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 イェーガーの力は圧倒的すぎた。ディーノさんや六道くん、雲雀くんまでもが彼に殺られそうになるその瞬間、誰もが待ち望んでいた綱吉が現れた。綱吉は倒れ込んでいるザンザスさん達を確認すると炎を増幅させた。

「くっ、よくも……イェーガー!」

 一瞬でイェーガーの目の前まで飛ぶと、綱吉は凄まじい攻撃を放った。先程の雲雀くんのVGでの攻撃同様、イェーガーは何故か瞬間移動を使わなかった。

「やれやれこうもネズミ達が次々と噛み付いてくるとはね、ほんの少しだけ感心したよ」

 遠くから宙を浮いて飛んできたバミューダがイェーガーの肩に乗ると、綱吉は何かに気付いた様子で声を上げる。
 再び瞬間移動をしたイェーガーを止めるように古里くんは大地の炎を使うが、周りにいたクローム髑髏やフランを巻き込んで三人はイェーガーに刺されてしまう。

「ぐあっ」

「ツナ!何か知ってんのか?!」

「復讐者達はバミューダに与えられた炎エネルギーを蓄えて戦っているんだ!!バミューダが頻繁にイェーガーの肩に乗るのは炎エネルギーを補給する為だ!!」

 その言葉に戦場に戦慄が走る。つまりアルコバレーノが復讐者になるということはあくまでバミューダに生かされているだけということになる。そしてその事実を知った尾道はバミューダが再び肩に乗る事を禁じた。

「了解した」

「もう充分エネルギーを補給したよ」

 言葉とは裏腹に彼の行動は直線的になり、再び背後へと回った。それを阻止しようと雲雀くんと六道くんは彼の前に立ちはだかるが、イェーガーは彼等二人の肩に指先を刺した。二人からは吹き出す様に血が溢れた。

「ああ!」

「今までの戦闘から推測するに全身のショートワープは二度が限界。逃がすものか!我々ごと固めてしまおう」

 二人の肩口からじわじわと氷が登り詰めていく。

「今だ咬み殺せ、小動物」

 古里くんからシモンリングも受け取ると、綱吉はイェーガーに向かい、超収束X BURNERを放った。

「ぐぅあっ……」

「この程度で死ぬ相手ではない、さあイェーガーにとどめを!」

 だが綱吉の前にバミューダが立ち塞がると、彼は「プレゼントプリーズ!」と叫び、呪解を解くと、目視出来ぬ程の速さでザンザスさん達の時計を破壊した。彼は未だ起き上がる事は無い。わたしは今すぐにでも駆け出したかった。

「僕はショートワープを無限に出来る。弱点は無い。さあ処刑タイムだ、沢田綱吉君」

 その言葉の後すぐにバミューダは綱吉の背後へと瞬間移動をしていた。だが綱吉の持つ超直感により、多少の動きは読めるようだが、それでもバミューダの動きの方が僅かに早い。彼に蹴り飛ばされ、とどめを刺されそうになったその瞬間、銃声が鳴ったかと思うとボルサリーノを被ったスーツの男が現れた。あれは恐らくリボーンだ。彼が呪解した姿はこんな姿なのか。だが綱吉は彼がリボーンだと分かっていないらしい。

「また……あなたは一体?!」

「オレはリボーンの旧友だ。チェッカーフェイスに無理言ってチームに入れてもらった」

 事情は良く分からないが、リボーンは綱吉に存在をバラしたくないらしい。ヴェルデさんの隣にはリボーンの人形まで置いてあった。

「フフっ、面白いな。僕も君をリボーン君の友達ってことにしてあげるよ」

「恩に着るぞバミューダ」

「いいさ、君にはすぐに消えてもらうから」

「やってみろ」

 バミューダは先程同様、目視出来ない程の素早さで瞬間移動を繰り返し、リボーンに攻撃を仕掛けるが、彼は全ての動きを読んで避けている。彼が戦っている所を見た事が無かったが、これ程とは思わなかった。彼が天才だと呼ばれる理由が良く分かる。
 そして彼がこの戦闘で初めて銃を構えたかと思うと、銃弾はバミューダを越え、綱吉の額へと当たった。あれはただの銃弾ではない、死ぬ気弾だ。
 綱吉はリボーンからの死ぬ気弾を受け、地面へと倒れた。

「フッ、今のは死ぬ気弾。だとすれば生きている」

 起き上がる前に瞬間移動をしたバミューダは綱吉に向かって指先を突き刺そうとしたが、彼の体の中から手が生えてきたかと思うとその攻撃を止めた。

「体の中から手が?!」

 瞬間移動でバミューダが間合いを取ると。綱吉は自分の殻を破って起き上がった。

「リ・ボーン!!死ぬ気でお前を倒す!!」

 だが綱吉は全ての武器を外した。彼は何をするつもりなのだろうか。

「そうだツナ。ここからの死ぬ気に武器なんていらねえ。お前は幾多の困難を死ぬ気で何度も潜り抜け知っはずだ。死ぬ気とは迷わないこと、悔いないこと。そして自分を信じること」

 わたしはリボーンのその言葉に目を見開いた。迷わないこと、悔いないこと、自分を信じること。それは自分が目指すべき所なのではないか。ザンザスさんの傍に居たいという理由から、彼を守りたいという目的を見つけ、強くなろうとしている。そして彼への恋心に気付いた。わたしの気持ちを依存だと言う人もいるだろう。確かに、わたしを変えてくれたザンザスさんの傍に居たいという最初の理由は、もしかしたら依存だったのかも知れない。でも今は違う。わたしを変えてくれた彼を今度はわたしが守りたい。
 未だ彼は倒れたまま動かない。だけどわたしは彼が死なないと信じている。綱吉は必ずバミューダを倒すだろう。ならばわたしは少しでも早く彼の傍に。
 綱吉は全身から炎を灯した。あれはわたしが未来で起きたのと同じ様な現象であった。

「あの境地は……死ぬ気の到達点!」

「今のオレはお前が第八の属性の炎を創った時と同じ境地だ」

 一点の曇りもなく純粋な死ぬ気が全身を支配すると死ぬ気の到達点に辿り着くらしい。あの時のわたしも死ぬ気を覚悟したからこそ全身から炎を灯したのだろうか。

「すまない、どうやら違った様だ」

「なに?」

「オレの死ぬ気は絶望からじゃない。希望から生まれる」

「ふざけたことを!」

 バミューダが綱吉に連続攻撃を仕掛けるが、綱吉はそれを全て躱した。

「仕方あるまい!致死率100%の最終奥義で葬ってやる!」

 そう言って、バミューダは夜の炎のワープホールを幾つも浮かび上がらせ、その中を潜り速度を上げると綱吉の真上から光速で攻撃を放つ。

「終わりだ!沢田綱吉!」

 だが瞬く暇も無いその一瞬、綱吉は右拳のみでバミューダを倒したのだ。

「何たることかおのれ!」

 叫ぶイェーガーも虚しく、綱吉の攻撃により時計が壊された。
 これで、全ての戦いが終わったのだ。わたしは足の力が抜ける様な感覚を堪え、直ぐにザンザスさんとスクアーロさんの元へと走り出した。
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