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 この部屋から、普段食事をするリビングルームの間までなら自由に移動していいと許可を貰った。
 リビングルームは冷蔵庫や小さなキッチンまで備わっているので、昼食になりそうな物がないか見ておこうと思い先日ルッスーリアさんに買って貰ったワンピースに着替えて、リビングルームへと向かった。

 リビングルームは窓際に面している。どうやら今日は雨が降っているようだ。
 思ったよりキッチンには食材が潤沢に揃っており、冷蔵庫からパルミジャーノチーズとパルマハム、セルバチコを取り出しフォカッチャに挟んでトラメッジーノを作った。
 珈琲を入れて、先程作ったトラメッジーノにかぶりつこうと手に取った瞬間、リビングルームに金髪の彼とマーモンさんがやって来た。

「おはようございます」

「おはよう」

 金髪の彼からは返事は貰えなかったが、わたしが手にしているものを気にしている様だった。

「中身何?」

「パルマハム、セルバチコ、パルミジャーノチーズです」

「オレも食べる」

「わかりました」

 此処の人は案外見知らぬ人が作った料理でも大丈夫みたいだった。マーモンさんも同じ物を食べると言ったので、わたしと同じトラメッジーノを二人前作り、金髪の彼には牛乳を、マーモンさんにはレモネードを指定されたのでそれぞれに渡す。
 改めてトラメッジーノを手に取り口に頬張る。パルマハムとパルミジャーノチーズの塩気が効いていて美味しい。セルバチコは単体で食べるとかなり苦味を感じるがハムやチーズと共に食べるといいアクセントになるから不思議だ。
 ちらりと前に座る二人を見るが、特に文句も無さそうに食べ進めているので安堵した。

 昼食を食べ終わっても二人は部屋から出ていく気も無さそうなので、少しだけ話を聞いても大丈夫かと思いずっと気になってた金髪の彼の名前とティアラについて聞いてみた。
 どうやら彼はベルフェゴールさんといい、本物の王子なんだとか。スクアーロさんもそうだが、此処の人は髪色も髪質もとても綺麗なので羨ましい。

「そういえばルッスーリアさんを今日一度も見かけていないのですが、何処にいらっしゃるかわかりますか?」

「あのオカマヤローならもういないよ」

「……?」

「戦いに敗れたのさ」

 一体何の戦いなのだろうか?ベルフェゴールさんの言い方だとただ単に此処にはいないと言う意味では無いような気がする。

「君はリボーンや自分の弟から何も聞いていないのかい?」

「何度か尋ねたことがあるのですが、教えて頂けませんでした」

 もしかしたらこの人達のことや、今までずっと聞いても教えて貰えなかったことが此処で知れるかもしれない。ここ一年間で疑問に思ったことは沢山あるし、自分の過去にも繋がっている様な気がしたのだ。どんな些細な事でもいいから一つでも多く情報が欲しかった。

「あの、ご迷惑じゃなければ教えていただけませんか?」

 わたしの言葉に暫く黙り込んだ二人だったが、ベルフェゴールさんは面倒臭そうに「マーモンよろしく」と言って立ち去ってしまった。彼は多少会話はしてくれるものの、わたしのことを良く思っていないらしく態度は分かり易かった。

「まあ本当は金を踏んだくってやりたいところだけど、少しなら構わないよ」

 そう言って彼は、自分達はイタリアンマフィアでありボンゴレファミリーというグループの暗殺部隊に所属していることや、綱吉達や父もボンゴレファミリーに関わっていること。そして次期ボスになる為に綱吉達と後継者争いをしていること、昨晩はルッスーリアさんが戦いそして敗れてしまったことを教えてくれた。

