42

 何とか並盛へと逃れ転送システムを破壊したが、完全に破壊出来ていなかったらしく再び敵が此方にやってきてしまった。

 わたし達は一先ず並盛のボンゴレアジトへと戻る事になった。まさか地下にアジトがあると思わなかったが。
 スクアーロさんはルッスーリアさんに通信を繋ぐが、どうやらイタリアの方もまだまだ忙しいらしい。途中ぶつりと通信が切れたかと思うとアジト内にけたたましいサイレン音が鳴り響いた。

「う"ぉ"ぉい!何事だぁ!?」

 スクアーロさんと廊下へ出るが背後から突然爆発音がすると炎と殺気を感じる。わたしはすかさず大空の炎を放出した。スクアーロさんは山本くん達の一歩前へと出る。

「てめーらじゃ役に立たねぇ。ユニを連れてさっさとここから去れ!」

「ええ?!去れって……、でも一人じゃあ」

「わかんねぇのか!!既にお前らは攻撃されてんだぞぉ!!」

 わたしの炎を包む様に雨の炎で敵の炎を凌いでいた事を告げれられ、綱吉達は驚いた様子だった。
 山本くんはスクアーロさんに加勢しようとわたしの隣へと立つ。だがスクアーロさんはギロリと此方を振り向いた。

「う"ぉ"ぉい!!まだオレの事が分かってねぇなあ!!そろそろ一人でゆっくり静かにひっそり暴れてぇーんだぁ!!!」

 スクアーロさんなりに彼等に気を使っているのだろう。わたし達は此処をスクアーロさんにお願いする事にした。
 わたしは殿を務める事を申し入れ、皆を見送ったあと最後にちらりと振り返る。

「……スクアーロさん」

「お前も早く行け」

 頷くとわたしは前を向き走り出した。

 何とか全員地上へ出ることが出来たが、次に何処へ向かうかが問題だった。皆で案を出し合ったが、三浦さんが言った不動産屋が案外見つかりにくいのではということになり、そこに向かうことにした。
 刹那、地響きが鳴ったかと思うとアジトの出入口が爆発した。スクアーロさんからの通信が入り、一刻も早くここから逃げろと彼は告げた。彼が強い事は十二分に分かっている上に、彼のことを信じているが相手は真六弔花である。不安がよぎった。

 その不動産屋は川平不動産と言うらしい。そこは十年後のイーピンがよく出前を運んでいる場所らしく、綱吉達は聞き覚えのある名前らしい。
 彼からは独特な雰囲気がした。敵の事も知っている様であったし、彼は何者なのだろう。

 山本くんがアジトに戻ると言うので、スクアーロさんの事がずっと気掛かりであったわたしもそれに着いていく事にした。
 外を警戒するが敵は居ない様子だった。注意深く外に出ようとするが、ランボがガラリと扉を開けてしまう。刹那、不快感を感じたが一瞬だった為正体が分からず、辺りを見回すが特に嫌な気配は感じなかった。

「なまえ、これを。」

「内線?」

「近くに居ないと使えないけど、何も無いよりマシかなって」

「ありがとう。此処はよろしくね」

「うん……みんなも気をつけて!」

 ジャンニーニさんやビアンキさん、スパナさん達と共にアジトへと戻ってきたが、そこは悲惨な状況であった。
 わたし達は目的を果たす為にアジト内で別れた。瓦礫の中を潜り抜けると、奥にスクアーロさんが倒れている所を見つけた。

「スクアーロさん!!」

 左腕は切断され、息も絶え絶えであり、わたしは焦る。急いで山本くんに連絡をし、二人で彼を運んだ。
 わたし達はディーノさんと合流し、スクアーロさんの応急処置をした。

「ぐっ……もう行ける……。さっさと行くぞぉ」

「まだ駄目です。せめてここだけでも止血してから行きましょう」

 辺りは既に薄暗くなっていた。中心部を迂回する様に森まで来たが、どうやら川平不動産付近で綱吉達が戦闘したらしく街中は騒ぎになっていた。
 どうやら綱吉達も森の中にいる様だが、まだまだ遠いらしい。辛うじて内線は繋がったがノイズが酷くて聞き取れなかった。

