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 ベルフェゴールとマーモンに連れられ、スーパースイートルームの和室に投げ出されたツナは驚いた。目の前にはザンザス、そして後ろからはなまえが酒瓶を持ってやってきたからである。

「な?!なまえ!どうしてここに」

 なまえも驚いた様に目を見開いたが、畳に投げ出されたツナに、隣にはベルフェゴール、大方ここまで彼に連れてこられたのだろうと想像するのは容易かった。

「ザンザスさん、持ってきました」

 先程頼まれた酒瓶を持って、なまえはザンザスが手にする盃にそれを注いだ。物怖じせず、周りと同じ様にザンザスに接するなまえにツナは驚く。イタリアへと一時期飛んでいた彼女がヴァリアー達とどの様に過ごしているか、ツナは全く知らなかった。

「大丈夫か、ツナ!」

「だ、大丈夫だけど……大変だ〜!!」

 ツナの後ろから慌てた様にディーノとリボーンも駆け付ける。それをザンザスはぎろりと睨み付けた。

「この代理戦争でてめえをかっ消す!!」

「ええええ!オレ?!」

 刹那、何かに気付いたザンザスが天井に向かって攻撃を放った。別室にいたスクアーロ達や、なまえまでもが武器を構え、落ちてくる者を警戒する。現れたのはブロックチェック柄の手袋やネクタイをした男であった。

「私は虹の代理戦争を企画した者の遣いで、尾道と申します。フフッ」

 彼は鉄の帽子の男の遣いとして、今回の代理戦争の説明をしに来たと言った。

「ルールは至ってシンプルです。ボスウォッチとバトラーウォッチを装着した各チームの代理の方々に戦闘して頂き、ボスウォッチを破壊されたチームは敗けです。フフッ」

 尾道が取り出した箱の中には、腕時計が八本入っていた。一つはアルコバレーノウォッチ、もう一つはボスウォッチ、残り六つはバトラーウォッチである。時計である理由は、戦闘許可時間を知らせる為だと彼は言った。

「戦闘許可時間?」

「ええ、今回の戦いには時間制限があります。戦闘は一日一回、一定時間。いつ始まるか分かりません。この時計は開始一分前と開始と終了時間をお知らせするのです。フフ」

「随分変則的ねぇ……。でも一日たった一回で、しかも一定時間なんてなんだかあっさりしすぎない?」

「とんでもございません!バトルロイヤルですから!ハハッ」

 尾道は独特な笑い声を上げた。バトルロイヤルの意味が分かっていないツナは疑問の声を上げる。

「全てのチームが一斉に戦う形式です。自分のチーム以外は全て敵ということになります。時には三つ巴・四つ巴の戦いにもなるでしょうし、五つのチームが結託して一つのチームを集中攻撃するのも可能です」

 その言葉にツナは悲鳴を上げる。そして四日前にこの代理戦争のルールを説明した事で同盟が組めると尾道が言うと、マーモンとリボーンは目を合わせた。
 「では私は帰らせていただきます」と尾道が部屋を立ち去る。ディーノの肩に乗ったリボーンは興味深そうな声を上げた。

「同盟とは面白いな」

 ムムッと声を上げたマーモンがザンザスを一瞥する。

「ボス……、どうかな?同じボンゴレだし最初だけでも同盟を……」

 だがマーモンの言葉を遮る様にザンザスは手に持っていた肉を叩きつけた。その音と怒気に周りの誰もが彼を振り返る。

「誰とも組まん!!かっ消す!!」

 その言葉にツナ達は愕然とした表情を見せ、対してヴァリアー側はニヤリと口角を上げた。



 天井が突き破られたスーパースイートルームを逃げる様に立ち去ったツナ達は、一旦ディーノが取った部屋へと戻った。

「はぁ……生きた心地がしなかったよ……」

「やはり、バトルロイヤルなんだな」

 その言葉にツナは少しだけ俯いた。

「なまえはヴァリアー達と一緒に戦うのかな……」

 ディーノは心配そうにツナを見たが、リボーンは「さあな」と冷たく返した。

「リボーン、お前……」

「それより腹が減ったな」

 ディーノが時計を確認すると、そろそろホテル内のレストランを予約している時間が近付いていた為、一旦食事を取る事になった。

「まあ、気を取り直して美味い飯でも食おーぜ」

「ハラペコだぞ」

 三人はレストランへと入る、だがその瞬間聞こえたのは先程聞いたばかりの声。

「あらま、偶然ねえ!」

 ツナがその声に顔を上げると、そこにはヴァリアー達が揃ってレストランの席に座っていた。勿論そこにはなまえもしっかり並んで座っている。思わずツナとディーノはぎょっとした表情で彼等を見た。

「部屋が壊れたから私達もレストランで食べる事にしたの!」

「嘘ぉ?!」

 その言葉にスクアーロは「静かに食えるといいなぁ」と小さく笑った。

「嫌な予感がするぜ……」

「食ってる邪魔したらぶっ放してやるぞ」

 ヴァリアーの隣の席ついた彼等を交えて食事は開始されたが、ツナは隣で始まった小さな戦闘に内心冷や汗をかいていた。カトラリーは飛び、ベルフェゴールは今にもナイフを取り出しそうな勢いである。周りに気を使ってカトラリーが飛ばないよう、受け止めているルッスーリアのお陰で、レストランで食事が出来ているものの、次第にテーブルの周りにはウェイトレスもなるべく近寄らない様にしているのか、人が遠のいている気がする。
 もう一つ驚いた事になまえはこの状況に慣れているのか動じず食事を続けていた。偶に飛んでくるカトラリー達をルッスーリア同様全て受け止め、呑気にメイン料理のお肉を頬張っている。ヴァリアーの人達と楽しそうに食事をするなまえを見て、ツナは彼女をヴァリアーに送り出した事に少しだけ安心した。寂しい気持ちは未だ残っているが、結局彼女の幸せそうな表情を見たら、あの時感じた小さな憤りなど全て吹き飛んでしまうのだ。
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