63

 風化されたホテル内にチェッカーフェイスと呼ばれる男の声が聞こえると、腕時計からホログラムが写され、結果が現れた。

「ユニチームが負けている」

 その後に写されたのは復讐者の映像である。真ん中にいる男の肩にはアルコバレーノ同様、透明のおしゃぶりを首から下げている小さな赤ん坊がいた。

「誰だいこいつは!」

「彼の名はバミューダ・フォン・ヴェッケンシュタイン。かつて最も優秀なアルコバレーノだった男だ。ちょっとした手違いから今も君達アルコバレーノと同じ呪いを受けている」

 映像の中にいるアルコバレーノは「第八のチームして代理戦争に参加する」と告げた。

「特別に君の望みを認めようバミューダ君。強豪だぞ彼等は……。では諸君らの健闘を祈る」

 その言葉と共にホログラムはぶつりと消えた。彼等が持つ第八の属性の炎については、D・スペードとの戦いの時に綱吉達から聞いている。スカルさんが復讐者にやられたという情報も入り、一旦アルコバレーノ同士で今後について話し合うと、マーモンはホテルを出た。



 ヴァリアー隊員選りすぐりの幻術使いによって、ホテルの最上階が風化されたことは周りの人達にはバレていない。戦闘も終わり、わたしは自宅へ戻ろうとエレベーターに向かう途中、今まで感じたことの無い気配を感じた。

「なまえ!」

 第八属性の炎だと、気付いた時には既に鎖がわたしの方に向かって飛んできていた。

「くっ!!」

 咄嗟に短剣を取り出し鎖を弾くが、復讐者は確実にわたしを殺すつもりでいた。慌てて地を蹴って彼から距離を取り、ヴァリアーの元へと飛び跳ねた。

「バトラーウォッチを付けていない」

「闇討ちか!」

 復讐者の攻撃は圧倒的すぎた。ザンザスさんも銃を構え攻撃を放つが、復讐者は余裕そうである。彼の攻撃はわたし達に容赦なく刺さった。

「マーモンは戻らないのか!」

「ボス!逃げて〜!」

「ボス!!退却を!!」

 復讐者の前に対峙するザンザスさんは銃を構え、1ミリも動く気配は無い。

「誰が退くか、カス共」

「そうだぁ、オレが退がらせねえ。おいなまえ、生きてるか」

 わたしは左肩を負傷したが何とかスクアーロさん達の後ろで耐えていた。

「……大丈夫です」

 二人の足でまといにならない様、わたしも銃を構える。再び復讐者との戦闘が始まると、ザンザスさんはわたしの腕を掴んで背後にあるソファに放り投げた。その衝撃でさえもわたしの体は悲鳴をあげるように軋む。

「っ!」

「邪魔だ、どカス」

 ザンザスさんはわたしを庇ってくれたのであろう。だが復讐者の攻撃は容赦無くザンザスさんとスクアーロさんに襲い掛かる。

「くっ」

「ザンザスさん!」

 二人が復讐者からの攻撃を躱しきれずに傷を負い、いよいよ不味くなってきたその瞬間、外からマーモンが飛んで戻ってきた。

「みんな!!」

 マーモンが戻ると復讐者は闇夜に消えた。わたしは咄嗟にソファから降り、ザンザスさんに駆け寄る。

「ザンザスさん!」

「復讐者!一体何が?!ボス!隊長!」

「う"ぉ"ぉい!マーモン!ボスウォッチは守ったぜぇ……。ぐっ、だがボスさんといえど、休養が必要だ……」

 その台詞と共に、スクアーロさんは力が抜け地面に伏した。ザンザスさんもソファにどさりと座り込む。

「なまえ!何があったんだい?!」

「闇討ちよ」

 急いでみんなを手当しないとこのままでは不味いと、わたしはヴァリアーの医療班と術者を呼び、再び幻術をかける手筈と彼等の治療を頼んだ。
prev / next

top