君が呟いたある言葉/カルマ




『今、えっとごめん……なんて言った?』

「……あんたが好きって言った」

『熱でもあるの?』

「失礼とか思わない?」


眉根を寄せて私を見つめたままぶっきらぼうに呟いた赤羽は、一歩こちらへ足を踏み出した。反対に私の足は教室の床へ縫い付けられているみたいに、これっぽっちも動いてくれない。言うこと聞けよ!私の足だろ。


『っ、冗談やめなって、面白くないよそのイタズラ』

「……」


本当に小さく顔を顰めたと思えば、縫い付けられていたはずの足は数歩よろめいた。赤羽が私の腕を引いたから。押し付けられた耳からはバクバクと脈打つ早い鼓動。……あぁ、冗談じゃないのか…。


『ぃ、いやいや、だって、え!?私てっきり中村さんのこほ…ッ』


言葉途中で掴まれた両頬はヘコみ、意外と赤羽の手は男らしいことが伝わってくる。至近距離で見てしまった赤羽の瞳。あ、こんな色してんだ……てか、近、あぁ、まって、


『ははひへ……』

「いい加減信じた?」

『はひ!!』


勢いよく頷いてやっと頬は解放されたが、腕の方は解放されず抱き締められたままだ。こんなとこ中村さんに見つかれば、きっとやばい。あと殺せんせーもやばい。


『……いつから、ですか』

「んー、忘れた」

『(忘れたって……)』

「とりあえず、さ。あんたが俺を意識してくれれば今日はそれでいいや。じゃ、用事あるから先帰るわ。気をつけて帰りなよ」


ポンポンと二回程叩かれた頭。去っていく彼、ドアが開いて閉まる音、そして、私が崩れ落ちる音。


とりあえず、渚、に電話しなきゃ。

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