珈琲なら、自分が
目が覚めて、見えたのはとても綺麗とは言えないデスク。仮眠室ではなくソファで寝てしまったらしい。もう少しだけ寝ようと、横を向いていた頭を上にすると降谷の寝顔。
「は!?」
どういう状況。何で上に降谷…ん?降谷が上に?え、ちょっと待って、もしかして私、降谷の膝枕で寝てた?
「ん、起きたか」
「なんか、ごめん」
「気にするな」
「全然覚えてないんだけど、何で私降谷の膝枕で寝てたの?」
「報告書見ながら話してて、倒れてきた」
「嘘?!ごめん。降谷の方が眠いだろうに」
「俺も寝てたから。それに、良いもの見れたし」
「良いものって?」
「さあな」
起き上がると降谷の上着が掛けられていて、重ね重ね申し訳ない気持ちでいっぱいになる。眠そうな降谷に上着を渡す。あの体勢じゃ疲れも取れないだろう。
「もう少し、寝て。って、疲れさせた私が言う事じゃないんだけど」
「膝枕」
「しないから!」
「俺はしたのに?」
「…う、」
「してくれないの?」
「……分かった」
自分の椅子に掛けてあるブラウンケットを持ってきて、私の膝で眠ろうとする降谷に掛ける。思っていたよりもサラサラな髪で、気付いたら撫でていた。擽ったそうにしていた降谷だったがあっという間に眠ってしまった。
「おやすみ」
いつの間にか私も眠っていたらしく、部下達が登庁してくるまで私達はぐっすり寝ていた。
「ん、」
「仮眠室で寝なかったんですか」
「風見おはよ」
「お早う御座います。降谷さん、はまだ寝てるようですね」
「寝かせてあげて」
「珍しいですね。降谷さんがぐっすりと眠られてるなんて」
「それだけ疲れてるんだよ」
降谷が起きないように小声で話す。確かに、風見が言うように降谷がぐっすり眠っているのは珍しい。こんなに寝ているのは久しぶりに見た気がする。
「悪い、寝すぎた」
「足りないくらいだよ」
「気持ち良すぎて、つい」
「その発言アウトだからね」
「事実だから大丈夫だ」
「全然大丈夫じゃないから」
「ま、お陰で良く寝れたよ。有り難う」
ヒラヒラ、と手を振り自分のデスクに戻り仕事を始める降谷。私も仕事しよう。昨日そのままにしていた資料を持ち、デスクに運ぶ。珈琲が飲みたくなり、財布を持つ。そして、欠伸をしていた降谷に聞く。
「珈琲買ってくるけど、降谷もいる?」
「いる」
「ブラック?」
「ん。あ、やっぱ俺も行く」
「一人で平気。降谷は休んでて」
「行く」
「風見、降谷宜しく」
「あ、いや。珈琲なら、自分が」
「私が行く」
思った通り、やはり何かを隠しているみたいだ。一度、仮眠室に入り顔を洗って軽く化粧をし珈琲を買いに外に出る。直ぐ近くの行きつけの店に向け歩き始め、信号待ちしていた時、誰かに後ろから押され前へ倒れ込む。クラクションを鳴らしトラックが急ブレーキを掛けているのが見えたが、体が動かない。ギュッと目を瞑ると、誰かの腕が腰に回り、強い力で引き寄せられた。
「…だから、一緒に行くって言ったんだ」
「ふ、るや?」
「間に合って良かった」
そう言って私を抱きしめる降谷は、少しだけ震えていた。きっと、彼らの事が過ったのだろう。震える降谷の背中にそっと手を回し、抱きしめる。私は無事よ、有り難うと伝えると、返事をする代わりなのかぎゅっと強く抱きしめられた。