episode 03
連休明けに俺はたまたま沢田なまえと遭遇した。どうやら今日は蘭達とは一緒ではないらしい。「あ!この間のお姉さん」
「歩ちゃん、だよね。こんにちは」
「お姉さんは今から何処かに行くの?」
「うん、実は近くにあるケーキ屋さんに寄ろうと思って」
なまえが告げたケーキ屋の名前は、たった今博士と共に俺達も向かっている店であった。
「僕達もそこに行こうとしてたんです」
光彦は一緒に行かないかとなまえを誘うと、彼女は二つ返事で快諾した。
彼女はテイクアウトをして自身の家がある並盛に帰る予定らしい。俺達は店で食べていく予定であったが、店内はかなり混みあっていた。
「かなり混んでるわね」
「仕方無い、テイクアウトして博士の家で食べましょうか」
灰原と光彦は店内をキョロキョロと覗いてから呟いた。
「折角だし、なまえさんも一緒に博士の家で食べない?」
「え、でもご迷惑では無いでしょうか」
彼女はちらりと博士の方を一瞥したが博士は「構いませんよ」と言ったので「じゃあお言葉に甘えて」と控えめに告げた。正直な所、俺は断られると思っていたので少しだけ驚いた。
ケーキ屋ではそれぞれ食べる物を、沢田なまえはテイクアウト分も含めて購入し、博士の家へと向かう。途中、俺の家の前で遭遇した昴さんも誘い、皆で博士の家でケーキを食べる事になった。
「ちょっと。何であの人も誘うのよ」
「あの人ってどっちだよ」
「どっちもよ」
灰原は後ろを歩いてる沢田なまえと昴さんの姿を見てから煩わしそうな表情を見せる。
「昴さんは大丈夫だって言ってるだろ」
「信用ならないわよ」
「それに沢田なまえについてもちょっと気になる事があるんだ」
彼女はただの女子高生だとは思えなかった。良く話すタイプでも無いので未だ情報はほぼ掴めていない。
沢田なまえは博士と昴さんと共に、お茶を入れていた。
「すみませんねぇ、客人に手伝いをさせるなど」
「いえ、誘ってくださってありがとうございます」
「博士、こちらの方は?」
「おおすまん、紹介がまだじゃったな。最近帝丹高校に転校してきたなまえ君じゃ。蘭君達と仲が良いらしくポアロで出会ったんじゃよ。今日はたまたまケーキ屋の近くで会ってな」
「初めまして、沢田なまえです」
「沖矢昴です」
昴さんは準備をしながら、出身地や転校前の学校の話を次々と質問していく。
「へえ、並盛から……。高校もそちらの高校だったんですか?」
「いえ。高校は並盛とは別の所で……。最近大きな地震があったので帝丹高校に転校したんです」
「確かに、相当大きかったからのう。海外でも同時期に地震なんて珍しい事もあるもんだ」
博士の言う通り今回の地震は日本だけでなく各地で起きた異例の地震であった。
お茶を入れ終えた三人がカップとケーキを持って俺達の元へとやってきた。順番に子供達に配っていく。
「灰原さんは、これで良かったですか?」
「ええ。ありがとう」
沢田なまえの灰原に対する接し方に俺は違和感を覚えた。歩ちゃんや光彦、元太達には敬語も使わず接していたが、灰原にはしっかり敬語を使っている。そういえば、俺に対しても敬語だということに今更ながら気付く。違和感を覚えたのは俺だけでは無かったらしく、昴さんは目敏くそこをついた。
「何故彼女には敬語なんですか?」
「え……?ああ、無意識でした。彼女はとても大人びている様に感じたので」
「へえ……」
「見た目で判断することはとても愚かな事だと、以前教わったことがあるんです」
その言葉に俺は内心冷や汗をかいていた。まさか俺や灰原が実際は小学生では無いことを見抜いているのだろうか。
全員にケーキを配ると昴さんは博士の隣に、沢田なまえは少し離れた斜め前の俺達の隣に座った。
「案外勘って当たるらしいんです」
そう言って彼女はアールグレイが入ったカップを傾けた。
ケーキを食べ終え、日も暮れてきた頃沢田なまえとは別れた。俺は昴さんと共に、自分の実家へと戻っていた。
「彼女は何者だ?」
「俺もずっと気になってはいるんだが……」
「彼女は一切俺の間合いに入ろうとしなかった」
確かに言われてみれば昴さんと共にお茶を入れたりはしていたが、近寄ることも、ましてや隣にいることは無かった。
「それって昴さんの正体に気付いてるってこと?」
「いや、そうでは無いとは思うが、彼女は勘が良さそうだからな……俺のことも何かを感じて近付かなかったのかもしれん」
新たな疑わしい人物に俺は頭を抱えたくなった。
「そういえば以前安室さんの気配に気付き、驚いていた時もあったな」
「成程……。黒の組織とは無関係だとは思うが一応調べてみるか」