知らない感情


美形攻め。無理矢理。


ディスクをセットし再生をクリックする。画面に映ったのは露出の高いセクシーな格好をしたおねいさんで、いわゆるアダルトビデオである。
今はネットでいくらでも見られる時代だが、うっかり変なリンク踏んだり請求メールが来たりしたら怖いので俺は未だにDVD派である。ちなみに未成年なのと店頭購入が恥ずかしいのでネット通販で兄貴のアカウントで勝手に購入した。
入学祝いに買ってもらったノートPCも学業で使う事はなく今ではAV再生機に成り下がっている。親には絶対に言えねぇ…!

イヤホンからは女優の責め立てる台詞が聞こえる。
ここがいいの?
こんなところを責められて悦ぶなんて
ヘンタイね。

「…っ」

音を拾いつつ熱を上げた俺はジャージと下着を下ろす。触れたのはかわゆい俺の息子…ではなく尻だ。

画面では女優が男優の尻穴に大人の玩具を挿入していた。ぐちゅぐちゅと卑猥な音と女優の声が交ざる。

「く、…ん、あっ」

痛い。あとキツい。やっぱりローションが必要だな。
手のひらに広げ尻に塗り込む。少しづつ中身を注ぐ様に指を挿れていく。
時間を掛けてなんとか中指一本を納めて、そのままゆっくり抜き挿しをする。画面を見て、女優の動きに合わせて、挿れて、抜いて、挿れる。

気持ちい…っ。けど、足りない。

指を引き抜くと俺は収納箱からある物を探す。
ローションやらDVDやらと一緒に収納されたそれを取り出すとごくりと唾液を呑み込んだ。
男性器を模したそれはDVDと一緒に通販で買った物で、自慰の時にたまに使う。

「…けど、ちゃんと入った事ないんだよな」

そんなに大きくないサイズではあるが、結局上手くできなくていつも先っちょを少し挿れるだけである。
小さく意気込みローションを垂らす。
尻の方にも塗り込んでゆっくり息を吐いた。

「あっ、きもち……んッ、はぁ」

指で慣らして直ぐだったからかいつもよりすんなり入る。でも半分もいかなくて、気持ちいいのと焦れったいので思考が埋まる。

「奥…、はいらな…あっ!」
「人の部屋で楽しそうに何やってんの?」
「ひゃっ!?」

自分の声でも女優の声でもない。ましてや男優の声でもない第三者の突然の声に一気に体温が下がる。
顔を上げると俺を気持ちわるそうに見下す視線とかち合う。
誰、こいつ。
金色に染められた髪は威圧感があり俺の苦手な不良の様だ。よく見ると顔立ちは整っていて美人顔だった。
初めて見る知らない顔だが多分俺はこいつを知っている。

「…西鹿 時臣(さいか ときおみ)、先輩…?」
「正解。なにお前、ストーカー?」

違います。



×××

俺の通う学校は全寮制の男子校だ。
寮は基本二人部屋で同室の相手は同じ学年の生徒になる。
俺の同室相手は学年こそ同じだが出席が足りないとかで留年したらしく一つ年上の男だった。
そいつは学校だけでなく寮にも現れなくて、同室になってから一度もその姿を見た事がない。
友人からは、そんな不良と同室なんてついてないよな、と言われたが俺にしてみれば実質一人部屋みたいなもんでラッキーと軽く考えていた。
まさか出会すとは思っていなかった。

「で、東くんは俺がいないと思って、俺の部屋でもあるのに一人でお尻弄って気持ち良くなってたんだ?」

にやにやと悪人ヅラで言われるも返事ができなくて俯く。
恥ずかしい!なんで急に帰ってくるんだよ!今までなんの音沙汰なしだったのに!来るなよ!一生どっか行ってろよ!
下着も身につけず下半身をべたべたにしながらベッドの上に正座する。なんとなく履くタイミングを逃してそのままだったが、いい加減恥ずかしくて死にそうなので着衣したい。ていうかここから消えたい。

先輩がちらっとPCの方を見る。
停止されず垂れ流したままの画面では四つん這いになる男優の後ろから女優が尻を叩いたり穴を責めたりしているシーンが流れている。

「こういうのが好きなんだ。変態」

先輩の低く冷たい声に背中がぞわっとした。
…あぁ。俺の高校生活が終わった。

「…あの、その。すみません」
「んん?別にいいんじゃない?続けていいよ」
「…は?」

なんて言ったこいつ。

「俺の部屋で知らないやつがオナってんのが気持ち悪くて話聞いただけだから。東くんの部屋でもあるんだから続きしていいよ。邪魔してごめんね?どうぞ」

はい、と先程まで俺に入ってたそれを手渡される。
馬鹿か。続けるわけねーだろ。
そりゃ、後ろでヤッちゃう変態だって自覚はあるけど、見られながらやる程までの変態ではねーよ。
受け取らずに無言でいると目の前の悪魔は何か思いついたように笑顔を浮かべた。

「あーでも奥まで入らないんだっけ?俺がやってあげようか」

正気かよ。

「あの、いらないです。やらないですし。片付けさせてください」
「遠慮しなくていーよ。自分じゃ届かなくてもやってもらうとイケるかもしれないし」
「聞けよ」

俺を無視して西鹿はよいしょー!と間の抜けた台詞を吐くと、俺をうつ伏せにひっくり返しその上に被さった。そのまま腰を起こされて四つん這いの完成だ。こいつ、手慣れてやがる!

