8.この世界の自分を知るD

母の腕の中はすごく暖かかった。

「ママ」

「なあに?私の可愛い娘」

ちゅっ
母が驚いたように自分の額に手を当てる。


「ママ、私の大切なママ、愛してるわ

パパもママと出会えて幸せだったと思う・・・
だって、ママに出会えた私は、今、こんなにも幸せなんだもの」

母が私にこのまじないをする事はあっても、私から母にしたのはこれが始めて。でも、私
を宝物だと言ってくれたこの世界の大切な母にどうしても伝えたくなった。愛してくれて、ありがとうって。

「・・・ナマエ・・・」

母の目尻にまた涙が溜まる。

「なあに?私の愛おしいママ・・・泣かないで?」

母から聞いた父の台詞。実際言ってみると少し照ずかしいものだった。
母は嬉しそうに口を両手で覆い、ぽつりぽつりとまた話し出した。

「・・・あなたは小さい頃から、どこか大人びてるところがあったわぁ。あなたが小さい頃、同じ年齢の子と遊んでもあなたはおもちゃを譲ってあげて、お菓子を取られても怒ったりしない・・・

それを見た時、ママね

あなたを我慢させてるんじゃないかって、父親のいない事に気を使わせてるんじゃないかって、凄く悩んだのよぉ・・・」


「っ・・・」

ママの言葉は、私の頭を直撃した。母は、気づいていたのだ私の不自然さに。子供の頃は、周りに自分の中身が大人だと悟られないよう必死に振舞っていた。誰にも気づかれていないって思ってたし、ましてや自分の母を悩ませていたなんて今の今までしらなかった。

固まる私に、母は

「大丈夫よぉ、今は悩んじゃいないわぁ。だぁってこんなにママ思いな、良い子に育ったんだものぉ」

とふわりと笑い、話を続けた。

「ママね、あなたがお腹にいる事がわかってから少したったある日、ふと、このお腹の子に自分の父親を見せてあげたいって思ったの。だから私は島の住人を振り切って、たった1人で島から出たわぁ。予知の力で、貴方が無事に生まれてくる未来は見てたんだけど、詳しくは見えなくってね。大渦を抜けた後すぐ、波に船毎さらわれ、気がついたらこの占い島辿り着いたわぁ。


そして、ここであなたを産んだの」



「・・・・・・・?

私が生まれるまで、ずっとこの島にいたの?」

母は首を縦に振る。

私が生まれるまでにまだ時間はあっただろうに
何故母は、再び父を探しに行かなかったのだろう?

ふと疑問に思った。


「ふふ・・・この島にきて知ったわ、あのヒトの事・・・彼の仲間の事、そして今彼らが何処にいるのかもね」


「え?」


「私がこの島にいる頃、彼らがいるであろうは、”東の海 ロークダウン”」


「ロークダウンって・・・あの・・・?」


”東の海 ロークダウン”そう聞けば、誰もが思い浮かべる人物がいる。


かつて海賊王と呼ばれ、この大海賊時代を造ったとされる男。


”ゴールド・ロジャー”  彼の処刑の地。



「えぇ、彼が処刑されるのであれば、あのヒトも絶対そこにいたわぁ。


だって、あのヒトと彼は大切な”仲間”なんだもの」



------------------------...海賊王の 仲間



「・・・ッ!」



私は、気づいてしまった。今までの母の話にでてきた



『大きな船』・『副船長』・『海賊王』・『仲間』


ここから導き出される答えは、




「・・・う、うそ・・・ママまさか・・・」




「ふふふ、”あのヒト”に似て賢い子ねぇ・・・


えぇ、そう


あなたの父の名は・・・



『シルバーズ・レイリー』


かつて海賊王の右腕と呼ばれた・・・
   


大海賊よ」