13
なんだか嫌な予感がして眠れなかったので、キッチンでホットミルクを飲んでいた。今日はザンザスさんも争奪戦に向かっている様だ。この部屋はかなり上階にある。繁華街の中心に建設されてる為、窓から見える夜景はとても綺麗だ。
今までの皆さんから聞いた話によると、リング争奪戦は毎日一人づつ条件付きのフィールドで闘っている様だ。今晩はマーモンさんの日であり、残りは雲のリングと大空のリングである。あのボンゴレリングなるものが関係しているなら間違いないだろう。
過ぎていく日々、怪我をして戻ってくる人や、命を落としてこのホテルに戻ってこなくなった人。いくらわたしを誘拐したマフィアだからといって、亡くなってしまうのはとても悲しかった。それを彼等の前では言うことは出来ないけれど、戻ってこなくなった彼等を思い出すことくらいは許される筈だ。
ふと背後から気配を感じた。どうやらザンザスさん達が戻ってきた様だった。体の向きを変えると丁度よく扉が開く。入ってきたのはザンザスさんのみ。
おかえりなさい と言うべきか迷ったがわたしが言うのも可笑しいかと思い、軽く会釈をしてホットミルクが入っていたカップをキッチンに戻した。
そのままキッチンを出ようとしたが後ろから声をかけられ、それは叶わなかった。
「六道骸という男を知っているか?」
「……いえ」
「……。明日はお前も一緒に来い」
「リング争奪戦にですか?」
そうだ。 という様に見つめ返されたので、わかりました と返すと。彼は踵を返してリビングルームから出ていってしまった。
翌日。六道骸という名に全く聞き覚えが無かったので念の為ベルに聞いてみると、どうやら昨晩マーモンさんと対峙した相手らしく、その六道骸にマーモンさんは負けてしまったらしい。わたしの嫌な予感が当たってしまったのだ。また一人居なくなってしまった。
「今日はわたしもそのリング争奪戦に行くみたいなの」
「人質の出番?」
「ベル……。わたしのこと本当に人質にするつもりあるの?」
「そういうお前は人質の癖に余裕そうじゃん」
「……そんな事ないよ。怖いもの」
そう。此処の人達の優しさに触れて、多少情が湧いてしまったのは事実だが、彼等はマフィアであり成すべきことがある。そしてわたしはその為の人質。怖くないはずがない。
「痛いのは好きじゃない」
「殺る時はオレがスパッと殺ってやるよ」
「ご自慢のナイフで?」
「そうそう」
ナイフというよりもワイヤーだろうと思ったが、どちらしても切れ味はかなり良さそうだったので、絶対痛くしないでね とお願いしておいた。勿論死にたくはないが。
その日は何時もよりあっという間に時間が過ぎた気がした。死へのカウントダウンは待ってくれないのだと言われた様な気がした。
「また担がれると思わなかった……」
「これしか方法ねーもん」
わたしと10センチ程しか変わらないはずなのにベルはわたしを軽々と持ち上げ、再び夜を駆けた。正直スクアーロさんの方が担がれ心地は良かったけど、ベルに言ったら怒られそうだったので黙っておいた。
「それとも抱っこの方が良かった?」
お姫様抱っこって言うんだろ? とベルは言ってきたが、そっちの方が嫌なのでしっかり断っておいた。
着いた先が並盛中学校で少し驚いた。何処で毎日戦闘しているのだろうと疑問ではあったが、まさか並中とは。彼が知ったら怒るのではと思ったが、どうやらその彼が雲の守護者らしい。群れるのがあんなに嫌いだと言っていた彼が今回の件に関わっている事には驚いたが並中がフィールドになったことも関係あるのだろうか。
「十代目のお姉様!ご無事ですか?!」
獄寺くんはわたしに気が付くとダイナマイトを取り出し、ヴァリアーの面々に威嚇した。
大丈夫よ と告げると一先ず安心した様で、必ず助けます! と頼もしく言い切った。
校庭で戦うらしく、ベルに「校庭って何処?」と聞かれたので案内した。辿りついたのは鉄格子に囲まれた校庭。中にはトラップやガトリング砲まで仕掛けられているらしい。今までのフィールドを知らないが、今回のフィールドはまるで戦場の様な過酷な状況下での戦闘になることは間違いなさそうだった。
「それでは始めます。雲のリング、ゴーラ・モスカVS雲雀恭弥。勝負開始」
そこからはあっという間だった。モスカが真っ直ぐと雲雀くんに飛んでいくと、自慢のトンファーで一撃で破壊してしまったのだ。
「な……」
「……え?」
「これいらない」
雲雀くんはどうやらボンゴレリングには全く興味が無いようだった。
「さあ降りておいでよ、そこの座っている君。サル山のボス猿を咬み殺さないと帰れないな」
「なぬ!」
「なぬじゃねーよ、タコ。それ以前にこの争奪戦、オレ等の負け越しじゃん。どうすんだよボースー」
ザンザスさんはニヤリと笑うだけだった。どうやら何か策があるらしい。鉄格子を越え、フィールド内に入ると雲雀くんは一気に距離をつめ攻撃を仕掛けた。
「チェルベッロ」
「はい、ザンザス様」
「この一部始終を忘れんな。オレは攻撃をしてねえとな」
ザンザスさんがそう言った時だった。モスカが暴走し、無差別に攻撃し始めたのだ。
「ぶはーはっは!こいつは大惨事だな!」
「あの野郎はなっから勝負に関係なく、事故を装って皆殺しにする気だったんだな!だから雲雀を挑発したんだ!」
ザンザスさんは戦場と化した校庭の中心で哄笑した。見知った景色が段々と崩れていく。わたしは目の前の光景を受け止めきれずにいた。
綱吉達の味方だろうか、黒曜中学校の制服を着た子達がフィールド内に入ってしまい、ガトリングとモスカの圧縮粒子砲に挟まれてしまった。
瞬間、暖かいオレンジ色が彼等を包み、攻撃から彼等を守るようにして、額に暖かいオレンジ色の炎を宿した綱吉が校庭に現れたのだ。
「十代目!」
「ボス……」
「来たか……だが。カスから消えていく、それに変わりはねえ」
そこからモスカは標的を綱吉に変えたようで、校庭内を飛び回りながら綱吉に攻撃を仕掛ける。ちらりとザンザスさんの方を向くと、策が順調に進んでいるかのように満足気に綱吉の方を向いていた。彼は一体何を企んでいるのだろうか?まるで態と綱吉にモスカを倒させる様に仕向けている気がしてならない。
嫌な予感は的中した。綱吉がモスカを正面から焼き切ると中から人が現れたのだ。