「ご開帳ー」
「なッ!?」

尻肉を開かれ露わになったソコに玩具を当てられる。
快感なんてものはもちろん無く羞恥で頭が爆発しそうだ。
ぐぐ、と押し込まれるも先以上は入らず、諦めたのか飽きたのか尻から引っこ抜かれた。
助かった、のか?そのままどっか行ってくれ。
祈る気持ちで振り向くと西鹿の手にはローションが握られていた。

「もうちょっと慣らした方がいいかもね」

尻に冷たい感触がして身体が跳ねる。
追いローションをされ俺の桃尻はぬるぬるを通り越しドゥルンドゥルンだった。
揉み込むように手のひらで尻を撫でられる。時折ぺちぺちと叩かれローションがシーツに散った。
誰がシーツ洗うと思ってるんだよ。ていうか今夜どこで寝たらいいんだよ。

「うッ」

指が入って来て身体が強張る。
まじかよ。他人の、それも会って一時間も経たない男の尻ん中に指入れるとか。
二本、三本と増やされ、中を掻き回される。
自分でするのと違いどう動くのがわからないのが怖くて意識をそっちに持っていかれる。
集中しているからか他人にされているという羞恥心からか、身体がいつもより敏感に快楽を拾った。
抜き挿しのたびにくちゅくちゅと卑猥な音が響く。
抵抗したいのに身体の動きが思うようにいかなかった。
太腿にぴり、と痛みが走って振り向く。
痛んだところに西鹿の顔があって、噛まれたのだと理解した。

「何して…」
「んー、美味しそうだったから」

美味しそう、って。
若干引いてると突然の強い快感に高い声が上がった。
自分のものと思えない声に咄嗟に唇を噛む。
西鹿を見ると一瞬だけ驚いた顔をして、それから楽しげににやりと笑った。

「ここ、気持ちいいの?可愛い声が出たね。もう一回聞かせてよ」
「ひッ、あ、あっ、知らない…!」
「なんで?我慢しなくていいよ。ほら!」
「あ!あぅ…ッ!」

その一点を狙い執拗に責め立てられる。
喘ぎ声が抑えられなくて手で口を塞ごうとすると咎めるように尻を叩かれた。

俺は自慰の時に後ろを弄ってはいるがそこで達した事は一度もない。知識として前立腺で気持ちよくなれる事も知っているが自分で試した事はない。
指一本だけ、玩具先っちょだけでは少し勃つ程度で射精には至らない。少し入れて少し気持ちよくなって満足したら前を扱いてそれから果てる。俺の自慰はいつもこれ。
だから、こんな快楽は知らない。

「は、あッ、んあ!や、やだ!嫌だ!」
「やだ?嫌じゃないよね。東くん、腰振ってさァ。雌犬みたいで可愛いよ。ここもこんな勃たせて、気持ちよくないハズないよね?」
「っ!?」

突然前を触られて腰が震える。
視線をやれば俺のにそこは完全に勃ち上がってきた。
いつもはこんなならないのに。なんで。

「あーでも東くんはお尻で気持ちよくなりたいんだっけ?そっちは後で触ってあげるね」

それからも後ろをしつこく弄られて、やっと指が抜かれた。まだ達せてない焦ったさよりも解放された安堵の方が大きくてゆっくり息を吐こうとして、すぐに圧迫感がきて口から漏れたのは上擦った自分の声だった。

「東くん、わかる?全部入ったよ」
「あああ、あっ、ああー!」

深い、奥を擦られて目の前がちかちかした。
痛い。
気持ちいい。
怖い。
欲しい。
やめて。
もっと。
色んな感情がごちゃ混ぜになって、俺はただ馬鹿みたいに喘ぐしかできなかった。
気持ちいいところをぐりぐりと抉られ髪を振り乱す。
シーツに作るシミが汗なのか涙なのか唾液なのかわからなかった。多分全部だろうなぁ。滲んで焦点の合わない目でぼんやりと見つめた。

「あああーっ!!」

前立腺に走る強い刺激のあと、俺は達してしまった。
性器がびくびく震えて、精液を吐き出す。
シミだらけのシーツに白濁が散った。

ずるりと玩具を引き抜かれ、反動でシーツに倒れこむ。
なんとか息を整えようにも上手くできなくて、小さく喘ぐ。
涙と涎でべたついて気持ちが悪かった。

「…ねぇ、こんな玩具じゃ足りなくない?」
「…?どういう、」
「ホンモノ、欲しくない?」
「………は」

たった今空っぽになったそこに硬いものを当てられる。振り向かなくてもそれが何かわかって、息が詰まった。

「欲しくない、いらない…!」

否定の言葉も聞いてもらえず、肉を割ってそれが入って来る。
嫌だ。怖い。無理だ。なんで。いやだ、いやだ、いやだ!!

