15
鬼を倒し、身体の痺れが取れたことを確認し、善逸達を探し始めた。
先程の鼓の音はもう聞こえなくなっていた。
少し歩けば入口が見え、飛び出せば目に飛び込んできた光景は衝撃的なものだった

箱を守る善逸と刀を手に持ち、猪頭を被った少年
その刀は今にも善逸に振り落とされそうになっていた

「それをこっちに寄越せ!」

「嫌だ!これは絶対に渡さない!」

その言葉に腹を立てた少年は善逸へと刀を振り落とした
その刀は首ギリギリの所で止まっており、少し動かせば刃が当たろうとしていた

「お前その箱の中に鬼が入ってるって分かってんのか?!」

『っ!?』

「そんなこと始めから分かってるよ!!」

猪を被った少年の言葉は衝撃的なものだった
そしてその事実も善逸は知っていた
以前、聞いたことがある。鬼と人間は音が全く違うと。
それでも彼は炭治郎を信じているのかその箱を守り続けていた。
もちろん私も炭治郎が意味もなく鬼を連れて居るとは思えない。

だから…

「お前がそういうのなら力づくでもお前から奪う!」

少年はそう言い、足を振り上げ今にもそれは善逸の顔へと落とそうとした
言葉より身体が先に動いていた
彼を庇うように間に入ればその足は私の背中へと思い切り落とされた

『げほっ……!』

「なまえちゃん?!」

むせながらも彼に目を向ければ無事は確認できた
彼は私の急な登場に驚いている

「な、なんだ!お前は!そこをどけ!」

『嫌よ!退かない!!!』

「お前も殺されてぇのか?女だからと容赦しねえぞ?」

刀を両手に持ち、こちらに威嚇をしてくる猪の頭を被った少年
負けじとこちらも睨み返すが相手は一切怯まない
すると急に後ろから腕を引っ張られた

『ぜ、善逸くん……?』

「なまえちゃんはこの箱を見てて?」
その言葉に頷きだけ返せば、彼は前を向いた
表情はいつもの泣き虫な彼ではなく怒りに満ちていた

「俺の大切な人をよくも蹴ってくれたな?お前がその気なら俺も手は抜かない」

そう言い、善逸も刀に手をかけた
これはまずい……と思い、声をかけようとすれば、
「お前らやめろ!何してるんだよ!」と炭治郎の声が聞こえた
本人の登場に安心したのか善逸はへなりとその場に座り込んだ

「炭治郎が大切って言ってたこの箱、善逸くんが一生懸命守ってくれてたんだよ」

そう伝えれば炭治郎の目には涙が溜まっている
横では猪頭の少年がまた箱を狙い、刀を振り落とそうとしていた

「なまえちゃん……!」
善逸が私を呼ぶ声が聞こえたが、突然の事で避けきれず来るであろうと痛みに目を瞑ったがその痛みは一向に来ない

「いい加減にしろ!!!!」

炭治郎は猪頭の彼に思い切り頭突きをかましたのだ
突然の頭突きに猪頭の彼は脳震盪を起こし、その場に倒れ込んだ

「なまえちゃん!!!大丈夫だった?!怪我はしてない?!ごめんね、俺のせいで……どこも痛くない?!え!!!血出てるよ!もしかして今蹴られたから?!?!」

矢継ぎ早に話す彼を見て『いつもの善逸くんだ』と思った

『今のは私が勝手にしたことだから善逸くんは悪くないよ。私より善逸くんの方が酷い怪我だし……』

そう、彼の顔には私が来る前に蹴られたであろう傷がたくさんできていた

「でも本当に酷い怪我だ。中で何があったんだ?」

炭治郎の言葉に、あー……と言葉を濁し、実は中で闘うのに苦戦しちゃって……と言った

「なまえちゃん!すぐ手当てしなきゃ!!!どこのどいつだよ!なまえちゃんの綺麗な顔に傷つけた奴は!!俺、許さないからな!!!」

自分の持っていた手ぬぐいを腕に巻き付け簡単な処置をしてくれた

『せっかくの綺麗な手ぬぐいだったのにごめんね……』

「いいんだよ!なまえちゃんのためだから!」

そう、彼が私に巻いてくれた手ぬぐいはきっと安物ではない綺麗な黄色の手ぬぐいだったのだ。
それでも彼は「気にしないで!」と私の心配をし続けていた
4/10
prev  next