色んな話をして、その船の船長さんにも挨拶をしたわ。船長さんとあのヒトは、とっても信頼しあっていて、大切な仲間の話を3人でした事もあったのよぉ。

初めての話ばっかりで、私すっごくすっごく幸せだった。
それにね、毎日話をするうちにあのヒト、手を握ってくれたり髪を撫でてくれたり私の気持ちにこたえてくれるようになったの。言葉こそ無かったけど、私達は互いを愛しあったわ・・・ママの粘りがちねぇ」

でも・・・と言葉を続けた母の顔が曇る。

「私があんまりにも毎日船に出かけるものだから島の人に感づかれちゃったの」