「だーめ!逃さない、よッ!」
「あぐぅ…?!」
「ッ…流石にキッツイね。東くん、力抜いて」

一気に貫かれ背中がしなる。
挿入の衝撃で口から息が漏れた気が来て必死に酸素を求めた。
玩具とは違う硬くて熱い塊が中を犯す。肌にぶつかるたびに抑えられない悲鳴が溢れた。
自分の喘ぎ声も、肌を打つ音も、卑猥な水音も閉ざしてしまいたくて枕に顔を埋める。
そんな抵抗は無駄だというように、意識すればするほど容赦無く耳を犯した。

「やだ!嫌だ!あッ、ぬい…ひっ、や!抜い、て…ッ」
「えー何で?東くんだって気持ちいクセに、ほら、ココ。俺のに絡みついて離さないじゃん」
「知らな…あぁッ!ぅ…ッ」

奥を突かれ二度目の精を放つ。
はふはふと呼吸を整えようとするが西鹿の動きは止まらなくて、あう、と情けなく声が出るだけだった。
西鹿の指が背中を這い回る。それがまるで気遣うような仕草で、恋人にするみたいだなんて馬鹿な事を考えた。

「東くーん、俺まだイッてないよ。ほーら。お尻上げて」
「あぅっ」

ぱしん、と尻を叩かれる。
それだけの事なのに達したばかりの性器がまた熱を持った。
なんで、俺の身体、こんなんじゃなかったのに。
後ろを責められたいという願望はあるが男に突っ込まれたいと思った事は一切ない。
年上の美人でSなお姉さんにそこを苛められたいという欲望がちょっぴりあるだけだ。
相手は男で、無理矢理するような最低なやつなのに。
嬉しくないのに。嫌悪感しかないのに。西鹿に突かれるたび自分じゃないみたいな甘い声が出てしまう。
悦んでるみたいで、もっとと強請ってるみたいで、自分がはしたなく感じて嫌だった。

「後ろでイッちゃうだけじゃなくお尻叩かれて悦んじゃうんだ。ほんッと雌犬みたいで可愛い」
「や…!おしり、叩かなッ、あん!」
「あー、ごめんね。前も触ってあげるって言ってたもんね」

それまで腰を掴んでた手が離れ、西鹿が覆い被さる。背中に触れた体温が、首にかかる吐息が熱くて溶けてしまいそうだ。
西鹿の手が俺の性器に触れる。既に二回イッたのに硬さを取り戻したそれを上下に扱かれる。
爪で鬼頭を強く押される。痛くて、でも身体が快楽を拾って、嫌だ、と頭を振る。
こっちも集中して、と西鹿が奥を貫く。
がつがつと突かれ耳元で押し殺した声が聞こえた。
白濁が中に注がれたのを感じて、西鹿もイッんだと思うと俺も西鹿の手のひらに吐き出した。



×××

目を覚ますと真っ先に尻の痛みに顔を歪めた。
腰も痛いし喉も痛い。最悪の目覚めだ。
隣には西鹿がすやすやと眠っている。初めて同室者と迎える朝がこれかよ。
悲鳴を上げる身体を叱咤し何とか起き上がる。ローションと精液塗れだった身体は綺麗に拭かれていた。…シーツは悲惨なままだが。
かっぴかぴのそれに手をあてる。
…これもう新しいの買った方がいいな。

「おはよう」
「……」
「先輩が挨拶してんだけどー。お、は、よ、う」
「…どけよ。西鹿」

腰に回った腕を解く。

「先輩に向かって呼び捨てー?」

何が先輩だ。あんた同学年だろう。呼び捨てで充分だ。ちくしょうめ。
もぞもぞとベットから這い出ると太腿にたらりと液体が溢れる。指で掬うと白いそれが絡みつく。精液だ。
…この野郎中に出したんだったな。

「一応身体は拭いたんだけど途中で寝ちゃってね。それ掻き出した方がいいね。お腹痛くなっちゃうから」

だったら中に出すなよ。
いやそもそも挿入するなよ。

「じゃあ行っか」
「はぁ?!何処に」
「シャワー。掻き出したげる」
「っ!?いらない!結構です!自分でできます!!」
「遠慮しなぁいの!ルームメイトでしょー?」

遠慮とかじゃないし!嫌がってるんだが!?
グイグイと引っ張られユニットバスに押し込められる。男二人で入るには狭くって、俺は浴槽に入れられた。

「はい、壁に手付いてお尻はこっちね」
「ッだからいらな…冷たっ!!」

冷水がお湯に変わって、尻に指が這う。精液で濡れたそこはすんなりと西鹿を受け入れた。
…もうどうにでもなれ。

「東くん、これからよろしくね」

漏れ出る息をやり過ごし、俺は何とか「嫌です」と返事をした。



終わり



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