19
『はぁ……』
縁側で昨日のことを思い出す度に溜め息がでる。
抱きしめられていたことに怒っているのではない。
それを本人が気付いておらず、抱きしめていたことと勘違いしているのだ
そう、朝目が覚めれば目の前に見えたのは彼の胸板
寝ている時に気崩れたのか鍛えた胸板がありありと見えており、ドキドキと高鳴る胸を抑えることが出来るわけが無い。
抜け出そうにもがっちりと抱きしめられており、それも叶わず。
何もしないって言ってたのに……そう思いながらもこの状況が少し嬉しいと思う自分もいた。
ちらりと上を見れば私の好きな色が見えた
光に反射してキラキラ輝く金色、毛先が少し琥珀色のような色をしている。
じっと顔を見ればやっぱり黙っていればモテるのにって思う。彼の顔は整っている。闘っている時、鍛錬している時の真剣な顔はとてもかっこいいのだ。
見境なく女性を口説いたり、鬼を目の前にして泣くのをやめれば……。
ずっと見つめていたせいか何故かは分からないが彼は「んん……」と言い、身を捩った。そして口から出た言葉に私は固まった
「ねずこちゃ〜ん……んふふ、うへへ」
彼は寝惚けながらそう言った
私はその言葉に怒りと悲しみに心が埋め尽くされ、気付いた時には彼の頬を叩いた。
乾いた音と彼の叫びが部屋に響く。
目を覚ました彼は
「何もしない」って言ってたのにごめんね!!!!
怒ってるよね?!だなんて見当違いなことを言ってくるのだ
もちろんその事も少し腹が立ったがそれを上回る事が起きたため、どうでも良くなった。
そして、朝の出来事に戻るのである。
今思い出すだけでも悲しくなるし、腹が立つ。
あの人は私の気持ちを知ってそうしているのなら本当にタチが悪い。多分気付いてないのだろうけど。
私だってまだ認めていない。断じて認めていない。
はぁ……と2度目の溜め息をつけば横に人の気配。
目を向ければそこにいたのは伊之助だ
目が合っているのか合っていないのかは被り物のせいでわからないが多分合っていると思う。
私は目を逸らした
もちろんそれに対して彼は「おい!無視かよ!」と腹を立てている。
もう一度彼を見てやっぱり目を逸らした。
「何だよ!そんなに俺の事嫌いか?!」
『うん、嫌い』
きっぱりとそう言えば、更に腹を立てだした
だって仲間にあんなことしてるのだからそう簡単に許せるわけが無い。
「…悪かったよ、」
『え、』
ボソリと聞こえた声に再び目を向けた時にはいつの間にか被り物は無くなっていた
「だーかーら!お前らにあんなことして悪かったって言ってんだよ!聞こえねえのか?!」
顔を真っ赤にし、謝っている姿は申し訳ないけど少し面白かった
『もういいよ』
くすりと笑みを浮かべ、そう返せば何故か顔を更に真っ赤にし、目を逸らされた
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