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「すぐに向かうから先に行っててって言われたけどさ……」
行きたくないんだよおお。そう、今日は初任務だ
ただでさえ、行きたくない任務。なまえちゃんと一緒だから頑張れると思ったのに屋敷を出る前に言われた言葉は『先に行ってて』だ。
なまえちゃんは優しい音がする。ただその音はどこか弱くて触れたら壊れてしまいそうだった
誰にも見せていない弱い部分があるのは分かっているのに踏み込めない自分がいた
はぁ……と溜め息をついて歩いていれば目の前に道端で蹲る女性がいた
心配になり、声をかければ「気分が悪い」だそう。
こんなものじゃ良くならないのは分かっているけど背中を優しくさすっていれば「大分ましになった」と。
ありがとう。あなた優しいのねと笑顔で伝えてくれた
こ、これは……!
「ねえ!君、今ときめいたよね!?これはもう好きってことでしょ?!ねえ!俺と結婚して!頼むよおお!俺はもうすぐしんでしまうんだ!その前に結婚がしたいんだよお!俺には君しかいないんだあ」
彼はこちらに気付いていないのだろうか
女性に必死にしがみつき結婚を懇願し、涙を流している姿は本当に情けなく見える。
そして、時々悲しくなる、モヤモヤするこの感情は何なんだ
相手も困ってるのが分からないのか。彼は「俺と結婚してくれよ」とばかり伝えている
私はどう止めに入ればいいかも分からずその状況を眺めていれば横を通り過ぎる赤髪の男の子
あれ、あの子って……たしか
「何やってるんだ!この子が困っているのが分からないのか?!」
善逸の首根っこを掴み、女の子から引き剥がす
「え、だってありがとうって言ってくれたから……」
「私は気分が悪かったから助けてくれてありがとう!と言っただけです!それに私には大切な婚約者がいます!」
とまくし立てるように言えば、怒った様子でこの場を去った
本当に彼は見境なく声をかける。
結婚してくれるのなら誰でもいいのか?
そんな疑問すら抱いてしまう
「あ!!!なまえちゃんんんん!俺、1人で寂しかったんだよおお!何してたの?!ここまで頑張って来たんだから褒めてよお!」
私に気付いた彼は次は私にしがみつき泣き始めた
「知り合いだったのか」
と話す赤髪の男の子に苦笑いで「まぁ……一応」と濁せば、彼は「一応ってなんだよお!」といじけている
「俺の名前は竈門炭治郎。君は……確か最終選別にいた……」
『みょうじ なまえです。よろしくね』
ニコリと微笑み握手を交わせば「え、俺は?俺のこと無視?」と言った表情の彼が下に見える
「ねえ!俺も最終選別にいたからね?!?!」
「おれの知人にこんな情けない奴はいない!」
「我妻 善逸だよお!!その言葉ひどくない?!これで結婚出来なかったらお前のせいだからな!」
なんか言えよ!!とかける言葉もないのか哀れみの目で見つめる炭治郎に半ギレ状態だった
「炭治郎ぉ、頼むよぉ。俺を守ってくれ。俺はすごく弱いんだあ」
そんな善逸に何で剣士になったんだ?何でそんな恥を晒す?とストレートに聞くもんだから彼は「そんな言い方しないでよ!」とまたもや涙を流しながらも自分の過去を話していた
その後3人で並び歩き始めれば、善逸は落ち着いたらお腹が減ったと言い出し、こちらに目を向けてきた
『な、なに』
「なまえちゃんご飯か何か持ってないのお」
『あーもう、これあげるから泣かないで』
またグズグズと言い出す彼は本当に子供のようである
私は持っていたおにぎりを1つ差し出せば満面の笑みで食べ始めた
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