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部屋を静寂が包んだ
布団に身体を預けていれば昼に倒した鬼の言葉が頭を過ぎる
『稀血は狙われやすいか…… 』
私1人ならどうにかできたとしても誰かを巻き込むのは嫌であった
きっと話せばみんな必死に私を守ってくれるのは分かっていた
それでも出来ないのは自分の心が弱いからだ
みんな大切な人なのだ
ぼんやりと考えていれば3人のいる隣の部屋からけたたましい声が聞こえてきた
こんな夜中に何なんだと襖を開ければ目に飛び込んできたのはピンクの着物を纏った竹を咥えた黒髪ロングヘアの女の子とそれを追いかける善逸、そしてそれから守ろうとする炭治郎だ
心がスっと冷めた気がした
人の心はこんなすぐに冷たくなるのだなあと思った
『ねえ、善逸くんは何してるの?』
「へっ!?あの、あのこれは……」
『この女ったらし!ド変態!』
冷や汗を流す彼に罵る言葉を投げかければ「まだ何もしてないよ!!」と言い、半泣き状態である
まだって何なんだ。まだって……怒りを物にぶつけるのは良くないのは分かっているがそうせずにはいられず、後ろ手に襖をピシャリと閉めれば嵐が去ったかのように3人のいる部屋は静まった
きっと彼にとって自分はただの友達なんだろう
そう思うと悲しくなった
この思いに気付きたくないのに胸が痛いと叫んでいる
そんな感情の中、襖が少し開けられこちらを覗いてきたのは私を悩ませている張本人である善逸だ
「あ、あのさ、少しだけお話しない?」
そう言いながらこちらの返事も聞かずにのそりと部屋に入ってきた
『私、入っていいなんて行ってないから出てって。じゃないともう2度と話さないから』
「なまえちゃん何でそんな悲しい音がしてるの?」
私の話は聞いてる?と言いたくなる。
それに今、音を聞くのはずるい。彼からすれば常にそうだから仕方ないのかもしれないが今だけは彼のその能力が疎ましく思う。
「ねぇ、こっち向いて」
『いや』
「少しでいいから」
『嫌なもんは嫌なの』
「言うこと聞いてくれないのなら無理矢理こっち向かせるよ?」
そんなことしないの知ってる。の言葉は続かなかった
目の前には彼の顔、その後ろには天井が広がっていた
部屋に差し込む月の光に照らされる彼の顔にドキリと胸が高鳴った
『離して!』
「悲しい思いさせてごめんね」
『……何で善逸くんが謝るの』
「音で俺の事拒絶してるの分かってるから俺が原因かなって思って」
『音聞くのはズルいよ……』
俯き、そう伝えても彼は「そう言われても聞こえちゃうからなあ」と話した。
「ねえ、なまえちゃん」
いつもと違う少し低めの声で彼は名前を呼んだ
『な、何?』
「俺にとって本当に大切な人はなまえちゃんだけだからね」
突然耳元でそんなこと囁かれるもんだから体温は一気に上昇した。
心臓がバクバク言って鳴り止まない
それだけ言えば、手を離してくれ、何故か隣に潜り込んできた
『な!!!自分の布団に戻ってよ!』
「えー。いいじゃん。何もしないから」
『なっ……!!!』
当たり前でしょう?!
口をパクパクさせ赤面していれば
「あ、でも他の人とこんなことしたら怒るからね?」とだけ言えばおやすみ。と伝えられ彼は眠り始めた
何なんだ。何なんだ!こんなのずるい……
私の気持ちを知っているかのように彼は話してくる
こんなの好きになれずにいられるわけがない……
高鳴る胸を抑え、横で幸せそうに眠る彼の頭を優しく撫で、眠りにつくのであった
目が覚めてこの状況に絶叫するのは数時間後の話
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