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「継承式、ですか?」わたしは九代目に呼ばれ、イタリアのボンゴレ本部を訪れていた。
「綱吉君が正式にボンゴレファミリーの十代目になる為のね。まだ本人には確認を取っていないのだが、これから私も日本に行こうと思っていてね」
「それでわたしも一旦日本へ?」
「ああ。なまえはイタリアに来てそのままヴァリアーに留まる事になったから日本の学校は退学扱いになってしまっているんだろう?修行も大事だが、勉強も大事だと思っているし、なまえには高校卒業まで一般の学校をやはり受けて欲しいと思ってね」
高校卒業となると残り一年と数ヶ月。それまでわたしはヴァリアーを離れるという事になる。
「嫌かい?」
「いえ……。再びヴァリアーと共に居られる事が出来たのは九代目のお陰です。その九代目が仰られるなら勿論高校卒業まで日本の学校生活を送りたいと思います」
「ありがとう。時間があればイタリアに何時でも遊びに来るといい。喜んで飛行機を用意するよ。勿論ザンザスも用意すると思うがね」
そう言った九代目は優しく微笑んだ。
「此処を立つまで暫く時間がある。ヴァリアー達とゆっくり話をしてから向かうといい。ザンザスには私から伝えてあるよ」
「わざわざありがとうございます。此処にも遊びに来ていいですか?」
「勿論だよ」
わたしはヴァリアー邸に戻ってから幹部の皆に事情を話した。彼等の反応は様々だったが、時間があれば日本にも遊びに行くとルッスーリアやスクアーロさんは言ってくれた。
「えー、まじかよオレの暇つぶしが」
「ベルも日本に来てくれる?」
「寿司奢れよ」
「仕方ないなぁ」
文句を言いながらもベルも遊びに来てくれると約束してくれた。
「わたしもお休みの時は此処に来るつもりなので、修行は変わらずお願いします」
その言葉にレヴィさんやスクアーロさんは笑顔で答えてくれた。
「マーモンもお願いしますね」
未来から帰ってきて随分と話す機会も多くなったマーモンとは、気兼ねなく話せる様な間柄になっていた。彼は面倒臭がる所もあるが、聞けば答えてくれるし話も論理的でいつも納得のいく答えを見出してくれる。
「あれを持ってきたら付けてあげても構わないよ」
あれとは恐らく五円チョコの事だろう。そんなにお金が好きなのかと、聞いた当時は驚いたが、彼が五円チョコを食べている姿はとても可愛らしいのでわたしは喜んで彼の要望に答えた。
ずっと気掛かりであったのは、折角ザンザスさんから頂いた銃の修行をほぼ出来ずに日本へ立つことであった。銃の扱いを未来のザンザスさんから教えてもらったとはいえ、この時代で貰った新しい銃をまだちゃんと扱った事が無いのだ。
わたしは旅立つ最後の日にザンザスさんの部屋へと訪れた。
「なまえです」
「入れ」
彼の部屋に入るのは銃を貰った日以来だった。今日はデスクではなく、ソファに座ってウィスキーを飲んでいた。
「今日の午後、日本に行きます」
「そうか」
「あの、ザンザスさん」
「何だ」
「日本に行ってから最初の連休になったらすぐこっちに帰ってきてもいいですか?……銃の修行をザンザスさんに見て欲しくて……」
彼はわたしの目を見ると、此方に手招きをした。言われるがままに彼に寄ると突然腕を引かれ、彼の膝の上に横抱きにされてしまう。
「っ?!」
「くく、何だその間抜け面は」
「え?あの……」
彼の突然の行動をわたしは理解出来ずにいた。狼狽える様に視線を彷徨わせるが、彼は真っ直ぐ此方を見つめてきたので彼の瞳に捕まり逸らすことが出来なかった。
「好きな時に帰ってこい」
その言葉にわたしは暖かさと共に心がきゅう、と締め付けられる感覚がした。
そこから先はずっと夢心地で、どうやって部屋まで戻ったのか詳しく覚えていない。