「今夜は此処に留まろう。戦闘もまだ始まらない筈だ」

 ディーノさんの言葉にわたしは頷いた。



 明朝、わたし達は綱吉達の元へと急いだ。内線は次第に音を拾っていく。どうやらザンザスさん達も此処に来ているらしい。GHOSTという存在が現れ、戦場は混乱している様だった。わたしはディーノさん達に状況を伝え、先を急いだ。
 森の中を駆けていくと目の前にザンザスさん達が見えてきた。その瞬間眩しい光が笹川くんや獄寺くん、そしてヴァリアーの所へと飛んだ。あれが炎を吸収する光だろうか、そうであれば不味い。わたしと山本くんは勢いよく前へと駆け出した。

「不味い、此方に曲がってきた!」

「くそ!!」

 わたしは短剣を抜き取り、彼等の前へと飛び出た。そしてそのまま光を受け止めるように短剣を構える。

「なまえ!!」

「何で光が……」

 光を受け止めたと思ったが短剣に当たるとそのまま光は砕け、キラキラと輝いた。

「そうだわ、なまえは炎を吸収する事が出来る!」

 どうやら彼等を守れた様だ。わたしはほっと息をつき、ちらりと後ろを振り向く。ザンザスさんと目が合うと彼は少しだけ目を細めた。
 山本くんの方も間に合ったらしい。後からディーノさんとスクアーロさんが此方へやって来た事に気付くと、ザンザスさんはギロリとそちらに目を向けた。

「おせーぞ、カスが!!」

「……ぐっ……。……すまねーなあ!!!」

 ルッスーリアさんは「何してたの?待ってたのよー」と心配そうにスクアーロさんを見たが、レヴィさんとベルは本気で残念がっている様子だった。

 すると突如、目の前でGHOSTと呼ばれる人が閃光した。何事かと思ったが、六道骸と呼ばれる男はこの状況を瞬時に理解した様だった。

「不味い!彼は此処へいきなり現れた。まるで瞬間移動でもしたかのように……。吸収した炎エネルギーを使い再び遠くへ移動する可能性があります!」

「ということは……一気にユニの元へ?!」

「それはさせない!!!」

 周りが混乱する中、空から聞き慣れた声が響く。あれは綱吉の声だ。
 綱吉はGHOSTへと急降下すると、死ぬ気の零地点突破改の構えをとる。未だ炎を吸収する光は四方に散っている為、わたしも皆より一歩前へと出て光を吸収した。
 激しい音と共に綱吉とGHOSTがぶつかり合う。互いに吸収し合っている為、その引力は凄まじく堪えていても少しずつ前へと引かれる程だ。
 綱吉が少しずつGHOSTを吸い込んでいく。そしてそのまま姿かたちも残らず消えた。

「GHOSTって炎の塊かよ」

「流石……十代目!!」

 だがあれだけの炎エネルギーを吸ったのに綱吉の体には何一つ変化が無い。先程わたしが吸い取ったエネルギーも体内に入ってきてはいなかった。何かが可笑しい。この違和感にザンザスさん達は気付いたらしく、異様な静けさが辺りを包んだ。

「いやあ、すごいすごい」

 突如、空から声がした。

「ゴーストを倒しちゃうなんてさ」

 現れたのは白蘭だった。

「また元気な君に会えるとは嬉しいなあ。綱吉クン」

「白蘭!」

「ボンゴレファミリーの主力メンバーも勢揃いで益々嬉しいよ。……それにしても綱吉クン、君は物好きだなあ。骸君にザンザス君、かつて君の命を消そうとした者を従えてるなんて正気の沙汰じゃない」

 その言葉にザンザスさんと六道骸と呼ばれる男は心外だと、白蘭に攻撃を仕掛けた。
 凄まじい攻撃が白蘭を襲ったが、彼には全く効いていない様だった。

「なんだい?今のヘナチョコ弾は。まあ無理もないさ。ゴーストに死ぬ気の炎を殆ど吸われたんだから。みんなガス欠だよね」

「!!」

「お前達は下がっていろ。こいつの相手はオレだ!」

 綱吉はみんなを守る様に白蘭の前に立ちはだかった。

「アハハ、何で僕が今頃ここに寄ったか分かるかい?綱吉クン。やっと準備が出来たからさ、僕の心と体の準備をね」

 すると綱吉は一瞬にして白蘭の元へと飛び、彼に回し蹴りをし、頭を掴んだかと思うと顔面に蹴りを入れた。

 早すぎて目で追うのもやっとだった。
prev / next

top