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 てっきりわたしも虹の代理戦争に参加するものだと思っていたが、ザンザスさんはそれを否定した。

「え、なまえは入れないの?ボス」

 わたしとザンザスさんを窺う様に交互に見つめるルッスーリアが言う。

「二度も言わせるな」

「でも……」

 アルコバレーノ達が誰を代理に立てるか未だ把握していない中、暗に足でまといということであろう。

「分かりました」

「なまえはそれでいいの?」

「ザンザスさんが決めたのなら」

 このホテルに来る事は許されている。彼等が負けるとも怪我を負うとも思っていないが準備はしておくべきであろう。戦闘で役に立てないのであれば、わたしは自分に出来ることをやるべきだ。

「マーモンごめんね」

「別にいいさ」



 気持ちが晴れないまま日曜日を迎えた。今日はルッスーリアとランチをする予定である。身支度を終えて一階に降りると、そこには家族が勢揃いして庭に立っていた。子供達はレオンで出来たトランポリンで遊んでいる。

「お父さん、帰ってきてたの?おかえりなさい」

「なまえ!久しぶりだなあ〜!」

 父とはイタリアで見送ってもらった以来である。母の前もあってか、父は此方に駆け寄ると力強くわたしを抱きしめた。

「あなた。今からお客様がいらっしゃるんでしょう?」

「ああ、仕事の仲間だ!船が夜中に着いたものでな」

 お前達来なさい。と父が声をかけると、そこに現れたのはバジルくん達であった。

「バジルくん!コロネロ!」

「ご無沙汰してます」

「よぉコラ!」

 このタイミングCEDEFが並盛に来るという事は、コロネロさんの代理はもしかして父なのだろうかと腕を見る。予想は当たり、父の腕にはあのボスウォッチが嵌められていた。

「父さんがボスウォッチ着けてるー!ってことはコロネロチームのボスは父さん?!」

 暫くバジルくんとコロネロさんは我が家に泊まる事になるそうだ。綱吉とバジルくんは良き友人になった様で嬉しそうに声を上げる。
 だがその瞬間、もう聞きたくないと思っていた声が聞こえた。

「賑やかで楽しそうだね」

「え………?!白蘭?!」

 その言葉にCEDEFの人達は懐に手を入れる。だが父はそれを止め、綱吉の方を見た。

「へえ。ここが綱吉クンとなまえチャンの家かぁ……」

 キョロキョロと辺りを見回して、彼は小さく足を蹴ると、この間とは違い小さな翼をはためかせ宙を飛んだ。

「飛んだ!」

「手品かしら?」

 母は驚いた様に彼を見つめる。

「楽しいかい?学校生活」

「え……?そりゃ……楽しいことばっかじゃないよ。それよりなんでお前、ここに?」

 先程までの動揺は何処かへ消え去り、彼と対等に話す綱吉の質問に彼は「虹の代理戦争。ユニちゃんの代理なのさ」と周りを驚愕させる答えをした。まさか彼までも代理戦争に参加するとは……。わたしは奥歯を噛み締めた。ザンザスさんは何処まで見抜いてわたしを代理戦争から外したのだろう。

「なまえチャンはザンザスくんと一緒に戦うのかい?」

 答える気は無いと、わたしは白蘭を睨み付ける。その様子に違和感を感じた様子の綱吉と父はわたしを見つめた。

「何を信じるのか決めました」

「ふぅん。ま、この間の話、実はそこまで本気で思ってた訳じゃないんだよね」

「は?」

「まあ最後の言葉は本当だけどね。面白くて意地悪しちゃっただけなんだ」

「白蘭……あなたねぇ……!」

 このままじゃ癇癪を起こしそうだったので、わたしはテーブルに置いたバッグを掴んで足早に門の外へと向かう。

「お父さん、お母さん出掛けてくる」

「ん?お、おう」

「行ってらっしゃい」

 予定よりもかなり早くホテルに着き、様子もおかしいと感じたヴァリアーからは心配されたが、わたしはどうしても白蘭に対しての怒りを抑えられず、ルームサービスでパンケーキを頼み、甘いもので自分の機嫌を取る事にした。





「お前、なまえに何を吹き込んだ」

 正直な所、なまえが誰かに怒りを表す事など早々無い。特に沢田奈々はその言葉の棘と冷たさに驚いた様子であった。

「なまえチャン、ザンザスくんの事になるとすぐ怒るからさ。ちょっとからかったんだ」

 だが家光はそのなまえの変化に嬉しい気持ちもあった。養子として迎えてからいつも周りに気を使い、我儘を言わなかった子が彼等と出会い、過ごしてきた中で感情を顕にする機会も少しずつ増えてきている。それかマフィア関係者である事に心配ではあるが、彼女が彼女らしくいられる場所が出来ている事にホッとしていた。

「あれ、相当怒ってるよ……」

 呟いたツナに白蘭は苦笑いをしながらも「今度ちゃんと謝るよ」と言った。
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