足の指先までも/烏間
私は今、非常に虫の居所が悪い。つまりは、怒っているというわけだ。何故かって?惟臣のあまりの!鈍感さにだ!分かってる。惟臣が悪いわけじゃないし、罪も無い!かといってイリーナが悪いわけでもない!
「……何を怒っているんだ」
『別に怒ってないわよ』
報告書を送信し終え、パタリとノートパソコンを閉じた惟臣は、こちらを向いて溜息を吐き出しそう呟いた。
「お前の別に、は信用ならん」
返す言葉も見つからずソファーで膝を抱えて、そのまま顔を埋めれば少しの音と髪に触れられる感触。顔を上げると目の前には惟臣。
『、ただおみ』
「なんだ」
優しく撫でる手をそっと握って、自ら頬へ誘導し擦り寄り、掌にキス…リップ音を鳴らして。
『……イリーナ、貴方のこと好きよ』
「馬鹿なことを言うな。あいつは仕事仲間だぞ。ありえん」
『馬鹿なこと言ってるのは惟臣よ。あんなの見たら分かるわ。分かってないのは惟臣だけ』
私の言葉に、まるで心外だと言いたげに目を見開く惟臣。E組の子達もみんな分かってるわよ、本当にこの鈍感堅物野郎め。
「………まさかとは思うが、その…妬いているのか?」
『っ、そうよ!そのまさかよ!悪い!?私達のことを秘密にしようって言ったのは私よ!私だけど、やっぱ…平気じゃぁないわ。あんな、美人に…勝てるわけない』
「……ふ」
ふ、と笑った惟臣は私の右足をソファーからおろした。そしてそのまま、太ももに口付ける。ツツ、と味わうように舌を這わせながら、次は膝に口付けた。
『ちょ、た、だおみ』
際どく這わされた舌は、簡単に私に軽い電流を走らせる。踵に手を添えゆっくり持ち上げる惟臣は、足の指先にキスを落とした。
「遊乃、俺がお前にどれだけ惚れているかは、お前が一番分かっているだろう。妬くだけ無駄だ」
『〜〜っ、ば、ばかじゃないの!意味分かってそんなとこにキスしてるわけ!?』
「知らない程、俺は馬鹿じゃない」
『……ちゃんと…口に、ちゅー、して、』
あまりの恥ずかしさに逸らしていた視線は、すぐに絡み取られ望み通り彼は、唇を押し付けた。