お世辞じゃないからな
連れて来られたのは、煌びやかなドレスが並ぶ店だった。店に入るなり店員に何か話し、私は試着室へ案内され、用意されたドレスを着るよう言われる。
「まあ!すっごくお似合いです!」
「…はあ」
「うん、似合ってる。すみませんが、このまま着ていきます」
「畏まりました」
「ちょっと、どういう事?」
「俺からのプレゼント」
「いや、いいよ」
「俺が贈りたいんだ。受け取ってくれ」
「…高価過ぎじゃない?」
「そんな事無い。さ、行こうか」
降谷にエスコートされ、再び車に乗り、パーティー会場へ向かう。ヒールなんて久しぶりに履いたな。
「お世辞じゃないからな」
「何が?」
「ドレス。本当に似合ってる」
「何、突然」
「俺好みだ」
「……今日の降谷、変」
「こういう時は降谷じゃなくて、零だろ?」
「頭打った?」
「打ってない」
今日の降谷は本当に変だ。急に、何の前触れも無く、甘い雰囲気を醸し出す。零という下の名前にも拘るようになったし、一体どうしたのだろうか。
「着いたぞ」
「うわ、気が引けるわ」
「あ!安室さん!」
「蘭さん」
「うわぁ!藍さん綺麗!」
「ありがとう、蘭ちゃん」
「正に美男美女よね!」
「藍さん、本当にお綺麗です!安室の恋人だなんて勿体ないくらいだ!」
「逆ですよ、毛利さん。私に透は勿体ないんです」
「…安室さん。顔、赤くない?」
「そんな事ないよ、コナンくん」
顔が赤いという言葉に降谷の方を向いたが、手で覆われて見えず。私の視線を感じたのか、後ろを向いてしまった。
「こーんな可愛い人、何処で見つけたんですか?」
「大学の同級生なんですよ、僕と彼女」
「えー!じゃあ、もしかして安室さんその頃からずっと好きだったんですか!?」
「ええ。何度もアピールしてたんですが、全然気付いてくれなくて、苦労しました」
「じゃあ、安室さん達はいつから恋人同士になったの?」
「最近ですよ。偶然、彼女と再会して」
女子高生二人に混ざってガールズトークしてる三十路近い男。多少違ってはいるが、話しを聞いて降谷との出会いや再会した時の事を思い出す。
「離れた二人が再会…正に、運命の出会いね!」
「園子…」
「僕も、運命だと思いましたよ。まあ、彼女は相変わらず鈍くて苦労しましたが」
「透。もうその辺でいいでしょ」
これ以上放っておくと何を言い出すか分からないので降谷の話を遮り、ドリンクを取りに行く。並べられた料理は口に出来ないが、目の前で注がれる飲み物なら大丈夫だからだ。
「藍っ!」
「なーに?」
「俺から離れるな」
「心配し過ぎ。はい、烏龍茶」
「…お願いだから、離れないでくれ」
「はいはい」
急に降谷が焦り、走り出したからなのかコナンくんも追いかけてきたようだ。今は降谷じゃなく"安室透"じゃないのか、降谷くんよ。
「ねえ、安室さん。藍お姉さんって、誰かに狙われてるの?」
「あ、否…」
「少し前にね、誰かに付けられていたんだけど、犯人は捕まって解決したのに心配性過ぎて困ってるの」
「本当に、それだけ?もっと他に理由があるんじゃないの?」
「無いよ。本当に心配してるだけさ。さ、戻ろう。蘭さん達が心配します」
降谷のその言葉に、私達は皆の元へ戻った。既に毛利さんはお酒に酔っているようで、ヘラヘラしていた。