if ナミ救出編
※うろ覚え
ナミの姉だと言うノジコから聞いた話に、腹の底からドス黒いモノが湧き上がる。怒りで手が震え、怒りで涙が溜まり、視界は滲む。
「私達を放っておいてくれ」
その一言に私の中の何かが、鈍い音を立てて切れた。
怒りをぶつけるように、左手を池に向かい振り払った。その瞬間、激しい音と共に私達へと降り掛かった大量の水飛沫。冷たい水が今の私には丁度良いが、それでも未だに怒りは収まらず呼吸が乱れる。私以外の人に水がかからないよう、風を送った理性が残っていたことを褒めて欲しいくらいだ。
『……ノジコさん。私達は船長含めナミを仲間だって思ってます。今の話を聞いて、放って置けと言われて、はい、そうですか分かりましたなんて言えるわけない…!!仲間が、村の人達が、なんの罪も無い人達が苦しめられて、命を奪われて!!無視しろなんて、私には出来ない…っ!!』
半ば叫ぶようにノジコさんに対して言い放った。気持ちがぐちゃぐちゃになって、今にでも走り出しそうな私を後ろから両目を覆って、優しく抱きしめ止めてくれたのは、サンジだ。
瞑ったはずの瞳からは、ボロボロと涙が零れて止まらない。それでも湧き上がる"怒り"…でも、きっと私より怒っているのは、泣きたいほど辛くて苦しいのは私じゃない。ナミやノジコさんや、この村の人達。私なんかが涙を流しちゃ、いけない。
「…落ち着いたかい、ラズアちゃん?」
『………ごめんなさい、ありがとう大丈夫』
サンジの胸に額を預けたまま、数回の深呼吸。いつの間にか握りしめていたサンジのスーツは、どれほど強く握っていたか分かるくらいに皺になっていた。ごめんサンジ、後で直すね。
涙を拭い、ノジコさんに向き直る。しっかりと目を見て口を開いた。
『放っておいてと言われようが、帰れと言われようが、私は…私達は放っとかないし帰りません。ナミを連れてじゃないと絶対に…そもそもルフィがそう思ってるんだから、私達は船長命令には逆らえません』
その言葉にサンジ達も同意する。魚人族はきっと強い…ナミを取り返すことは、とてもじゃないが難しいだろう。けど、そんなことは百も承知だし元よりそのつもりだ。
『ナミを、絶対に取り返す』
私達を見下ろしているだけの空は、恨めしいほどに晴れていて嫌気がさした。今はそんな気分じゃない。ゆっくりと目の前のノジコさんを見据えて『約束します』と、呟いた。