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「綱吉達が行方不明?」

 修行に明け暮れていた頃、父から突然連絡がきた。なんでも初めはリボーンからいなくなり、綱吉や獄寺くん山本くん、笹川さん三浦さん、ランボやイーピン達までも姿を消したらしい。なにやら良くないことが起きている気がした。
 わたしはザンザスさんに許可を貰い、一旦日本へ戻ることになった。行方不明になったと母が知れば不安になると思ったからだ。

 まだイタリアに行ってから一ヶ月も経っていなかったが随分と長く並盛から離れていた気がした。ヴァリアーとは違い此処は平和で長閑だ。以前と違うのはわたしの大切な弟やその友人達が此処に居ないという事。わたしは足早に自宅へと帰った。

「ただいま、お母さん」

「あら?なまえちゃん!おかえりなさい!突然昨日連絡が来たものだから吃驚したわ」

「お母さんを驚かせようと思って」

「もう、お父さんに段々似てきたのかしら?ツナったら獄寺くんや山本くん達と皆でキャンプに行ってるのよ。折角帰ってきたのに会えなくて残念ね、どれくらいこっちに居るの?」

 どうやら綱吉は泊まりで遊びに行っている事になっているらしい。大方父が話をしたのだろう。

「三日間くらい居るつもりよ、その間に会えたらいいけど……」

「それがいつ帰ってくるか分からないみたいなの、他の親御さんも心配するからあんまり長いと困っちゃうのに」

 わたしは早めに捜索するべきだと思い、とりあえず並盛付近を探す事にした。

「あれ?雨」

 先程まで降っていなかったのにいつの間にか雨が降り始めていた。益々嫌な予感がして、傘を手に取り家を出た。



 まずは並盛中の方へ向かうべきかと思い、校門の前まで来てみたが勿論中には入れないし、彼等は居ないだろう。此処に来る途中も会わなかった。他を当たるかと踵を返そうとした時気配を感じ前方に向き直る。

「何しに来たの」

 校門の前に現れたのは雲雀くんだった。わたしは事情を話し、綱吉達を見ていないか聞いてみた。

「あの小動物達ならここ数日見ていないよ。どんな理由であれ、サボりとは許し難いね」

「やっぱり此処には居ないか」

「それよりなまえ、あのサル達の所に行ったんだって?しかも修行しているんだってね、さっきも僕の気配に気が付いた」

 そう言い雲雀くんは嬉しそうに此方を見た。まるで玩具が手に入った時のベルの様に。

「わたしで遊ぼうって思ってる?」

「ご名答」

「わたしも雲雀くんに見てもらいたいのは山々なんだけど……」

 その時雲雀くんの背後から見慣れた姿がやってきた。彼は途中何も無い所でつんのめって転んだが、あれが通常なのだと少し前にリボーンから教えてもらった。

「おーい!恭弥ってば置いてくなよ、見失っただろ……。って、お!なまえじゃねえか!」

 彼──ディーノさんはいつもと変わらない笑顔を此方に向けた。どうやら彼等は修行中だったらしいが、わたしの姿を見つけた雲雀くんが抜け出してきた様だった。

「お久しぶりです、ディーノさん」

「おお、久しぶり。ツナ達が心配で戻ってきたのか?」

「それもありますが、母が特に心配でしたので」

「成程な」

「お二人は修行中ですか?」

「そうだったんだが……この通り、恭弥が途中で抜け出したもんだから追いかけて来たんだ」

 戦闘狂の雲雀くんに毎回付き合うディーノさんも流石だなと思いつつ彼等の話を伺っていると、どうやらディーノさんは今までとは違った戦闘法がこれから主流になるのでは無いかと考えているらしい。

「リングの炎……ですか?」

「ああ、お前もザンザスの氷が溶かされる所は見ただろう?あれは死ぬ気の炎と同じだが、それぞれ色が違っていた。あの炎は必ず今後大切になってくると思うんだ」

 もしあの炎が死ぬ気の炎であるとするなら、バジルくんが額に宿していた青い炎と関係があるのだろう。そもそも何故色が違うのだろうか、寧ろ色が違うだけなのだろうか。

「最近こればかりで鬱陶しい」

「鬱陶しいって……お前なぁ!」

 流石のディーノさんも雲雀くんにはたじたじの様だ。わたしは彼等にまた後日修行をお願いする事にし、並盛中を後にした。




 結局昨日は綱吉達を見つける事は出来なかった。

 どうやら今日も雨が降っている様だ。わたしの部屋はイタリアに行く前と変わらず残されている。母が偶に掃除をしてくれている様で、部屋の中はとても綺麗だった。
 わたしはルッスーリアさんと数日前にお買い物に行った時に購入した服を持ってきていて、その中でも少し透けた裏葉色のシャツは特にお気に入りで購入してからよく着ていた。
 わたしはそれと白いパンツを合わせて今日も彼等を探しに出掛けようと勢い良く玄関の扉を開け、お気に入りの傘を差した。
 そのまま庭を通り過ぎ、道路に飛び出した瞬間、わたしは真横から何かが飛んでくるのを視界の端で確認した。ハッとし、受け身を取ろうとするが間に合わず、その何かがわたしに直撃するのを感じる。

 刹那、わたしは白に覆い尽くされた。
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