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ボンゴレリング自身にも秘められた力があるらしい。以前ザンザスさんが九代目にかけられた零地点突破が溶かされた床には七つの小さな焦げ跡が残されていたという。刹那、綱吉が所持する大空のボンゴレリングから炎が上がると、それに呼応するかの様にマーモンさんの掌にある六つのボンゴレリング達にも炎が上がった。
「リングから炎が!!」
「見るがいいさ」
「零地点突破の氷が溶けていく!!」
「これだけでは無いよ。七つの完全なるボンゴレリングが継承されし時、リングは大いなる力を、新たなるブラッド・オブ・ボンゴレに授けると言われている」
六つの炎はザンザスさんの氷を溶かした。マーモンさんの言葉に綱吉が何かに勘づいた様子だったが、隙をつかれてベルに大空のリングを奪われてしまった。
「ボンゴレリング全部コンプ!」
「こっちも準備出来たよ」
氷が溶けきり、ドサリとザンザスさんは地面へと倒れ込んだ。
「おかえりボス」
「いよいよだね」
「リングを……寄越せ……」
「もっちろん!これはあんな亜流の偽物じゃなくて、九代目直系のボスにこそ相応しいからね」
綱吉は何かをわかってしまった様だった。長年綱吉を見てきたのだ、彼が何かに気付いてしまった事くらい分かる。それが良くない事だということも。もしかしたらザンザスさんは……、わたしと同じなのかも知れない。
「結局、最初からこうなるって決まっていたのさ」
「ツナ!」
「十代目!!」
「どいつもこいつも新ボス誕生の為に立ち会いごくろーさん」
「受け継がれしボンゴレの至宝よ。若きブラッド・オブ・ボンゴレに大いなる力を!」
ベルはザンザスさんに大空のリングを嵌めた。刹那、リングから閃光が走る。もしも、もしも彼がわたしと同じであれば、ブラッド・オブ・ボンゴレとは無関係になってしまう。そうなるとつまり……。
「これは……。力だ!!とめどなく力が溢れやがる!!これがボンゴレの後継者の証!遂に、遂に叶ったぞ!!これでオレはボンゴレの十代目に……!?」
「ボス!」
「どうしたんだ?!」
「馬鹿な……まさか!!」
「リングが……。ザンザスの……血を……拒んだんだ……」
わたしの悪い妄想は当たってしまった様だ。ザンザスさんは全身から血を流してしまう。
「ムム!お前何か知っているな?リングが血を拒んだとはどういう事だ?!」
「さぞ……かし……。いい気味だろうなあ……!ぐ……そうだ……。オレと老いぼれは血なんて繋がっちゃいねえ!!」
「ザンザス……」
「同情すんな!!カスが!!」
「俺には分かるぞぉ……。お前の裏切られた悔しさと恨みが、オレには分かる……」
「!スクアーロ……!!」
チェルベッロが観覧席の音声も聞こえる様にしたらしい。山本くんも、ヴァリアーのメンバーもスクアーロが生きていた事に驚いていた様だった。
「てめえに何が分かる。知ったような口を聞くんじゃねえ……」
「いいやわかる!!知っているぞぉ!!」
「なら言ってみろ!オレの何を知っている!ああ?!……言えねえのか!!」
スクアーロさんは言うべきか迷っているのだろう。きっと彼は本当の事を知っている。知っているからこそこの場で、皆の前で言うべきか迷っているのだ。
そしてわたしも知ってしまった。ザンザスさんの過去を。わたしと同じだということも。何も知らないままお爺様に引き取られ、自分は十代目になると疑って来なかった彼が何年も後に事実を知るのはとても苦しかった事だろう。彼の過去を知る度にわたしの中にある靄が徐々に晴れていく。そう、わたしは彼が努力していた事を近くで見ていたのだ。理由はまだ思い出せないが、わたしは過去にイタリアにあるボンゴレ本部で彼と出会っている。何で忘れていたのだろう。彼はわたしが過去を覚えていないことをどう思っていたのだろう。
「これがオレの知る事の全てだ。揺りかごの後に調べた」
「くだらねえ……」
「九代目が……、裏切られてもお前を殺さなかったのは……。最後までお前を受け入れようとしてたからじゃないのか……?」
「…………。」
「九代目は血も掟も関係なく、誰よりもお前を認めていた筈だよ。九代目はお前の事を本当の子供の様に……」
「うるせえ!!気色の悪い無償の愛など!クソの役にも立つか!!同じ立場にも無いお前が勝手な事をほざくな!!」
綱吉が悲痛な表情を浮かべる。きっと心当たりがあるのだ、自分の姉であるわたしに。同じ思いを抱いているのでは、と思った筈だ。
「オレが欲しいのはボスの座だけだ!カスはオレを崇めてりゃいい!!オレを讃えてりゃいいんだ!!」
「なんて奴だ……」
「かっきーー」
「ぐあっ……!!」
「ザンザス様!貴方にリングが適正か、協議する必要があります」
「黙れ!叶わないなら道連れだ!どいつもぶっ殺してやる!!」
「大賛成だ!ボス、やろーぜ!」
「当初の予定通りだよ」
「やらせるかよ!」
校庭の雰囲気は一触即発だった。
「しししこりゃ1000%間違いなし、お前ら死んだわ」
「てめー見えてねーのか?2対5だ!部が悪いのはそっちだぜ?」
「2対5?なんの事だい?君達の相手はこの何十倍もの戦力だ」
「!?」
「総勢50名の生え抜きのヴァリアー隊がまもなく此処に到着するのさ」
「何を言っている!」
「ボスは勝利後に連中の関わりのある者全て片付ける要員を向かわせておいたんだ。僕は幹部クラスの次に戦闘力の高い精鋭をね」
「お……お待ちください!対戦中の外部からの干渉を認める訳には……!」
「ん?知らねーよ」
躊躇なくベルはチェルベッロに斬りかかった。血が溢れ地に伏せてしまうチェルベッロ。
「そっちがそのつもりならオレ達がツナ側で応戦するぜ!ここから出せコラ!」
「この場合文句は無いはずだ」
「拙者も戦います!!」
「わかりました。それではヴァリアー側を失格とし、観覧席の赤外線を解除します」
だがどうやらヴァリアー側で細工をしておいたらしく赤外線は切られてない様だった。内部からの攻撃で爆発する仕組みの様で、リボーン達は手は出さない。
その時校庭に隊服を着たヴァリアー隊の応援が到着した。
「ナイスタイミーング、待ってたぜ」
「報告します、我々以外のヴァリアー隊全滅!!」
「!?」
「奴は強すぎます!鬼神の如き男がまもなく……」
空気を裂くような音と共に現れたのは鉄の塊。ランチアさんという男が一人でヴァリアー隊を殲滅した様だった。