7.この世界で自分を知るC
馬鹿よねぇ、と遠くを見て笑う母。
「・・・その後は、どうなったの?」
「ふふふふ、島の住人に感づかれた時には、既に船の修復がほぼ完了していたの。
もう後は海にでるだけ。でも無事に大渦をでられる保証は無い・・・だから私は、彼らの旅行きを毎日予知したわぁ。あのヒトに頼み込んで、船の出航を待ってもらっていたそんなある日、ようやく私は彼らの船が無事に大渦を抜ける姿を予知したの、私、とてもうれしくて彼らにすぐに伝えたわ。今日の夜、月がそらの真上に来た時ここを出なさいってね。
そしたら、あのヒトってば船長さんととっても嬉しそうに次の島はどんなだろうって笑うのよぉ。そんなあのヒトの顔を見て、私も嬉しかったわ。でも、その反面とっても悲しかった。
こんなに好きななった人ともう会えないなんて、」
「ママ・・・」
はらりと、母の頬に涙がつたう。私は慌てて母のほうに手を伸ばし涙を掬った。
母は少し驚いた顔をしてから、・・・そういう所はパパそっくりねぇ、と笑った。
「最後の夜…私はあのヒトにお別れを言おうって思って、船に行く準備をしていたわぁ。そしたら、私の異変に感づいていた島の人達にとうとうばれちゃってね。『あれは海賊船だ、危険なんだ』って言われたわ。何度も島の住人に、彼らは危険ではないって訴えたけど、信じてもらえずに挙句暴れだした私を島の住人は家に閉じ込めたの。
結果、私は、彼らを見送る事もお別れをする事も出来なかった。
朝になって、ようやく島の人が家の鍵を開けてくれたけど、すでに海にはあのヒトの船は無かった。
凄く悲しくて、それからは毎日泣いたわぁ。泣けば泣くほど、あの時私の涙をぬぐってくれたあのヒトを思い出す。それの繰り返しね・・・。
ご飯も食べない私を心配した優しい島の人は、泣く私を引きずってお医者様のところへ連れて行ってくれたわぁ。
そこで、ナマエ・・・・
あなたが私のお腹にいる事がわかった・・・
そう分かった瞬間、私、急に
あなたを守らなきゃって
思って涙が止まったのよ 」
母は、愛おしそうに私の頬を手をあてた。
・・・その時の彼女の気持ちはよく分かる、私も娘がお腹にいると分かった瞬間体の奥から力がこみ上げてきて『守らなきゃ』って、女は母になる瞬間、変わるのだ。
「あなたは、ママの希望・・・
あのヒトが、私に残してくれた
世界で一番大切な宝物よぉ!」
そういって母は私を抱きしめた。