「はい、これ」
 ころんと机の上に転がったあめだまはふたつ。一つはイチゴ味でもう一つはりんご味だ。どっちも赤を基調とした包装紙に包まれている。
 わたしはそんなあめだまと、それを落下させた張本人、水希くんとを目線で行き来して、恐れ多くも首を傾げた。水希くん、ちょっと言葉が足りないと思うよなんて怖くて言えない。
「……えっと」
「あれ? アメ嫌い? いらないなら俺が食べるけど」
「ああっ! いりますいります!」
「……ふっ」
 また伸びてきた水希くんの手があめだまに届く前に慌ててそれを自分の手の中に隠すと、水希くんは薄く笑った。
 その笑い方は人を蔑むようなものじゃなくて、小さな子を相手にしている人が見せるようなものだった。
「絆創膏のお礼」
 子供扱いされたのが悔しいのやらくすぐったいのやら、顔を俯けてごまかしていると、水希くんがそう言ったのでそっと窺う。
「おかげで部活のときも苦労しなかった。さんきゅ」
「う、うん!」
 水希くんは控えめに笑うとそれじゃあとわたしに背を向けた。今彼の人差し指を覆う絆創膏は、多分家で貼り替えたものだろうなあ。つけたままプールに入ったと言うなら、わたしがあげた絆創膏の粘着力なんて皆無だろうし。少し残念かも、と思っている自分に気付いて、心内頬をはたいた。自分のあげた絆創膏をずっとつけててくれたらなんて、なんだか変態チックじゃん! それに不衛生! ごめんね水希くん……!
 水希くんが男子の友だちとなにやらじゃれ始めるまで目で追って、徐に手のひらを開く。水希くん甘いもの好きだもんなあ。お菓子作りもできるって聞くし。かわいい。
 ちょっとだけくしゃりとしてしまった赤色の包装紙のあめだまが確かに仲良く転がっていた。