「マーモンさん、教えて頂き有難うございました」

「昨日の礼だよ」

 昨日と言うと食事中の話だろうが、あの時もマーモンさんのお陰で取り分けることが出来た様なものだ。御礼言わなければならないのはわたしの方。

「今は返せるものが無いですが、必ず御礼をします」

 彼は椅子から飛び降りると「期待せずに待っているよ」と言い、リビングルームから出ていった。







  なまえがヴァリアーに拐われた。それはツナにとって恐れていたことであり、起きてはならないことだった。

 思えばリボーンが来て、ボンゴレファミリーの十代目になるべく地獄の様な特訓を強制的に受けたり、マフィア達に命を狙われたりとそれはもう散々な一年を過ごした。
 そして友人として守護者として、周りにいる人達がマフィアに狙われ傷付くのをツナは見ているのが辛かった。何よりもマフィアに関係ない京子やハル、そしてなまえが巻き込まれるのは何としてでも避けたかった。

 それが今回ボンゴレファミリーの暗殺部隊ヴァリアーに拐われてしまった。寧ろ今まで巻き込まれず済んでいたのが奇跡の様に感じた。ボンゴレファミリー十代目候補の姉。それだけでも狙われる可能性は十二分にあるし、なまえは戦う術を持たないのだ。
 幾ら人質の為に拐われたとはいえ、なまえがヴァリアーに何もされていないという保証は無い。奈々には家光から無理矢理理由を付けて誤魔化しているらしいがこのまま日が経てば経つほど、誤魔化せなくなるのは明白だろう。



 今晩は雷の守護者同士の戦いだ。二十年後のランボの圧倒的強さに勝機を見い出せそうだったが、どうやらバズーカの効果は最初の一発目が当たってから五分間の様でランボの姿が元に戻ってしまった。このままではレヴィに殺されてしまう。サーキット内に足を踏み入れたら失格になっしまうが、ツナは何よりもランボがもう傷付く所は見たくなかった。
 ランボがとどめを刺されそうになった瞬間、避雷針が傾く。

「エレットゥリコ・サーキット全体が熱をおびている。……熱伝導……?」

「あれは……もしや……!」

「目の前で大事な仲間を失ったら……死んでも死にきれねえ」

 暖かいオレンジ色の炎が大きく広がる。守護者も誰だか分からない様子だったが、あの暖かく頼もしい炎はツナしか居ないと確信する。
 この戦いで仲間を誰一人失いたくないと、ツナに強く告げられたザンザスは、自身の父である九代目に似ていること感じ笑いを堪えきれなかった。彼の中にあるシナリオは順調に進んでいる。ツナが九代目と似ていることは想定外だが自分が立てたシナリオをより面白く、そして残酷にさせることは間違い無かった。

「このリングが此処にあるのは当然のことだ。オレ以外にボンゴレのボスが考えられるか

他のリングなどどうでもいい。これでオレの命でボンゴレの名のもとお前らをいつでも殺せる」

「そんな……!!」

「だが老いぼれが後継者に選んだお前をただ殺したのではつまらなくなった。お前を殺るのはリング争奪戦で、本当の絶望を味あわせてからだ

あの老いぼれのようにな」

「?!ザンザス貴様!九代目に何をした!!」

「それを調べるのがお前の仕事だろう!門外顧問!」

 家光はザンザスが九代目を巻き込み何か良からぬ事を企んでいる事に憎悪が湧いた。
 それに自分の娘であるなまえも未だヴァリアーに捕えられたままだ。何としてでも奴の企みを止めなければならない。

「喜べモドキ共。お前らにはチャンスをやったんだ」

「?!」

「残りの勝負も全て行い万が一お前らが勝ち越すような事があれば、ボンゴレリングもボスの地位も全てくれてやる」

「なんだって……?!」

「だが負けたら。お前の大切なものは全て……消える」

「た、大切なもの……全て……?!それってなまえも?!」

 ザンザスは血の気が引いていくツナを見下ろし、嫌な笑みを浮かべた。

「精々見せてみろ。あの老いぼれが惚れ込んだ力を」
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