欲膨


無理矢理。マゾヒスト受け。


あ、と思って鞄の中を探った。ノートや教科書をかぎ分け目当ての物を探すが入っていなかった。どうやら教室に忘れたらしい。
信号を渡れば駅は目の前だ。学校まで距離はそう無いが面倒という気持ちが大きい。ちなみに忘れ物は小説だ。続きが気になって持ち込んだのだが、妹からの借り物だし万が一汚したり無くしたりしたら後が怖い。怒られるだけならまだしも詫びと称して何を要求されるかわからない。
青になった信号に背を向け急ぎ足で学校に戻った。

教室まで戻ると扉が閉まっていた。隣のクラスは開けっ放しだった。授業中以外で閉まってるのって珍しい気がする。さして疑問に思わず取っ手に手をかける。途切れ途切れに高い声が聞こえ誰か残ってるのかなとぼんやりと考えた。
ガラッと音を立て扉を開けると声が止んだ。

「あっ」
「………え」

教室には二人残っていた。
片方は同じクラスの女の子ので、大人しく可愛らしいとか、清楚系だとか友人たちが話していたのを覚えてる。もう一人は見知らぬ男子生徒だった。多分同じ学年ではないだろう。大人びて見えるが先輩なのか後輩なのかは判断しかねた。
ベッドの様に並べた机に女の子が押し倒されていて、その上に男が覆い被さっている。服は乱れてて女の子の方はあられもない姿を晒していた。
聞こえた高い声は喘ぎ声だったらしい。つまり、性行為の真っ最中だった。

「………」

気まずい。
目をそらすタイミングを見失い女の子と視線があった。女の子は羞恥心を通り越して顔が真っ青だった。

「先輩、続けるよ」
「えっ、…あん!」

続けるのかよ。
男は俺なんかいないみたいに女の子に声をかけ腰を埋めた。動きに合わせ女の子が甲高く啼く。
居た堪れなくて早くここから逃げ出したかったがこのまま退くのも何となく嫌で、俺は自分の席に早足で向かった。席が二人が致してる場所から近かったが視界に入れないよう下を向く。しかし近くまで来てしまえば嫌でも目につくし、音や声が俺の耳を犯す。小説を鞄に突っ込んで早足で教室を出た。扉を閉めると俺は一目散に走り出した。下駄箱の前まで走ると息を整えた。

「鍵、閉めとけよ…。というか、教室でするなよ」

教室での光景が焼き付いて頭から離れない。
女の子を犯す男の荒々しさが。がたがたと机が煩く鳴る程の男の激しさが。女の子の肌に噛み付く牙が。ぎらつくような、射抜くような眼光が。まるでケダモノみたいで、肌がざわついた。

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