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ツナとリボーンは九代目に会う為にホテルの最上階を訪れていた。「あ、あの。九代目……実は話が……」
そうツナは切り出したが、九代目は最後まで話を聞くこと無く、それに答えた。
「好きにしなさい。綱吉君の人生だ」
「へっ」
「おや?ボンゴレのボス継承の話じゃ無かったかな?」
「あ、そ……そうです!」
ツナは驚いた様に身を乗り出した。
「君がいかにボンゴレボスになるのを嫌がっているかは、よーくわかっているつもりじゃ。リボーンに聞いているからだけでは無い。未来で起きたことを全て大空のアルコバレーノに教えてもらったからのう」
「大空のアルコバレーノって……、ユニ?!」
「うむ……。各地で大地震が起きた日にわしは夢を見た。白蘭と君達の長い戦いの夢をね。それが真実だと確信するまで時間は掛からなかった。あの夢にはユニの温かい炎を感じたからね」
温かい炎とはユニの命の炎だろう。
「そしてあの戦いで沢田綱吉というボンゴレの十代目候補はマフィアのボスには向いていないと改めて確信したよ。
弱虫で、優柔不断で、優しくて、仲間を想いすぎる」
その言葉にツナは言葉を詰まらせた。「褒めてねーぞ」と横からリボーンが忠告すると顔を真っ赤にし、慌ててリボーンの方を向く。
「しかしだからこそ」
ツナの正面から遮るように声が聞こえた。
「綱吉君なら今の肥大化してしまったボンゴレファミリーを本来の在るべき姿に戻せるかも知れない」
本来の在るべき姿。それはプリーモが作った、初代ボンゴレファミリーの住民を守る自警団の事である。
「おっ、そうじゃ。見せてくれんかの?プリーモから授かった原型といわれるボンゴレリングを」
その言葉にツナは首から下げているリングを取り出した。
「ほう。これが……。セコーンド以降どのボスも手に出来なかったこのリングを君に託したということは、やはりプリーモもわしと同じ考えのようじゃな」
「……?」
「今のボンゴレを壊して欲しいんじゃよ」
その言葉にツナは未来で言われたプリーモからの言葉を思い出す。
「純粋なボンゴレの意志を継ぐことが出来るのは君しかいないんじゃ。もう一日だけじっくり考えてくれないかの?」
「で、でもまだオレ子供です!なんでそんなに急ぐんですか?!」
「確かに就職するには少し早いが、プリーモが自警団を組織し始めたのも君の歳の頃だ。わしは未来での君を見て、もう大丈夫だと確信したのだよ。ならば、善は急げじゃ。
君が一日でも早くボスを継げば、君の見たくない抗争や殺し合いが早く無くなるはずじゃ」
「そ、そんな……」
「おっと、これでは継いでくれと頼んでいるみたいじゃな。すまんすまん!継承式前日の明日までに嫌なら嫌と答えてくれればいい」
「で、でも……もしオレが断ったら継承式は……」
「なあに。そんなものはキャンセルすれば良いだけじゃ。平気じゃ平気。
さて、どうだいツッ君、一緒に夕食を食べて行かんか?」
「あっ、いや……もうこれで失礼します」
「ツナ。オレは朝まで話がある、泊まっていくぞ」
「わかった」
ツナは九代目の守護者に連れられ部屋を後にした。
「あんな甘っちょろい言い方でツナがボスを継ぐと思っているのか?」
リボーンはエスプレッソを一口含み、そう告げた。
「一瞬あの子の目が真剣に考えてくれているのがわかった。それで充分じゃよ」
そういえば、と九代目は話を変えるように続ける。
「なまえはもう帰ってきているかい?」
「ああ。数日前にな」
「そうか、あの子はどう思っているんじゃろうな」
「オレはザンザスの元には送らないと思っていたけどな」
九代目は膝の上で両手を組んだ。
「あの子が初めてボンゴレに来た時、もう人を信じる事が出来ないと疑った目をして我々を見ていた。そしてそれを変えたのはザンザスなのだよ」
「……それは初耳だな」
「結果的になまえの荒んだ心が再生出来たのはザンザスのお陰じゃ。それもあってなまえにとってザンザスは絶対的な存在でもある。それを分かっていながら、彼等を引き裂く事は私には出来ないよ」
「でもそれは……」
「ああ。それを依存と言う人もいるだろう。だが未来での夢を見た時になまえはザンザス達を守りたいと言った。それはもうほぼ愛に近い。わたしはあの子達なら大丈夫だと思うんじゃよ。あの子ならザンザスの凍った心も解かしてくれる」
それは九代目の願いでもあった。