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直ぐにヴァリアー邸から出てきた事や、わたしの表情を見て、父は全てを察した様だった。帰りの車内もとても静かだった。わたしはそのままボンゴレ本部へと戻り、その足で九代目の元へと訪れた。
「そうか、ザンザスに断られてしまったか」
「はい。弱い奴はいらないと言われました」
「……どうするかい?」
「明日、もう一度ヴァリアー邸に行きたいです。強くなる為に先ずはヴァリアーの方達に話を聞いてみようと思います」
「それがどんな道を歩むか、なまえはちゃんと分かっているのかい?」
「分かっています。そしてそれが傍に居れる理由になるのなら、後悔は絶対にしません」
「わかった」
そしてわたしは翌日もヴァリアー邸を訪れた。今度はザンザスさんの元には行かず、他のメンバーの所へ。
ヴァリアー邸に着いてから、昨日もお世話になった黒服の男性に幹部メンバーが集まっている場所を伺った。どうやら彼等は普段談話室に居ることが多いらしい。
ゆっくりと扉を開ける。そこにはスクアーロさんとルッスーリアさんが居た。
「お前……、また来たのか」
「えっ?なまえちゃん?!どうして此処に……」
わたしはヴァリアーに居たい事や昨日ザンザスさんに断られた事、理由も全て話した。
反応はそれぞれ違ったが、二人とも否定はしなかった。強くなりたいと二人に告げるが、どうやらヴァリアーは現在ボンゴレ本部から厳重な監視の元、活動規制中らしく、勝手な行動は出来ないと言う。
「まああの九代目と家光が許してるなら、教えたって怒られねえだろうがな」
「それでもボスは駄目って言っているのでしょう?勝手な事したら、またウィスキー投げつけられるわよスクアーロ」
「うるせぇ!!」
「でもね、なまえちゃん。ボスはきっと貴女の事を思ってそう言ったんじゃないかしら」
「……分かっています。父も九代目もそうでしたから……。でもわたし皆さんの、ザンザスさんの傍に居たいんです……」
やはり駄目なのか。日本に戻って雲雀くんにでも稽古を付けて貰う方が早いのかも知れない。
スクアーロさんは長く息を吐き出した。
「付けてやる」
「え……」
「稽古だよ。強くなりてぇんだろ?」
「は、はい!!」
「スクアーロったら結局熱意がある子には教えたくなっちゃうんだから……。まあ私もそれに乗ってあげるわ」
「ルッスーリアさんも……良いんですか?」
「怒られる時は一緒よ」
此処でやれる事はまだありそうだった。
わたしはまず自分は何が得意で何が不得意なのかを知ることから始めた。
「筋肉量も多くないから体術は難しいだろう。だがもし武器が手元から離れてしまった場合に体術が出来なければ話にならねえ、まずはルッスーリアに体術から教わり体の基礎を作ることが大事だ。勿論日々の体作りは当たり前だ」
「わかりました」
「オレは基本剣で戦う、教えられるのも剣だけだ。自分の性格や相性もある、先ずは自分に一番合うものを見つける事からだな」
「スクアーロさん……」
「なんだぁ?」
「本当にありがとうございます」
「礼はまともに動ける様になってから言え」
「頑張ります」
ヴァリアーの武器庫の中を見せて貰い、わたしは自分の中で一番しっくり来るものを探し、二つのダガーを手に取った。
「ダガーか。サイズにも寄るがお前が今手にしている奴は、剣と言うよりかはナイフ寄りだからベルに教えて貰う方が分かりやすいだろうな」
「もう少し大きい方がいいでしょうか?」
「いいや、二つ持つならこれくらいで良いだろう。オレが教えられねぇ訳じゃ無いしな」
「………これにします」
「明日から始める。先ずはそれに慣れる為に持ったままひたすら動いていろぉ」
わたしはスクアーロさんからナイフホルスターを受け取った。