三人は恋人いるの?



工藤新一。

帝丹高校2年B組、現在休学中。高校生探偵。日本警察の救世主と呼ばれている。毛利蘭は幼馴染。父は推理小説家の工藤優作、母は元女優の藤峰有希子。両親は現在ロサンゼルス在住。偶に事件を解決するが、世に名前が出ないようにしている。事件を追い海外在住だと言われているが、出国した記録は無い。


昨夜受け取った調査報告書に目を通し、すっかり冷えてしまった珈琲を飲み干す。マスコミが勝手に騒ぎ立てて、異名を付けたのだと分かっていても"日本警察の救世主"だなんて馬鹿げてる。


「出国記録が無いという事は、日本にいるって事よね」


日本に居るなら、何で登校しないのだろうか。少し前までは目立ちたがり屋だった彼が、ある日を境に表立つ事を避け始めた。彼自身が、何かの事件に巻き込まれているとしたら…?その事件が、例の組織関係だとすれば自分だけじゃなく、周りの人達に危害が及ぶ。其れを避ける為に……。


「や、それはないか」


今浮かんだ仮定は、取り敢えず頭の隅にでも置いておこう。今は、対象者である世良真純の事だ。ホテル住まいで転々としていて、兄が二人居るという事は分かった。


「もうこんな時間!?やば!」


現在の時刻を確認すると、7時過ぎている。慌てて資料を金庫に保管し、ダイヤルを回し、壁を移動させる。ゆっくりしている場合じゃない、急いで支度しなければ。

用意していた服に着替え、愛車に乗り込むと降谷からの着信が鳴る。


「なーに?」
『そっちはどうだ』
「どうって、まだ何とも」
『モテモテだそうだな』
「誰が」
『藍が』
「何、急に」
『蘭さんが教えてくれた』
「高校生相手に何言ってんの」
『関係無い』
「大丈夫よ。私には、高校生じゃ到底敵わないイケメンな彼氏がいるって、園子ちゃんが言ってくれてるから」
『……』
「もしかして、照れてる?」
『今日、ポアロで待ってる』


返事をする前に電話は切られる。はあ、とため息を吐き帝丹高校の駐車場に車を停める。校舎に向かって歩くとおはようございますと爽やかな声があちこちから聞こえてきて、降谷に対しての苛つきが消えていく。

特に大きな問題が起こる事も無く、気が付けば放課後になっていて、外は綺麗な夕陽が照っている。


「あ、鈴木さん!今日って、この後用事あったりする?」
「今日は特に無いわね」
「どうしたんだい?先生」
「私に付き合ってくれない?」
「もしかして…ポアロですか?」
「ちょっと、彼と気まずくて。ダメかな?」
「もっちろん!OKよ!」


ウインク付きで了承してくれる姿に、ホッとする。電話では普通に話せていても、面と向かってはどう接すれば良いか分からない。駐車場に停めてある車に乗り、喫茶ポアロまでの短いドライブが始まる。


「安室さんと喧嘩でもしちゃった?」
「喧嘩ではないんだけど…ちょっとね」
「あ!もしかして、私が余計な事言っちゃったからですか?!」
「蘭くん、その安室さんって人に何か言ったのかい?」
「男子生徒に凄いモテモテって」
「あちゃー。蘭、完全にそれが原因ね」
「やっぱり?」
「ボクはそれだけじゃないと思うけどなー」
「安室さん。ああ見えて意外と嫉妬深いのね…」


世良さんの鋭い眼に流石だと感心する。女子高校生探偵という名は伊達じゃないみたいだ。尽きる事のない話題に短いドライブはあっという間に感じ、ポアロに程近い駐車場に車を停める。降谷は奥で何かやっているようで、中に入ると梓さんが居て、一番奥の席に案内してくれる。


「三人は恋人いるの?」
「蘭くんは、工藤くんだよな」
「そーそ!旦那よね」
「もう!新一とはそんなんじゃないってば!」
「蘭ちゃん顔真っ赤」
「そ、園子だって京極さんがいるじゃない!」
「杯戸高校空手部主将だったよな」
「今はアメリカだけどね」
「留学してるのかー」
「で?世良ちゃんはどうなのよ」
「ボクはいないよ。今はそういうのより、気になる事があるからね」
「気になる事?」
「最近会ってない兄の事さ」


ほんの一瞬だが、降谷が聞き耳を立てているであろう奥に目線をやり、二人の兄について話し出した。長男は既に亡くなっていて、次男はとても頭がキレるそうだ。長男とは似ているが次男とは似ていない。まるで子供のようにキラキラした顔で話す彼女が可愛らしく、思わず頬が緩んでしまう。