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 過去に戻る為には入江正一が鍵になると、オレ達はミルフィオーレの日本支部へと乗り込んだが、本当の敵は白蘭であり、入江正一は味方だということが判明した。

 十年後のオレはこの時代の雲雀さんと入江さんとの三人でこの計画を立てたらしい。マフィアに関係の無い京子ちゃん達を巻き込む事になったのも、全て未来の自分が決めた事らしいが、オレはそこまでこの現状の酷さを理解していなかった。

 入江さんはトゥリニセッテポリシーについて教えてくれた。白蘭はそれを叶えられなければ、人や国までも抹殺する可能性があるらしく、そしてこの時代に倒さなければ白蘭の能力を封じる事が出来ないという事も。

 オレ達が日本支部へと乗り込んだ様に、全国のボンゴレファミリーは同時期に全支部のミルフィオーレファミリーに総攻撃を仕掛ける作戦になっていた。
 そして主力戦となるはイタリア本部。そしてそこにはオレ達と同じ時代から来たなまえがいる。初め、京子ちゃんのお兄さんから聞いた時は驚愕した。まさかなまえまで此処に来ているとは思わなかったからだ。どうやら姉はオレ達を探してくれていたらしい。この時代に来た雲雀さんからも教えてもらった。

「日本ではこの計画を知っているのは僕達三人だけど、実はなまえさんも知っていたんだ」

「え?!未来のなまえも?!」

「ああ、だがこの時代のなまえさんは計画を立てた後、亡くなってしまったんだが……」

 入江さんのその発言にオレ達は言葉を失った。周りにいた獄寺くんや山本くんも、雲雀さんまで驚いた様子だった。

「白蘭さんが止めを刺したんだ」

 オレはその言葉に震えが止まらなかった。まさかこの時代のなまえまでも白蘭に殺られていたなんて。

「彼女の最期はイタリアだった為、僕も詳しくは知らないんだ。この時代の彼女もまた、過去の君達の事を待ち望んでいた筈だよ」

 なまえとはザンザス達と共に居たいと願ってイタリアへ向かってから暫く会っていない。必ず姉も一緒に過去に帰るんだと強く誓った。まずはイタリアから良い報告が来るのを待つしかない。



 暫くすると、リボーンが嬉しそうに此方を向いた。

「ザンザスが敵の大将を倒したらしい」

 その言葉に周りは大いに喜んだ。長期戦になれはどんどん不利になってしまうが、どうやら敵は撤退を始めたらしい。凄い、流石ヴァリアーだ……!なまえも戦ったのだろうか。
 後は白蘭を倒すだけ、そう思った時、声が響いた。

「いいや。ただの小休止だよ」

「!!」

「イタリアの主力戦も、日本のメローネ基地もすんごい楽しかった」

 そうして目の前に現れたのはホログラムの白蘭だった。オレは初めて白蘭の姿を目にした。
 どうやら今までのは前哨戦だったらしい。オレは奴の言っている意味が分からなかった。

「沢田綱吉クン率いるボンゴレファミリーと、僕のミルフィオーレファミリーとの正式な力比べをやろうと思ってね」

「?」

「もちろんトゥリニセッテをかけて。時期的にもピッタリなんだ。正チャンやこの古い世界とのお別れ会と、新世界を祝うセレモニーにさ」

 益々何を言っているのか分からなかったが、入江さんの嵌めているマーレリングは本物ではないらしい。そして、本当の六弔花は別でいると。それは真六弔花というらしく、その力は人間業とは思えない程の圧倒的力量であると画面越しに見せつけてきた。

「白蘭サン!力比べって一体何を企んでいるんですか?!」

「昔正チャンと良くやった、チョイスって遊び覚えているかい?あれを現実にやるつもりだよ」

 チョイスというものが何かは分からなかったが、入江さんはそのチョイスというものを知っている様だ。

「細かいことは十日後に発表するから楽しみにしててね。それまで一切手は出さないから、のんびり休むといい」

 のんびり出来る訳が無いと、リボーンは睨むが白蘭は何とも思っていない様で「もっと話したいけど、君達はもう逃げないとね」と言った。
 どうやら“超炎リング転送システム”というものでこの基地は飛ばされてしまうらしい。オレ達は焦るが、入江くんはこの事を知っていたのか「何かに捕まるんだ!」と言って皆に指示を出した。
 辺りが真っ白に光る。目も開けられない様な眩しい光に包まれた後、目を開いたら目の前は綺麗さっぱり無くなっており崖になっていた。

 オレ達が助かったのは過去からお兄さんが来たお陰で結界が張られていたらしい。
 今までの敵よりも更に強い敵を相手にすると知り目の前が暗くなったが、入江さんから渡されたのはこの時代のオレが用意したボンゴレ匣だった。こんなものをオレが皆に用意したというのか。
 オレンジ色の匣を見つめていると、突然内線から喧しい声が聞こえた。

「う"ぉ"ぉい!!てめーら、生きてんだろーなぁ?!」

「スクアーロ!」

「っるせーぞ!!」

「いいかぁ!こうなっちまった以上、ボンゴレは一蓮托生だ。てめーらが餓鬼だろうと」

 その途中、鈍い音がしたと思えば響くのは低く背中に這うような声。

「沢田綱吉……乳臭さは抜けたか」

「!」

「十日後にボンゴレが最強だと、証明してみせろ」

 そう言って内線はぶつりと切れた。
 どうやら今回は彼等は仲間である様だが、オレは色んな事が一気に起きて素直に喜んで良いのか戸惑った。
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