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「よか、った……無事だったんだね、」
『 な、んで……私の為に……』
「俺の話……聞い、てくれる……?」
力なく微笑む彼の言葉に頷けば言葉を続けた
「俺ね、夢を見るんだ、誰よりも強くなって弱い人や大切な人をこの手で守る夢。じいちゃんが俺にかけてくれた時間は無駄じゃなかったんだ……って……じいちゃんに恩返しがやっとできたってさ、その大切な人の中にはさ、炭治郎や伊之助とかさ、禰豆子ちゃんもみんないるんだ。」
だけどね、と言葉を続け一呼吸置いて再び口を開く
「その中心には、俺の中にはさ、ずっとなまえちゃんがいるんだ、強くなった俺の傍でなまえちゃんが笑ってくれてるの」
その言葉に私は涙が溢れた
『私なんか……』
「もう、すぐそうやって自分を悪く言うでしょう……?俺にとってなまえちゃんは本当に大切な人なんだ、俺を救ってくれた大事な人……」
意味が分からない私はただ彼を見つめていれば震える手に力を込め、私の手に触れてきた
「前にさ、街に出かけた時のこと覚えてない……?」
街に……?
私はその時の記憶を必死に呼び起こし、1つのことに辿り着いた。
そうそれは彼の昔の恋人のことである
―――――
あの時、私と彼は久しぶりの鍛錬が休みの日で以前約束していた2回目のお出かけに下町に来ていた
「なまえちゃん!これ絶対に似合うと思うんだあ!」
破顔した表情で私に髪飾りを見せてくれる彼
『善逸くんも欲しいものあったら見てもいいんだよ?』
「それは嬉しいけどなまえちゃんとのこの時間が幸せだからいいんだあ」
幸せそうな表情で話す彼は嘘をついてる様子でもなく本気でそう言ってくるものだから流石に照れてしまう
そんな時間を過ごしていれば私はとある店がふと目に入った。彼に声をかければ「見て来ていいよ」と言うので早速中に入ればたくさんの小物が置いてある
私はその中でも一際目を引くものがあり、それを手に取れば彼が見てない間に会計へと向かった
事が済み、外に出れば彼と見たことの無い男女2人が向き合うように立っていた
すると聞こえてきた言葉に驚きを隠せなかった
「こいつがお前の言うてた男か?本当弱そうな奴だな」
「そうなの、すぐ泣くし、結婚しか頭にないのよ。それにね、耳が良いからって私の考えてること全部見透かしてるみたいなのよ」
「何だそれ。きもちわりぃ……」
そんなのだからいつまでも1人なんじゃねぇの?
そう言い、笑う2人に私は怒りを必死に抑えながらも彼へと声をかけた
彼の顔は驚きと悲しみが混じり、苦しそうな表情をしている
「なまえちゃん……早かったね、欲しいものは買えた?」
『うん、ごめんね、待たせちゃって……』
この人たちは?その言葉は続かなかった
今にも泣きそうな彼に目の前に立つ2人は言葉をつづける
「あ、もしかしてあなたもこの人に貢いでもらってるの?」
『どういうことですか……?』
私はその言葉の意味が分からなかった。
貢いでもらってる?どういうこと?目の前の女性は何を話しているのだ
「えー、だってこの人弱いし、すぐ泣くでしょ?それに全部見透かしてくるとか気持ち悪いじゃない」
だから貰うものだけ貰って逃げた方がいいわよ。
と言い、再び笑う2人はきっと彼が前に話していた借金を作らされ逃げられた彼らのことだろう。
『善逸くんは弱くないです』
「え……」
私の声に2人は口を閉ざした
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